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永遠の謎

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502部分:第三十話 ワルキューレの騎行その一


第三十話 ワルキューレの騎行その一

               第三十話  ワルキューレの騎行
 ワルキューレの初演が近付いていた。しかし。
 その中でだ。王は首相のことでだ。周囲に言っていた。
「ではです」
「今の首相のホーエンローエ卿はですね」
「遂にですか」
「解任ですか」
「そうします」
 こうだ。沈んだ顔で玉座から述べた。
「そして後任はです」
「オーストリア大使のあの方ですね」
「シュタインブルク伯爵ですね」
「はい」
 その彼を首相にすると。王は明言した。
 そのうえでだ。王はまた言った。
「彼はカトリックですから」
「国民も彼は支持します」
「そうしますので」
「バイエルンはカトリックです」
 このことは何百年も前から変わらない。同じのままなのだ。
「ですから。どうしてもです」
「プロイセン寄りのホーエンローエ卿はです」
「国民の支持を得られません」
「ですから」
「それはわかっています」
 王とてだ。だが、だ。
 その王はだ。辛い顔で言うのだった。
「彼は。ホーエンローエはです」
「真にドイツの為になるというのですね」
「そうだと」
「はい。多くの者はわかっていないのです」
 だが王にはわかっていた。その現実が。
「ドイツは。最早」
「プロイセンが軸になり統一される」
「だからこそ」
「そうです。ホーエンローエを辞任させてもです」
 それでもだというのだ。問題は残るというのだ。
「ビスマルク卿は残ります」
「プロイセン首相として」
「あの国にですね」
「そうです。問題は解決しないのです」
 バイエルンのだ。プロイセンに対する反発もだというのだ。
「それは」
「しかしそれでもです」
「国民はその反発をホーエンローエ卿に向けています」
「プロイセンの傀儡と見て」
「ホーエンローエが正しいのです」
 やはりだ。王はわかっていた。
「そしてビスマルク卿も」
「あの方も正しいのですか」
「その反発されている方も」
「反発されていてもそれが誤っているということにはなりません」
 一つの真理だった。
「あの方は必要な方なのです」
「ドイツにとってですね」
「そうです。ひいてはです」
 王はだ。そのビスマルクについて語っていく。
「バイエルンにとっても」
「ドイツを統一しそのうえで国を護っていく」
「だからこそですね」
「ドイツは長い間戦乱に覆われ」
 王は戦いを好まない。このことは幼い頃からだ。
 戦いは文化や芸術を破壊し人の命を奪っていく。王にとってはそうしたものでしかない。それでだ。王は戦いを忌み嫌っているのだ。
 
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