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わざと選ぶ

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第一章

               わざと選ぶ
 この時ゼウスはオリンポスの天空の神即ちオリンポスの主の座で考え込んでいた。そうしてだった。
 神々の中でも賢者として知られるプロメテウスを呼んでこう言った。
「人が捧げる供物のことだが」
「そのことでお考えでしたか」
「そうだったが」
 それでもと言うのだった。
「今何かと考えている」
「神の取り分と人の取り分ですね」
「そうだ、具体的に言うとだ」
 ゼウスはプロメテウスに深く考える顔で話した。
「肉か骨かだ」
「そのどちらをですね」
「神が受けるか人が貰うかな」
「それでゼウス様はどちらを頂きたいでしょうか」
「それだ、やはり人にはな」
「多くをですね」
「やりたい」
 こうプロメテウスに話した。
「神は既に有り余るものを持っている、しかしな」
「人は違うので、ですね」
「多くをやりたい、しかしだ」
「神の体面もありますね」
「それも大事だ、体面を保ってだ」
「人に多くをやりたい」
「そう思っている、しかしどうしても考えがまとまらず」
 その為にというのだ。
「そなたを呼んだのだ」
「そして私の知恵をですね」
「授けて欲しい」
 是非にというのだ。
「何かな」
「そうですか、では」
「では。何だ」
「これより私が二つのものを差し出します」
 プロメテウスはゼウスに笑って申し出た。
「そうしてです」
「私が受け取ったものをだな」
「神の取り分としてはどうでしょうか」
「そして取らなかった方はだな」
「人の取り分とすることで」
 こうすればどうかというのだ。
「それで如何でしょうか」
「そうだな、ではすぐにだ」
「これよりですね」
「その二つのものを持って来てくれ」
 自身の前にというのだ。
「そうしてくれ」
「わかりました」
 こうしてだった、プロメテウスは暫く経ってからゼウスに布に包まれたものを二つ持ってきた、見ればどちらの布にも血が滲んでいる。
 その血を見てだ、ゼウスはプロメテウスにすぐに言った。
「その供物だな」
「先程人がゼウス様に捧げたものです」
 プロメテウスはゼウスに畏まって話した、自身の前にその二つの包まれたものを出しながら。
「一匹の大きな牛でした」
「ふむ、ではだな」
「片方に肉と内臓、そして」
「もう片方に骨があるな」
「骨には脂身もあります」
 こちらもというのだ。
「それも」
「そして私が選んだ方がか」
「神の取り分となります」
「そういうことだな」
「ゼウス様がお悩みでしたので」
「どちらかわからない様にしたか」
「左様です、では」
 プロメテウスはゼウスにさらに話した。
「これよりです」
「選ばせてもらう」
「それでは」
 プロメテウスも応えてだった、そのうえで。
 ゼウスは片方の布に包まれたものを選んだ、そうしてプレメテウスに告げた。 
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