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永遠の謎

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532部分:第三十一話 ノートゥングその十三


第三十一話 ノートゥングその十三

「あの王にしてもそうだった」
「建築に美食に美女に戦争に明け暮れていてもですか」
「太陽王ですらですか」
「束縛の中にあったのですか」
「そうだ。あの王も常に誰かに見られ」
 目覚めや食事、そうした日常全てにおいてだ。ルイ十四世にはプレイベーとトいうものがなかったのだ。それも何一つとしてだ。
「そしてブルボン家の束縛の中にあったのだ」
「では好きに振る舞える王は何かがおかしい」
「そうだというのですね」
「そういうことだ。そうした君主は何かがおかしい」
 実際にだ。ビスマルクは述べた。
「普通はできるものではないのだ。とりわけ」
「バイエルン王はですか」
「その中にとりわけ囚われている」
「そうだというのですね」
「その通りだ。あの方はあまりにも繊細で感受性が強い故に」
 王の気質、まさにそれによってだった。
「玉座の束縛の中におられるのだ」
「そのうちの一つがオットー様」
「王弟殿下ですか」
「殿下にそのお気持ちはない」
 もっと言えば悪意もない。兄王に対して。
「全くだ」
「しかしそれでもですか」
「御自身がそう思わずとも」
「そうだというのですか」
「そうだ。しかし今は何もなくて何よりだ」
 オットーの平穏をだ。ビスマルクも喜んでいた。
 そうしてだ。周囲にまた話した。
「バイエルンはこれでいい」
「バイエルン王の御出席はなしで」
「このままで」
「そしてバイエルンには様々な権利が認められるべきだ」
 ドイツの中にあってもだ。そうだというのだ。
「軍事や鉄道、郵便に関してはだ」
「バイエルンのままですか」
「それでいい」
 こう話すのだった。バイエルン自体に。
「少なくとも私はあの方について悪い様にはしない」
「バイエルン王がお好きなのですね」
 側近の一人がこう問い返した。
「閣下は」
「好きだ」
 そしてだった。ビスマルクは。
 バイエルン王がそうするその遠い目になりだ。その問いに応えた。
「あの方の御心、そして御覧になられているものも」
「そうしたものがですか」
「お好きなのですか」
「そうだ。だからこそあの方は御護りしたい」
 騎士になっていた。彼も。
「ドイツのこの中で」
 こう話すのだった。ドイツ皇帝、自身の主であるプロイセン王がそれになる戴冠式においてだ。宮殿の外から砲声が聴こえそれが戴冠式を祝うファンファーレとなっていた。パリではコミューン達が騒いでいたのだ。
 だがそのコミューンも鎮圧された。このことを聞いてだ。
 王はだ。苦い顔でホルンシュタインに述べた。
「気持ちはわかる。そして無駄な流血は忌むべきことだ」
「それでもですね」
「共産主義によって為されるものならば」
「危ういですね」
「非常にだ。危ういものとなる」
 こうだ。王宮に戻ったその中でホルンシュタインに話すのであった。
「それは卿も同じ考えだと思うが」
「少なくとも私は」
 前置きしてからだ。ホルンシュタインは答えた。
「共産主義については否定的です」
「それは貴族だからか?」
「いえ、ドイツ人だからです」
 だからだとだ。ホルンシュタインは王に答えた。
 
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