| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

永遠の謎

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

483部分:第二十九話 人も羨む剣その五


第二十九話 人も羨む剣その五

 その産業、そしてだった。
「人材もいる」
「人材もですか」
「それも」
「そうだ。文学や音楽だけではなく」
 ゲーテにベートーベン、そしてワーグナーだった。
「科学でも人材がいるからだ」
「その彼等の力を使いですか」
「産業を発展させますか」
「人材育成は必須だ」
 そのだ。ドイツの発展の為にだというのだ。
「その産業と人材でドイツは生きるのだ」
「統一してからのドイツはですね」
「そうなりますか」
「戦わず、対外関係を考え進出していく」
 つまりだ。穏健路線だというのだ。
「それがドイツのこれからなのだ」
「戦争を終えてですか」
「そうして」
「軍は維持していくがな」
 統一を進ませているもののもう一つだった。血、即ち軍はだというのだ。
「軍は攻めるだけではない」
「守る為にもある」
「だからですか」
「そうだ、強力な軍は維持していく」
 それは変わらないというのだ。統一してからもだ。
「さっきも言ったがドイツは欧州の中央にあり守りはない」
「だから強力な軍が必要ですか」
「何としても」
「そうだ。ドイツの平和と安定の為には三つのことが必要だ」
「産業、外交、そして軍ですか」
「その三つですか」
「産業は発展させ外交は穏健なものに変えていく」
 そして軍はだった。
「軍は維持していく」
「一つは栄えさせ一つは変え一つはそのままですか」
「それがドイツのこれからですか」
「若しもそれを間違えると破局を迎える」
 ビスマルクの顔がここで強張った。
「それを誤ってはならないのだ」
「ううむ、統一して終わりではない」
「それが現実ですが」
「現実だけの話ではない」
 ビスマルクは現実だけを見てはいなかった。もう一つのものもだった。
「人は死んで終わりでもないしな」
「最後の審判を経て天界に行きですか」
「神と共に生きるからですね」
「生憎私は地獄だがな」
 ビスマルクはここでは自嘲を入れた。口元も微かにそなる。
「悪人はそこに行くからな」
「いえ、閣下はドイツの為に働いておられます」
「ですから地獄はです」
「閣下には縁のないものかと」
「だといいがな」
「はい、首相は必ず天界に行かれます」
「ドイツを築き多くのものを築かれた方として」
 それもまた善行だというのである。
「ですから御安心下さい」
「そのことは」
「それならばいいがな」
 彼等に言われてだ。ビスマルクは少し笑った。しかしだ。
 すぐにだ。こうも言うのだった。
「だがな」
「だが?」
「だがといいますと」
「あの方はどうなのか」
 言う言葉はこれだった。
「バイエルン王は」
「あの方ですか」
「天界に行かれるかどうかですか」
「そのことですか」
「そうだ。あの方は天界に行かれるのか」
 こう言うのである。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧