永遠の謎
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509部分:第三十話 ワルキューレの騎行その八
第三十話 ワルキューレの騎行その八
「それはまだ第三幕が終わってからです」
「そこでわかる」
「そうだというのですか」
「はい」
まさにそうだとだ。王は言うのだった。
「そのうえでわかることです」
「最後の最後まで観てですか」
「それでわかるものですか」
「最初で何かわかるものではありませんし」
そしてだった。さらに。
「途中までで決まるものでもありません」
「やはり最後の最後まで観てですか」
「その出来がわかる」
「そういうものですか」
「確かにトリスタンやマイスタージンガーははじまりから最高のものだと確信しました」
この二つの作品はそうだというのだ。
「そしてこのワルキューレもです」
「はじまりからですか」
「最高のものだとですか」
「思われますか」
「最高のものではあります」
しかしだと。ここで王は言った。
「ですが最後まで観てです」
「最後まで、ですか」
「そこまで御覧になられ」
「完璧な。完璧なワーグナーか」
王はだ。完璧なものはそれだというのだ。
「それが決まるのです」
「最高と完璧はまた違う」
「そしてワーグナー氏は完璧である」
「そうだともいうのですか」
「そう。ワーグナーはまさに完璧な美なのです」
王にとってはだ。意中にあるのはやはり彼なのだ。
「そしてその美は」
「最後の最後で完成する」
「そういうものですか」
「だからこそ」
王は言った。
「私は待ちきれなかったのです」
「御覧になられることをですね」
「そのことを」
「そうです」
まさにそうだというのだった。
「完全なるものを観たいが為に」
「そしてその完全なるものがですね」
「今完成に近付いているのですね」
「そうです。次第にです」
第三幕になり。それが終わる時にだというのだ。
しかしだ。この作品はどうかというと。
王はこのこともだ。少しずつ話した。
「ですがこのワルキューレは」
「間も無く幕が下りますね」
「長い作品ですが」
「いえ、それで終わりではありません」
幕が下りだ。それでだというのだ。
「それからもです」
「まだあるのですか」
「ワルキューレは」
「そうです。それからもです」
あるとだ。王は話す。
「何故ならワルキューレは指輪という作品の一部に過ぎないのですから」
「確か四部作でしたね」
一人が言った。
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