麗しのヴァンパイア
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第九十七話
第九十七話 次の興味の対象
鉄仮面の正体はわからないままだったので華奈子も美奈子も諦めることにした、だが文学への関心は止まらず。
華奈子は美奈子に今度はこんなことを言った。
「ねえ、小公子と小公女って書いた人同じよね」
「ええ、そうよ」
美奈子はその通りだと答えた。
「三銃士と巌窟王の作者さんも同じだし」
「デュマでね」
「ああ無情、嵐の九十三年、ノートルダムのせむし男もね」
「ユゴーで」
「有名な作品でもね」
「どの作品とどの作品が同じ人が書いたのか」
「それを頭に入れるのも面白いと思うわ」
こう華奈子に言うのだった。
「それで小公子と小公女はね」
「作者さん同じね」
「両方共主人公が苦労するけれど」
特に小公女が有名だ。
「最後はハッピーエンドよ」
「そうよね、ただね」
「ただ。どうしたのかしら」
「小公女読んでると」
華奈子が読んだのは小学生向けの意訳だがそれでも言うのだった。
「物凄く腹立つわね」
「ええ、ミンチン先生とかね」
「あの先生とラビニアはね。料理人の夫婦も」
その彼等もというのだ。
「物凄くね」
「腹立つでしょ」
「私もよ」
「セーラが落ちぶれたら掌返しして」
そうして徹底的にいじめてというのだ。
「あの先生読んでたらね」
「絶対に許せないって思ったのね」
「思わない筈ないじゃない」
華奈子は美奈子に怒りを剥き出しにして言い切った。
「あんな人あたしだったらね」
「もう見ただけでよね」
「飛び出そうよ」
怒りでミンチン先生に向かうというのだ。
「只でさえ弱い者いじめ嫌いなのに」
「華奈子だったら絶対にそうするわね」
美奈子も納得することだった。
「私もそうよ」
「やっぱりそうよね」
「こうしたところ姉妹ね」
ああした人間を許せないところがとだ、美奈子は華奈子にくすりと笑って述べた。そうしてだった。
二人で小公女をまた読んだ、最後はほっとしたがその途中の展開には二人共あらためて怒りを感じた。
第九十七話 完
2018・10・17
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