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永遠の謎

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520部分:第三十一話 ノートゥングその一


第三十一話 ノートゥングその一

               第三十一話  ノートゥング
 ドイツはプロイセン、ビスマルクの導くままにフランスに勝っていく。それはまさに破竹の勢いだった。
 それを見てだ。フランス皇帝であるナポレオン三世は重臣達に言った。
「セダンに行く」
「セダンに?」
「あの場にですか」
「セダンの我が軍は聞くままだとだ」
 報告のままだとだ。どうかというのだ。
「敗れる。だからだ」
「陛下が自ら行かれてですか」
「指揮を執られるのですか」
「そして勝たれる」
「勝敗は既に決している」
 しかしだった。皇帝は重臣達にこう答えた。
「我が国は破れた」
「いえ、まだ兵は多いです」
「それに装備も補給も万全です」
「確かに今は劣勢ですが」
「それでもまだ」
「ドイツの勢いは最早止められない」
 皇帝の言葉は変わらない。
「それならばだ」
「それならばとは」
「どうされるのですか」
「戦争を終わらせる」
 皇帝はこう重臣達に答えた。沈痛な顔で。
「これ以上戦いを続けてもフランス、そして民達が傷つくだけだ」
「しかし敗れると多くの賠償金を取られます」
「それに領土も」
「そうだろう。ビスマルクは多くを手に入れない考えの様だが」
 だがそれでもだというのだ。
「しかしそれはもうだ」
「ならないというのですか」
「そうだと」
「オーストリアの時は周りが譲歩した」 
 実はオーストリアに勝った時にだ。周りはオーストリアに多大な要求をしようと思っていたのだ。戦争に勝った国の当然の権利としてだ。
 だがビスマルクは将来のオーストリアとの同盟を念頭に置いていた為それをあえてせずに周りに何とか己の考えを認めさせたのである。
 彼はフランスとも今後の関係を考えていた。だがそれはだというのだ。
「今回はだ」
「それはできませんか」
「ビスマルクでも」
「万能の人間なぞいない」 
 このことはビスマルクにも言えた。今やドイツの舵取りになろうとしている彼すらも。今欧州で最も実力があると言われている彼ですらだ。
「だからだ。我が国に対してはだ」
「プロイセンは多大な要求をする」
「そうなりますか」
「今の時点でもだ」
 今のだ。ただ敗れている状況でもだというのだ。
「これで我が国のかなりの部分が占領されるかパリを陥落させられれば」
「その時はプロイセン、そしてドイツはですか」
「我が国に法外な要求をしてくる」
「そして我が国はそれを拒否できないですか」
「そうだ。今降伏しても我が国にはかなりの力が残る」
 敗戦であろうとも程度がある。皇帝は今そのことを念頭に置いてだ。自国のことを考えていた。戦争を終わらせること、そしてそれかもだ。
「だからだ。今のうちにだ」
「陛下が自ら行かれ」
「そのうえで」
「降伏する」
 皇帝は苦いが確かな声で言った。
「わかったな」
「無念ですが」
「そうするしかありませんか」
「少なくとも要求以外はビスマスクの思惑通りだ」
 皇帝は降伏するこの段階においてもこう語った。
「開戦に至るまでもそして降伏までもだ」
「全ては彼の頭の中にありですか」
「我々は彼に合わせて踊っていただけですか」
「踊らされていたのだ」
 皇帝の言葉はここでさらに苦いものになった。
 
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