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永遠の謎

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525部分:第三十一話 ノートゥングその六


第三十一話 ノートゥングその六

「だが中には。洞窟の中の湖にはだ」
「どうされるのですか、湖は」
「洞窟の中のそれは」
「白鳥、本物も含めてだ」
 それだけではないというのだ。ローエングリン、そして白鳥も。
「白鳥を模した小舟、機械で動くそれを置きたい」
「では洞窟の中にも科学を入れるのですか」
「今の科学を」
「照明もだ。様々なものを入れてだ」
 尚且つだというのだ。さらに。
「オーケストラも入れたい」
「洞窟の中に音楽もですか」
「それも入れますか」
「そうしたい。音楽は外せない」
 王にとって音楽は絶対のものだった。何故ならその音楽が王とワーグナーをめぐり合わせたからだ。それ故に外せないというのだ。
 そしてだ。王は芸術家達にさらに話していくのだった。
「後は食堂から厨房まで料理をすぐに届けられる様に小型のエレベーターを置きたいな。食器は温かいものをすぐに出せる様にしたい」
「城には常にですか」
「科学を取り入れますか」
「外観は中世でありながら中には現代もある」
「そうした城にされるのですね」
「如何にも」
 まさにその通りだと。王は答えた。
「その他にもだ」
「城の各所にですね」
「科学を入れられて」
「科学は幸せをもたらす」
 王は言った。
「人にだ。そしてそれは」
「芸術にもですか」
「新たなものをもたらしますか」
「錬金術かも知れない」
 王はそこに神秘的なものと禁じられたものを見ながら述べた。
「しかしそれでもだ」
「芸術をも変える」
「それが科学ですか」
「そしてそれを今から築かれる城にも取り入れる」
「そうされるのですね」
「ミュンヘンのあの庭と同じだ」
 王が造らせたあの人工の庭とだというのだ。
「科学を入れて素晴らしい幻想の世界を造り出すのだ」
「左様ですか」
「そうされてですか」
「科学を取り入れた現代の芸術の粋を集めた城」
「それを築かれてですか」
「そうだ。素晴らしい芸術を築く」
 王は半ば恍惚としていた。その芸術を想い。
「ノイシュヴァンシュタイン、ヘーレンキムゼー等をだ」
「地下の洞窟もそうされてですか」
「そして内装にもですね」
「そうしたものを取り入れられて」
「暖房も入れたい」
 続いてそれもだった。
「とにかくだ。現代の科学は積極的に取り入れる」
「ではその様にしましょう」
「そしてそのうえで、ですね」
「素晴らしい城にされますか」
「これまで誰も築いたことのないような」
「そのつもりだ。私は築く」
 王はこれから築く城をだ。既に目を見て話す。
「これからだ」
「では。我々もです」
「今から細かい部分まで設計させてもらいます」
「そしてその完成図を持って来ます」
「それまでお待ち下さい」
 こう話してだ。芸術家達はまずは王の前を去る。一人残った王は残された設計図を見ていた。その王のところにだ。またあの騎士が来た。
 騎士はいつも通り王に一礼してからだ。にこやかに笑って言うのである。
「夢をいよいよですね」
「そうだ。現実のものとする」
 己の机に座りながらだ。王は騎士に述べた。
 
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