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永遠の謎

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553部分:第三十二話 遥かな昔からその十四


第三十二話 遥かな昔からその十四

「奴隷。あれはだ」
「陛下はお嫌いですね」
「私は間違っていると思う」
 王は人道主義からだ。奴隷を好んでいなかった。
「廃止されて然るべきだったのだ」
「人は自由を求めるからですね」
「その通りだ。そしてそれは」
 奴隷という存在を己に転移させて。そのうえで。
「私とて同じなのだ」
「王である陛下もまた」
「王と奴隷は似ているのかも知れない」
 この考えもだ。抱いたのである。
「若しかすればな」
「まさか。それは」
「至高の貴は底辺の奴と同じなのだろうか」
 断言して確信はできなかった。それはあまりに恐ろしいことだからだ。
「自由がないということは」
「そのこと故にですか」
「自由はない」
 また言う王だった。
「それならばだ」
「自由。それは」
「私は籠の中の鳥だ」
 これはだ。王が即位した時からわかっていることだった。
 そうしてだ。こう述べるのだった。
「そしてシシィも」
「あの方もですか」
「私達は互いを鳥に例えて呼び合ってきた」
 王が鷲、皇后が鴎だった。その中では。
「それは無意識の中でわかっていたからだ」
「皇后様もですね」
「私達は同じなのだ」
 王はこのことを誰よりも実感していた。皇后のことを考え。
「籠の中の鳥。同じなのだ」
「だからこそ陛下は城を築かれ」
「あの方は旅をしているのだ」
「自由を求められ」
「私は唯自由をも求めているだけではない」
 それだけではないことが複雑だった。王の築城は自由を求めてのことだけではないのだ。そこにはメルヘンもあれば他のものもあった。
「美を再現し」
「陛下の美を」
「ワーグナー、そしてバロックにロココ」
 それぞれの美の融合、これは変わらなかった。
「アルプスの自然の中も融合させ」
「その美を築かれますか」
「私の果たすべきことでもある」
 王はこのことを確かに言う。
「それもある」
「美ですか」
「だからこそ私はこの城達を築く」
 ただだ。自由を求めてだけではないというのだ。
「ただ。私がいなくなれば」
「?どういうことでしょうか」
「この城はこの世には不要のものとなろう」
 憂いをこのうえなく込めて。王は述べた。
「誰からも理解されない。孤独な城達なぞは」
「あの、それは」
「慰めはいい」
 ホルニヒのそうした言葉はいいとしたのだった。そのうえでの言葉だった。
「私が理解されないのと同じく。私が築いた城達も理解されないのだから」
「それ故にですか」
「この城達は不要のものとなる」 
 王は信じ込んでいた。王の築いたものもまた理解されないものであると。
 だからこそだと。王は言うのだった。
「それならばだ」
「不要だからこそ」
「この城達は私がいなくなれば消し去るべきだ」
 こう言ったのである。
「この世から永遠に」
「永遠に、ですか」
「誰からも理解されないのだ」
 王は深い悲しみと共に言う。
「それならばだ」
「消し去るべきなのですか」
「私を理解してくれる人は僅かだ」
 王が最もわかっていた。自分の理解者の少なさは。
 
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