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永遠の謎

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539部分:第三十一話 ノートゥングその二十


第三十一話 ノートゥングその二十

「陛下は既に槍も聖杯も持っておられるのです」
「私の心がそのままその二つか」
「その通りです」
「では後は城を築き」
「それを終えた時にこそ」
 それからだった。王の次に為すことは。
「我等の世界において下さい」
「そうさせてもらおうか」
「この世は陛下にとってはあまりにも汚れています」
 そして醜い。そうした言葉だった。
「しかしその世に果たすべきことがあり」
「そうしてだな」
「そうです。さらにあるのですから」
「果たそう」
 王は騎士の話を聞いたうえで呟いた。
「それではな」
「ではその様に」
 騎士は一礼した。そうしてその姿を次第に消していく。王はその騎士を見ながらだ。少しだけ微笑みそのうえで騎士に問うたのだった。
「また帰るのだな」
「そうさせてもらいます」
「また会おう」
「はい、それではまた」
 こう話してだった、騎士は王の前から消えたのだった。
 そして後に残った王はだ。少しだけ気が晴れて。
 傍にあった鈴を鳴らした。そうしてホルニヒを呼んでだ。
 そのうえでだ。彼にこう告げるのだった。
「これからアルプスに向かう」
「ですが今は」
「殿下のことか」
 ドイツ帝国皇太子、その客のことをだというのだ。
「あの方か」
「はい、お待ちですが」
「もういいのだ」
 その現実についてはだ。王は空虚に返した。
 そのうえでだ。こう述べたのだった。
「私にとってはだ」
「しかしそれでは」
「既に必要なことはした」
 王はそのことはもうしていた。そのうえでの言葉だった。
「ならばいい」
「では今から」
「アルプスに向かう。そうして」
「ノイシュヴァンシュタインですか」
「あの城に向かおう」
 その城の名を聞くとだ。王の言葉が弾んだ。
 そのうえでだ。こうホルニヒに述べた。
「そしてだ」
「そのうえで、ですね」
「あの城の築城を急ごう」
「リンダーホーフとヘーレンキムゼーは」
「無論その二つもだ」
 築城を続ける。そうするというのである。
「是非だ。ワーグナーとフランスをそこに表現しよう」
「では手配をします」
「済まないな」
 ホルニヒには礼と共に謝罪の言葉も述べた。
「そなたにはいつも迷惑をかける」
「いえ」
 王のその言葉にはだ。ホルニヒは。
 静かに。畏まった態度になって応えたのだった。
「私は陛下の臣ですから」
「だからか」
「はい、このままいさせてもらいます」
 こう王に答えたのである。
「そして陛下の御言葉ならば」
「私は幸せなのだな」
 ホルニヒの話を聞いてだ。王は微笑んだ。
 そうしてだ。こうも言ったのだった。
「理解者がいてくれてそなたもいてくれている」
「私も」
「それを幸せと聞かずして何と言うのか」
 こう言っていくのだった。
「ではな」
「これよりアルプスに」
「赴こう」
 こう話してだった。王は実際にアルプスに経った。
 鉄道の豪奢な、青と金の宮殿を思わせる車両の中でだ。王はホルニヒから聞いていた。
「そうか。宮廷では大騒ぎか」
「皇太子殿下をそのままにしていいのかと」
「そうだろうな」6
 そのことはわかるとだ。王は述べた。
 だがそれでもだとだ。王は同時に言った。
「しかしだ」
「今陛下はここにおられますね」
「もう決めた。私は私の為すことをする」
「陛下の。それは」
「城を築く。そうする」
 こう言ってだった。ミュンヘンを振り返すことなくアルプスに向かってだった。
 そのまま城の築城に取り掛かるのだった。王はその世界に入っていった。夢幻の中に。


第三十一話   完


                2011・10・6
 
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