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器が違う

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第一章

                器が違う
 その時金智紀は大日本帝国陸軍にいた、家族が転居した先で生まれた福岡の小学校で学業優秀であり先生に中学校への進学を勧められ親族もそれならと言って貧しい中で学費を工面してくれてそうなった。そして中学校でも学業優秀で今度は陸軍士官学校の受験を薦められてだ。
 士官学校を受験し無事に合格し陸軍に入った、卒業後は砲兵将校となりそのうえで軍務に服していたが。
 彼はその中で満州の国境警備についていたが当時日本軍は緊張した中にあった。日華事変もあったが満州でもだ。
 ソ連軍と対峙して極めて緊張していた、それで当時大尉だった彼に部下である安本源三少尉が怪訝な顔で言ってきた。
「大尉、どうにもです」
「相変わらずだな」
「ソ連の動きはおかしいです」
「連中は何時何をしてきてもおかしくないな」
「斥候も増えてきていて」
「空の方もな」
「航空機が増えていますね」 
 ソ連軍が偵察機を多く出してきているのだ、安本は厳めしい顔をさらに厳めしくさせて金の細長く顎の先が尖って細い目の顔を見て答えた。
「どうにも」
「航空機なら負けないがな」
 金は安本にその鋭い目を向けて言った。
「我が軍も」
「はい、空なら」
「数が同じならな、しかしな」
「問題は数ですね」
「奴等は数が多い」
 金はこのことを懸念していた。
「若し衝突すればな」
「その数に押しやられますね」
「しかも装備も国民党軍よりいい」
 今大陸で戦っている彼等よりもというのだ。
「だからな」
「その数と装備にですね」
「どう向かうかだな」
「そこが問題ですね」 
 安本も険しい顔で言った、彼は柔道で鍛えていて大柄で身体もしっかりしている。かつては武道専門学校も薦められたが野戦砲兵学校から少尉になった。金も砲兵隊にいて部隊を率いているのだ。
 その砲兵隊もまた緊張した中にあった、その中で遂にだった。
 日本軍はソ連軍とノモンハンで衝突した、この時金は安本と一緒に部隊ごとそのノモンハンにいた、そうしてだった。
 戦闘に参加したが彼は日本軍側の戦力を見て驚いて言った。
「多いな」
「そうですね、只の衝突にしては」
「随分だな」
「全くです」
 安本もこう応えた、部隊は大砲を前線に向けつつそのうえで移動していた。
「これは下手をしたらです」
「戦争だな」
「そこまでのものですね」
「航空機も多いしな」
「そして砲も」
「これは本当にな」
「かなりの戦いになりますね」
 安本はまた言った、満州の荒野を進みながら。山はあるが木々は少なく日本の地形とは全く違う。
「ですがそれでも」
「負けてはな」
「帝国陸軍の名折れですね」
「だからこそ敢闘していくぞ」
 金もこう言ってだった、部隊と共に前線に出た。だが彼等の部隊が前線に出たその時には既にだった。
 日本軍はかなり押されていた、彼等が前線に到着した頃ソ連軍の数は圧倒的だった。その中でも特にだった。
 戦車に装甲車それに火砲の数が多く金はこのことに仰天した。
「多いとは聞いていたが」
「はい、歩兵だけではないですね」
 安本も応えた、彼等は戦っている前線から少し離れていたが目の前での戦闘を見てそのうえで話をしていた。
 友軍は果敢に戦っている、だが。 
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