老人の亡霊
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第一章
老人の亡霊
正岡龍馬と織田月心は今は織田が受けた神託の結果二人で紀伊の白浜から少し離れた山に近い村にいた、織田はその村に入ってから正岡にこんなことを言った。
「この世界ではまだましですが」
「おう、紀伊はじゃのう」
正岡もその村の入り口で織田に応えた。
「海と山に挟まれてじゃ」
「もう海からです」
「すぐに山じゃな」
「そんな感じですね」
「全くじゃ、しかしな」
それでもとだ、ここでこうも言った正岡だった。
「この村で神託があったんじゃな」
「はい、途中悪龍を懲らしめたり多くのモンスターを倒してきましたが」
「龍退治の方が神託っぽいがな」
「それでもじゃ」
「はい、この村がです」
二人が北この村がとだ、織田は正岡に答えた。
「拙僧の神託があった場所で」
「それでじゃな」
「はい、しかし」
「おまんもじゃのう」
「ここでどんな試練があるか」
ダックの首を傾げさせてだ、織田も言った。
「拙僧にもわかりません」
「全くじゃのう」
「一見すると平和な村ですが」
「この村に何があるか」
「まずは入ってですね」
「それからじゃな」
「はい、わかることですね」
こうした話をしてだ、そのうえでだった。
二人は村に入った、すると確かに二人が見た通りごく普通の村だった。水田もあれば畑もあり紀伊名産である梅や蜜柑の栽培も行っていた。そしてだった。
老若男女が幸せに暮らしていた、農業も盛んで豊かな村だった。
だがふとだ、織田は村の外れの大きな屋敷を見てすぐに顔を曇らせた。そのうえで正岡に対して囁いた。
あのお屋敷は」
「いい屋敷じゃがのう」
「人が住んでいる気配はないですね」
「全くじゃ、何でじゃ」
こう言うのだった。
「この屋敷に誰も住んでないんじゃ」
「折角の屋敷が荒れ果てて」
それでとだ、織田は言うのだった。
「勿体ない」
「何か訳ありじゃな」
「そうですね、ではおそらく」
「この屋敷がぜよ」
「神託と関わりがありますね」
「この中にあるんかのう」
二人でこうした話をした、そんな話をしているとだった。
恰幅のいいマミーの男、目がやけに濁って怪しく荒んでいる老人が二人のところに来た。着ている着物も袴も質がいい。だがその目からだ。
織田も正岡も胡散臭いものを感じていた、そしてだった。
老人は二人にだ、横柄な口調で言ってきた。
「御前等旅の者か」
「はい、冒険者です」
織田が二人がそのマミーの老人に答えた。
「拙僧達は」
「拙僧、坊主か」
「そうです」
坊主という汚い言葉に内心どうかと思った、だが織田はそのことについては言葉に出すことはなくそのうえで老人に応えた。
「私は」
「わしは志士ぜよ」
「そうか、わかった」
老人の返事は横柄なままだった、その顔で言うのだった。
「なら御前達に頼むがある」
「頼みといいますと」
「あの屋敷だ」
二人が早程どうかと思ったその誰も住んでいないことが伺える屋敷を指差してだ、彼は言うのだった。
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