永遠の謎
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573部分:第三十三話 星はあらたにその十八
第三十三話 星はあらたにその十八
ジークフリートは死にブリュンヒルテが炎を点けそれを司るローゲを呼び。彼女はその炎の中に消えた。
そしてその炎はヴァルハラとそこにいる神々、攻め入らんとするアルベリッヒとニーベルングの軍勢を燃やした。人だけがそこに残る。
アルベリッヒの息子ハーゲンは指輪を手に入れようとする。しかし彼はラインの乙女達に捉われ激流の中に消える。全ての元凶の指輪は青い世界の中にいる乙女達の手に戻った。それが全ての終幕となった。
最後まで観てだ。王は涙と落として言った。
「最早何も言うまい」
「何もですか」
「そうだ。言葉もない」
こうだ。ホルニヒに話したのである。
「これ以上の感動はない」
「これだけの舞台は私も」
「観たことがないか」
「ありませんでした」
それはホルニヒもだった。彼は涙を流していないがそれでも言うのだった。
「神々の世界ですね」
「まさにそうだ。しかしだ」
「しかしですね」
「最後の作品がまだある」
そしてその作品のこともだ。王は話した。
「パルジファル、それが最後になる」
「パルジファルですね」
「おそらくそれがワーグナーの最後の作品になる」
王にはわかっていた。そのことも。
「彼はそれで全てを終えるのだ」
「そしてその作品をですね」
「私は観る」
今からだ。こう言うのだった。
「だが。今はだ」
「指輪ですね」
「指輪が遂に終わった」
王は満足した声で述べた。
「このことは私の人生にとって最大の喜びの一つだ」
「途中どうなるかわからなかったのでしたね」
「完成するかどうかな」
「しかしそれが完成して今舞台で完結しましたね」
「あの時私が彼を助けなければ」
ワーグナーをだ。他ならぬ彼をだ。
「そうはならなかったのだな」
「はい、その通りです」
事実だった。だからホルニヒもこう答える。
「まさに。あの時陛下がワーグナー氏をお助けしなければ」
「彼は指輪を完成させられなかった」
「他の作品もです」
指輪だけではなかった。それは。
「トリスタンとイゾルデも」
「そしてマイスタージンガーもだな」
「ですから陛下はワーグナー氏にとっては」
「ジークフリートか。いや」
ここで言い換えた。すぐにだ。
「ローエングリンだな」
「ローエングリンですか」
「それになるのだな」
こう言うのだった。
「私は彼にとっては」
「ローエングリンですか」
ここでもこの騎士だった。ジークフリートを観てもだ。そしてそのことはだ。王の中では矛盾しなかった。ジークフリートを観ながらもローエングリンを語ることは。
「陛下は彼ですか」
「そうだ、彼だ」
また言う王だった。
「私はあの騎士なのだ。彼にとっては」
「ではワーグナー氏は」
「ワーグナーの芸術も。全てだな」
「エルザ姫になるのですね」
「そうなるのだ。やはり私はローエングリンなのだ」
自分でそのことを確めて満足もする。
そのうえでだ。王はホルニヒにこうしたことも話した。
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