永遠の謎
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538部分:第三十一話 ノートゥングその十九
第三十一話 ノートゥングその十九
「むしろ卿が主役か」
「私と。私と同じ心を持つ彼等が」
「その中にいる。私の中に」
「そして陛下もです」
「私も中にいるのか」
「陛下はあの城の主となられる方なのですから」
だからこそだというのだ。
「ですから」
「私もそうなのか」
「そうです」
騎士は微笑み王に語る。
「必然的にです」
「陛下もまたそうなります」
「私もまた卿等と同じく」
「そのことはお嫌ですか」
「嫌である筈がない」
王は即座に否定した。そのことを。
「私は卿に出会ってから今に至るまで卿のことを考えていたのだから」
「それでは宜しいですね」
「あの城において永遠の王となる」
王はそこに新たなものを見ていた。夢を。
そうしてだった。王はさらに話していく。
「ワーグナーがあの世界を描くのはこれからだ」
「そうですね。まさにこれからです」
「まずは指輪の残る二部がある」
その作品達もだ。王は見ていた。
「ジークフリートと神々の黄昏だ」
「ワーグナー氏の生涯の仕事を終わらせてから」
「そうしてだな」
「はい、パルジファルにかかるでしょう」
「パルジファル。いい響きだ」
王はその名前自体にだ。清らかさを見出していた。
そうしてだ。こう騎士に述べた。
「ワーグナーの世界に相応しい」
「そうですね。そして」
「そして?」
「パルジファルは陛下御自身なのです」
騎士がだ。微笑んで王に話した。そうだと。
「陛下はまさにパルジファルなのです」
「私があの城に入るからか」
「それもありますが」
騎士は王にさらに話していく。
「先程お話させて頂いた通りで」
「私もまた卿等と同じだからこそ」
「だからこそです」
それでだというのだ。王はパルジファルだというのだ。
「例えば陛下は私に会われ」
「それで大きく変わった」
「これはそのままですね」
「そうだな。クンドリーの接吻で目覚めた彼だ」
そのだ。パルジファルだというのだ。
「そうなるな」
「陛下への接吻は私との出会いでしたが」
「それでだな」
「はい、それと共にです」
こう話していくのだった。
「陛下はパルジファルであられるのです」
「清らかな愚か者か」
パルジファルとはだ。まさにその通りだった。
「それだな」
「はい、左様です」
「では私は槍は」
その槍は何かはだ。王はわからない。
だがそのことについてもだ。騎士は微笑んで答えた。
「御心です」
「私の中にあるのか」
「いえ、陛下の御心がです」
それ自体がだ。槍になるというのだ。
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