永遠の謎
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479部分:第二十九話 人も羨む剣その一
第二十九話 人も羨む剣その一
第二十九話 人も羨む剣
プロイセンとフランスの戦いの時が迫ろうとしていた。遂にだ。
バイエルン王も動員令の書類にサインをした。バイエルンに続いてだ。
南ドイツの各国も続く。ドイツ全体がフランスと戦おうとしていた。
フランス側の高官はだ。そのことに対してだ。悠然と構えて言うのだった。
「軽い気持ちでこの責任を引き受けよう」
「ボタン一つに至るまで準備に不備はない」
絶対に勝てるとだ。確信していたのだ。
だが、だ。皇帝であるナポレオン三世だけはだ。
このうえなく苦い顔で皇帝の座にいてだ。こう周囲に漏らしていた。
「罠にかかった」
「罠といいますとプロイセンの」
「あの国のですか」
「そうだ。ビスマルクのだ」
他ならぬ彼のだ。それにかかったというのだ。
「やられた。エムスの時にだ」
「あの電報ですか」
「あの電報は短くされた」
それも極端に、しかも双方の敵愾心を煽る様にだ。ビスマルクは編集してそれを流したのだ。そしてそれこそがだというのだ。
「あれが罠だったのだ」
「ではビスマルク卿はあの頃からですか」
「我が国との戦いを考えていたのですか」
「既に」
「プロイセンの参謀総長であるモルトケはだ」
プロイセンのもう一人の重要人物だ。王であるヴィルヘルム一世、宰相のビスマルク、砲を造るグルック社のグルック等と共にだ。彼もまたプロイセンにおいて注目されている者なのだ。欧州全体からだ。
「彼がビスマルクと共に食事をしていた時にだ」
「その時にですか」
「あの電報についてですか」
「答えたそうだ」
答えたというのだ。
「まずビスマルクが電報の話を聞いた時にだ」
「というと」
「まずはあの御仁ですか」
「何時我が国と戦争ができるか」
それをだ。既に問うてきたというのだ。ビスマルクは。
「それを問うてだ」
「そしてあのモルトケ氏がですか」
「どう答えたのでしょうか」
「すぐだ」
そうだとだ。皇帝は忌々しげな顔で答えた。
「すぐにできると答えたのだ」
「では我が国との戦争は最初から念頭に置いてですか」
「ビスマルク卿は戦略を練っていた」
「そうだったのですか」
「あの方は」
「してやられた」
首を横にだ。忌々しげに振ってだ。
皇帝はだ。苦い顔で述べた。
「全く以てな」
「そして今に至るというのですか」
「プロイセンの罠にかかったままですね」
「戦争をはじめる」
「そのプロイセンと」
「罠にかけた相手と戦争をする」
皇帝は今フランスが置かれているその現状についても述べた。
「それで勝てる筈がない」
「プロイセンもまた既に準備をしていますか」
「戦争の」
「そうだ。しかも我々以上に用意周到にだ」
そうしているというのだ。彼等は。
「我々のことも丹念に調べたうえでだ」
「では開戦になれば」
「我が国は敗れますか」
「すぐに」
「犠牲者は少ないに限る」
皇帝は言った。
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