クロスウォーズアドベンチャー
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第7話:シャウトモンX4
サジタリモンとメタルグレイモンの戦いは拮抗していた。
初めはサジタリモンのスピードで翻弄し、クロンデジゾイドの矢と格闘技で優位に立っていたが、直にメタルグレイモンはサジタリモンの動きに慣れてきたのだ。
「トライデントアーム!!」
「くっ…メテオギャロップ!!」
メタルグレイモンの爪をかわし、脳天に跳躍蹴りを叩き込むサジタリモン。
多少怯んだが、大したダメージを受けてはいない。
「グハハハハッ!!いいぞ!!もっと本気を出してこい!!」
サジタリモンにメタルグレイモンの回し蹴りが炸裂する。
咄嗟にサジタリモンは両腕を交差して防御することでダメージを軽減した。
「チッ…勇気と友情のデジメンタルのマテリアルクロスはメタルグレイモンと互角か…!!」
「(賢…アカリさん…急いでくれ…)」
大輔は賢とアカリがドルルモンを連れ戻してくれると信じて、サジタリモンに指示を飛ばす。
「くっ…邪魔するんじゃねえ!!」
「ロゼッタストーン!!」
シャウトモンX2とネフェルティモンが迫るガオスモンを薙ぎ倒す。
「サ、サジタリモンが押され始めて来たわ…このままじゃ直にやられちゃうわよ!?本当にドルルモンは来るのぉ!?」
「ピンチだドンドコ!!」
リリモンとドンドコモンがサジタリモンが押され始めたのを見て慌て始める。
「分からない…」
【ええ!?】
「俺は…あいつの気持ちを全て理解出来る程、あいつのことを知らない…けど…あいつが今までキュートモンのことを守ってきたのは、きっとまだ戦士としての誇りが心に燻ってるからだと思うんだ…!!こんな賭け事みたいことに突き合わせちゃってごめん…!けど俺は…俺はっ…!!」
次の瞬間、タイキの真横からガオスモンが2体迫る。
「キャッツアイ!!」
「ロックンローリング!!」
エネルギー切れで退化したテイルモンがガオスモンの動きを止め、スターモンが回転した状態での体当たりを喰らわせた。
「テイルモン!!スターモン!!」
「“けど俺はドルルモンが放っとけない”だろ!!」
「あんたの言いたいことくらい分かるわよ。全く、太一と言い、大輔と言い…無茶ばかりして…ゴーグル着けた男はみんなこうなわけ?」
「遠慮なんかすんな!!タイキはシャウトモンの兄貴の認めた俺達のジェネラルだぜ!?2人が創るデジタルワールドの未来を見るまで俺達はやられたりしねえよ!!」
「っ!!…うん…なろうな…キングに…!!俺達みんなで!!(アカリ…賢…キュートモン…ドルルモンを頼む)」
そして一方、賢はワームモンをスティングモンに進化させ、アカリとキュートモンと共に森の中を駆け抜けた。
「あっちにドルルモンの臭いがするキュ!!」
「よし、見付けた!!」
スティングモンの視界にドルルモンが入ると急いでドルルモンの前に着地し、アカリとキュートモンと賢を降ろした。
「キュートモン…お前ら何で…俺の居場所が分かって…」
「ぼ…僕…ドルルモンの臭いだったらすぐ分かるキュ!そ…それに…途中、所々マーキングした後があったから…どっちに行ったかすぐ分かっちゃったキュ…」
「厄介だね習性は」
キュートモンはもじもじしながら説明し、アカリは赤面しながら明後日の方角で咳払い、賢は呆れたように見つめる。
「(しまったーーーっ!!お…俺としたことが動揺のあまりなんつーミスを!!)」
動揺のあまり仕出かした己のミスにショックを受けているドルルモンにキュートモンが口を開いた。
「僕…ドルルモンに一言謝りたかったキュ…」
「…謝る…?」
「バグラ軍のはぐれ者からたまたまあなたの過去のことを聞いたの…!!」
「だから茸の里で僕にあんなことを言ったんだね…」
「ドルルモンがあんな辛い目に遭ってバグラ軍を抜けたなんて知らなかったキュ…そんな気持ちを隠して僕には笑いかけてくれてたのに…怖がったりして…きっと傷つけちゃったキュ…」
「お…おいおいおい…どこまでお人好しなんだよお前は…!言ったろ!?俺はお前の村を滅ぼした奴なのかもしれないんだぜ…!!」
「でも…ドルルモンはそのことを反省したから…!バグラ軍も抜けたし、キュートモンの親捜しも手伝ってるんでしょう!?だったら…私達と一緒にデジタルワールドのために戦って欲しいの…!!」
アカリの言葉にドルルモンは表情を暗くする。
「反省…か…賢、お前なら分かるんじゃないのか?何をしたって償えない罪があることを…」
「うん…僕はこことは違う所でデジモンカイザー…悪人となって沢山のデジモンを支配して苦しめた…殺してしまったデジモンだって数え切れない…街も村も焼き滅ぼして…パートナーのワームモンすら一度は殺してしまった…」
「賢君…」
アカリは隣の賢がそのようなことをする人物だとは信じられなかった。
何かの冗談ではないかと思ってしまう。
「再生したワームモンのデジタマを探していた時は…心の何処かで許されたいと思っていたのかもしれない……あんな酷いことをしておきながら、そんな事…出来るはずがないのに……でも、僕は……逃げない…ワームモンや僕を受け入れようとした本宮君、僕の家族のためにも…自分の罪から……絶対に逃げない……認めたくない事も……全部認めて、生きて行く…罪を償う為に…」
「そうか…似ているようで全然違うな…俺達は…」
賢の話を聞いて、自嘲の笑みを浮かべるドルルモン。
「俺はお前のようにはなれなかった。キュートモンの面倒を見てきたことだって罪滅ぼしなんてもんじゃねえ、ただの自己満足だ…お前に恨まれるのが怖くって俺は本当のことが言えなかったんだからな…俺は…日々自らの技を磨きながら、決して自らデジタルワールドの戦乱に加わろうとしない自分の一族に疑問を持っていた…何のために自分の強さはあるんだろうってな…だから一族を離れ、バグラ軍に入った。そこで自分の力をひけらかしていい気になってたのさ。敵味方構わず犠牲を撒き散らしながらな…一族の連中は分かっていたんだ!そんな風に力を使っても周りや自分を傷付けるばかりなんだってな…滑稽なもんさ!俺は誇らしげに牙や爪を振るいながら、その実、一族の誇りに泥を塗り続けていたんだ…!」
「ドルルモン…君は…」
「何も言うなスティングモン。だから…俺はもう戦わないのさ。今更、正義の味方面して平和のために戦うなんざ…俺には烏滸がましい。フ…タイキ達には悪いが…これが俺の最後の面目なんだ。」
ドルルモンの言葉に賢達は何も言えなくなるが、キュートモンは口を開く。
誰よりもドルルモンと長い時間を過ごしてきたから。
「ドルルモン…僕は…僕はドルルモンにそんな寂しそうに笑って欲しくないキュ!!もっと前を見て…未来の幸せのために笑って欲しいキュ…!!」
「キュートモン…」
「ヒャッ…ヒャヒャヒャヒャヒャ!残念だったな!!貴様達に明日はない…我らがジェネラルは赤の軍に関わる殆どのデジモンを抹殺せよとご命じだ!!」
全員が声に反応して上を見上げるとガオスモンとボムモン、そしてバロモンが此方を見下ろしていた。
「(ブルーフレアの刺客…!スティングモン達が後をつけられたか…!)賢!アカリ!キュートモン!乗れっ!!俺達だけでも脱出するぞ!!スティングモンは援護を…」
「だっ…駄目キュ!!」
「「「キュートモン!!」」」
ガオスモンに向かっていくキュートモンにアカリ達は叫ぶ。
勢いをつけてキュートモンはガオスモンに頭突きをした。
「ガオッ…!?」
そしてガオスモンにしがみついて噛み付く。
「ばっ…馬鹿!!何やってんだ離れろ!!」
「たっ…戦ってキュ!!ドルルモン!!烏滸がましくても…恥ずかしくても…戦士の誇りはきっと戦うことでしか取り戻せないキュ!!見ててキュ!僕だって…僕だって一緒に…!!」
「駄目だキュートモン、離れるんだ!!」
もう1体のガオスモンがキュートモンを尾で弾き飛ばす。
「キュートモン!!」
「お前達!!」
スティングモンがガオスモン数体を蹴り飛ばし、倒れたキュートモンにドルルモンが駆け寄る。
「馬鹿野郎!!何だってお前はっ…里の仇かもしれない俺なんかのために…!!」
体を張り、ボロボロになってまで自分のために戦おうとしたキュートモンにドルルモンの目に涙が浮かぶ。
「だって…だって…!2人で…一緒に旅してきたからキュ…」
ドルルモンの前足に落ちたのはキュートモンの涙だった。
「一緒に色んな物を見て…色んな臭いを嗅いで…一緒にお腹を空かせたり…雨でずぶ濡れになったり…ぽかぽか日向ぼっこしたり…風を切って走ったり…!…ドルルモンは僕のもう1人の家族キュ…だから心が傷付いたままでいて欲しくないキュ…!!」
「いるじゃないかドルルモン…君にも…君を理解して、君を受け入れてくれる存在が!!」
「…っ!!」
「フン…!今更お前のような腰抜けが加わっても何も変わらんわ!!かかれボムモン共!!奴らを吹き飛ばせ!!」
【ボムボーム!!】
迫り来るボムモン達。
しかし賢がD-3Xを握り締めるとディスプレイに優しさの紋章が映し出され、薄紅色の輝きが放たれた。
【!?】
全員が思わず停止し、薄紅色の輝きを見つめる。
スティングモンが薄紅色の光に包まれていき、形を変えていく。
見る角度で色が変わるプリズムのような鎧を身に纏う昆虫型に。
「スティングモン超進化、ジュエルビーモン!!」
ジュエルビーモンは槍を大上段に構え、全てのエネルギーを槍に収束させていく。
「ここから先は戦士の誇りを取り戻したドルルモンの聖戦だ。お前達のような奴らに汚されてたまるか!!」
「ま、待てーっ!!」
「スパイクバスター!!!!」
光速で振り下ろされた槍によって生じた衝撃波はボムモン達ごとバロモンを吹き飛ばした。
スティングモンがジュエルビーモンに進化するよりも少し前、とうとうサジタリモンがメタルグレイモンの攻撃をまともに喰らってしまい、とうとうマテリアルクロスによるアーマー進化も解けてしまう。
「ぐあっ!?」
「ブイモン!!限界か…」
「万全の状態でないにも関わらずよく戦ったと褒めてやろう…」
もうメタルグレイモンでなくても一掃出来ると判断したのか、メタルグレイモンはデジクロスを解除してグレイモンとメイルバードラモンに分離している。
そして次にグレイモンとメイルバードラモンが次の標的に向かおうとした時、キリハの後方の森が吹き飛んだ。
「何だっ…!!?」
吹き飛ばされていくバロモン達を見て、タイキは全てを悟って笑みを浮かべた。
「みんなー!!」
ジュエルビーモンの肩に乗った賢とドルルモンの背に乗ったアカリとキュートモンが現れ、タイキ達の前に移動した。
「ドルルモン!!…と誰?」
「ああ、彼はジュエルビーモン…スティングモンが進化して…今はミノモンです。」
「完全体に進化したのか、まあ…俺も新しいデジクロスでパワーアップしたからな!!」
ブイモンが威張る隣でシャウトモンがドルルモンに駆け寄る。
「おい遅えよ!!美味しい所だけ持ってく気かぁ!?」
「…ジェネラル、タイキ殿。戦士ドルルモン…義によって参戦仕る…!!…何てな!もうしばらく世話になるぜタイキ!!俺としたことが小難しく考え過ぎていたようだ…!守りたい物がそこにある…戦士が戦う理由なんてそれで充分なのにな…!!」
ドルルモンの言葉にタイキは笑みを浮かべた。
「ああ…よろしくドルルモン…!」
「戦場に茶番劇を持ち込むのがよくよく好きなようだが…そんな奴1人増えたところでこの戦力差を覆せるか…!?」
「さあ、どうかな…?大輔達は休んでいてくれ!!後は俺達がやる!!シャウトモン!スターモンズ!!…バリスタモン!!ドルルモン!!デジクロス!!」
「バリスタモンSR(シクステッドランチャー)!!」
「シャウトモンSH(スターホイール)!!」
バリスタモンとドルルモンのデジクロスはバリスタモンをベースにした6つの砲門を持つ姿。
シャウトモンとスターモンズのデジクロスはシャウトモンが武器化したスターモンズをシャウトモンが握っているような姿である。
「さぁっ…行っくぜええええええ!!!」
武器化したスターモンズをプロペラのように高速回転させ、シャウトモンX2どころかサジタリモンに匹敵する速度でグレイモンに突撃した。
「何だっ…!?こいつスピードが…!!くそっ、チョコマカとっ!!」
シャウトモンSHはスピードを活かしてグレイモンを撹乱する。
グレイモンは尾を振り回したりして薙ぎ払おうとするが全て空振りで終わる。
「あんな簡単なデジクロスでサジタリモンに匹敵する高機動形態だと!?」
「フン!俺が捕まえてやるっ!!」
「させるかっ!!」
「シクステッド・ストーム!!」
バリスタモンSRがグレイモンに加勢しようとするメイルバードラモンに一斉掃射をし、近寄らせない。
「ぬおおおおおおおお!!?」
「バリスタモンSR…凄い火力だわ…!!」
ヒカリに抱き締められたテイルモンはバリスタモンSRの火力に舌を巻く。
「(かなりの高威力…!そ…それに何という連射だ!!俺の装甲では連続で喰らえば一溜まりもないぞ…!!くっ…これではグレイモンに近付けん!!)」
キリハはグレイモン達の戦いを見ながら状況の分析をしていた。
「(スピードでグレイモンを翻弄し、火力と射程でメイルバードラモンを寄せ付けない…。一見戦力差を埋め、互角の勝負に持ち込んだように見えるが…あの武器にグレイモンに致命的なダメージを与える威力はない!!いつかは逃げ切れずに攻撃を喰らう…)」
確かにメタルグレイモン時には劣るが、時間が経てばグレイモンはサジタリモンの時同様、シャウトモンSHの動きを見切って反撃に出る。
サジタリモンとメタルグレイモンの戦いを見ていたタイキがそれに気付かないはずがない。
「(ではあれも時間稼ぎに過ぎないとすれば…?)まさか!奴の本当の狙いは…」
「フフフ…!それは…お前だーっ!!」
茂みの中から飛び出してきたのは今まで、何も目立つ事をしていなかったゼンジロウとマッシュモンズである。
「(やはり俺自身か!!)」
ゼンジロウとマッシュモンズのその存在感の無さを活かした見事な奇襲である。
「くっ…ガオスモン!!」
「ガオオオス!!」
「「ママーッシュ!!」」
「とおう!」
残りのガオスモンをリロードしてゼンジロウとマッシュモンズを迎撃しようとするが、ゼンジロウは普段から想像出来ないような身軽な動きで飛び越え、マッシュモンズがガオスモンを抑えた。
「はっはははは、俺式デジクロス!!このゼンジロウCS(チビックソード)はこんな形ながら我が愛刀、江東丸の長さや握り心地を忠実に再現しているのだ!!」
「光刀丸…!?」
ピックモンズをデジクロスさせた剣を構えながらキリハに突撃するゼンジロウ。
「それが何故だか分かるか蒼沼キリハ!!」
「知るか!木の枝でも振っていろ!!」
「それはな!俺を江東区一の中学生剣士たらしめた我が奥義…繊細かつ華麗な小手を再現するためだーっ!!」
ゼンジロウのCSによる小手がキリハに炸裂し、Xローダーを叩き落とす。
「ぐっ…Xローダーがっ…」
「今だタイキーっ!!」
「ああ!!流石、江東区No.1!!シャウトモン!!バリスタモン!!ドルルモン!!デジクロス!!」
シャウトモンとスターモンズ、バリスタモンとドルルモンのデジクロスを解除し、3体を再びデジクロスさせる。
「シャウトモンX3!!」
「ブラザー!!次は俺達も行くぜえっ!!」
「よおし!!スターモン!ピックモンズ!!デジクロス!!」
スターモンとピックモンズがデジクロスすることで大剣・スターソードとなり、シャウトモンX3がそれを手にすることで更なる力を得る。
「シャウトモンX4!!!」
スターソードを握り締め、グレイモンとメイルバードラモンに突撃する。
「あっ…新しいデジクロスだとっ!?」
「怯むなグレイモン!!あれこそ付け焼き刃だっ!俺達の敵ではないっ!!」
「応!!」
メイルバードラモンとグレイモンがシャウトモンX4に攻撃するが勢いはまるで衰えない。
「とっ…止まらない…!!」
「(こちらのデジクロスを封じ、単騎戦力として優位に立つ戦術…確かに見事に嵌められたが…)だっ…だが、何なんだこのパワーはっ…!!?」
「このXローダーの震えを感じても分からないのかキリハ…!!力や技を組み合わせるだけじゃない…!!想いと想いを繋いで高め合う…!!デジクロスは…絆の力だ!!」
「バーニングスタークラッシャー!!」
シャウトモンX4がスターソードによる全力の一撃をグレイモンとメイルバードラモンに叩き込み、吹き飛ばした。
それを見た大輔とヒカリ達は自分達の勝利を確信したのである。
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