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歌集「冬寂月」

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六十三




 夜半にかかる

  片割れの月の

   幽かなる

 侘びし影にそ

     想い映しぬ



 真夜中に差し掛かろう時…見上げれば、半月が地を照らす…。

 未だか弱き光り…それは侘びしさを忍ばせ、過ぎたる時を偲ぶには良いかも知れない…。

 手の届かぬ過去…決して叶わぬ恋…。

 未練と後悔が、落ちた影から手を伸ばす…。



 霜見月

  安之堀川

   流れなく

 時と流るは

    想いなりける



 十一月も終わり近く…見れば、安之堀川の水も細々としている。

 本格的に冬になると思うと、憂鬱な気持ちになり…後どれ程の時を過せば、私は寂しさから逃れられるのだろう…。

 水のない川…時と共に、想いさえ流してきているのかも知れない…。




 
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