輪入道
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第三章
「これがね」
「そうなのね」
「残念なことに」
「まあ十二時よね」
リィナはマリンにあらためて時間の話をした。
「その時に出て来るのね」
「それは確かみたいよ、ラジオ局の前にね」
「じゃあ本当にね」
「悪い妖怪だといけないから」
いい妖怪もいれば悪い妖怪もいる、マリンはこの考えからリィナに話した。
「それじゃあね」
「本当に十二時までにね」
「お仕事終わらせましょう」
「それに女の子が夜で歩くとかね」
「それだけで危ないし」
日本が治安がいいといっても不用心になるのは愚かだ、ましてや二人はアイドルなので余計に気をつけているのだ。
「それじゃあね」
「ええ、二人でね」
「気をつけてね」
「お仕事早く終わらせよう」
二人でこう話してだった、ラジオ局での仕事もした。このラジオ番組は二人が司会をしている番組だ。
その仕事が終わってだ、帰ろうとすると。
スタッフ達が二人と彼女達のマネージャーに声をかけてきた。
「あの、緊急でね」
「緊急?」
「緊急っていいますと」
「会議をすることになったんだ」
スタッフの一人がこう言ってきた。
「ちょっとね、いいかな」
「えっ、会議って」
「まずくない?」
その話を聞いてだ、二人はすぐに顔を見合わせて自分達だけで小声で話をした。スタッフに聞こえない様にして。
「今は普通に大丈夫だけれど」
「遅くなって十二時になったら」
「妖怪出て来ない?」
「そうならない?」
「じゃあ十二時にはラジオ局の前に出ない」
「そうした方がいいかもね」
二人でこんな話をした、そしてだった。
二人はどちらも仕事には真面目だ、それでだった。
会議にはしっかりと出て自分達も話した、会議は二人が危惧した様に長引いてそれでだった。
終わった時には十二時前になっていた、それで二人で話した。
「ちょっとね」
「ええ、時間置いた方がいいわよね」
「十二時を過ぎてからね」
「ラジオ局のビル出るべきね」
「それがいいわね」
「ちょっとだけ待てばいいから」
「二人共いいわね」
だが、だった。ここでだった。
二人のマネージャーである黒木麻弥子が言ってきた、子供の様に小さく背は一四二位だ。だがしっかりと黒いスーツとズボンを着ていて黒髪をロングにしている。切れ長の目だが童顔でスタイルも幼児体型なので子供がスーツを着ている様にしか見えない。
「帰るわよ」
「えっ、今からですか」
「今から帰るんですか」
「お仕事が終わったのよ」
麻弥子は驚く二人にこう返した。
「だったらね」
「早く帰ってですか」
「そうしてですか」
「お風呂に入って歯を磨いて」
既にラジオ局で食事は済ませている、だから晩ご飯の話はしなかった。
「寝るわよ。いつも言ってるでしょ」
「はい、アイドルは寝ろ」
「毎日しっかりと寝ろ、ですね」
「よく寝てこそ体力がある」
「お肌も奇麗になるからですね」
「そうよ、健康はまず食事と睡眠から」
これが麻弥子の持論だ、尚二人には料理も教えながら自分が健康的な料理をいつも作って食べさせている。二人に料理を教えているのは将来料理番組に出たり一人暮らしの時に役に立つからだ。
「だからね」
「それで、ですか」
「今からすぐに帰ってですか」
「お風呂に入って寝るわよ、ここからだとね」
ラジオ局からだと、というのだ。
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