デジモンアドベンチャー Miracle Light
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第69話:喫茶店・MITSUBACHI
現在子供達は戦力の増強を求めてデジメンタルを探す子供達だが、いくら探してもデジメンタルは見つからない。
「はー、腹減ったな」
「はあ、あんたもうヘバったの?本当に情けないわねえ」
腹を擦るブイモンを呆れるように見つめるテイルモン。
「うるさいドブネズミ。下水道に引っ込め」
「………くたばりなさい!!青蛙!!」
「くたばるのはお前だあ!!」
「やかましい!!」
「「…うぎゃああああ!!目が、目がああああああ!!」」
喧嘩をしようとするブイモンとテイルモンに光子郎から授かった対ブイテイル喧嘩対策用に授かった催涙スプレーを噴射して喧嘩を止める大輔。
因みにこの催涙スプレーは太一とヤマトに使うつもりだったと光子郎は語っていた。
「元気ねえ…」
「あのどんな状況でも喧嘩出来る気力はどこから湧いてくるのやら」
最早、京も賢もブイモンとテイルモンに呆れるどころか感心していた。
「チューチューゼリーもう無いだがや……」
「腹が減っては戦は出来ぬと言った所でしょうか……」
「やっぱり一度帰って…あれ?」
「ヒカリちゃん?どうした?」
「甘い香りがする…パンケーキの香り…」
「え?パンケーキ?…本当だ。パンケーキの匂いだ」
タケルは直ぐに臭いを嗅ぐと本当にパンケーキの甘い匂いがした。
と言うよりヒカリ、嗅覚鋭過ぎではなかろうか。
「甘いパンケーキ…ね?ね?食べていこうよ?ねえ?」
大輔の腕に抱き着いてパンケーキ食べたいアピールをするヒカリ。
まあ、大輔も空腹だったし、パンケーキを食べるのもいいかと甘い香りのする方向に向かう。
そしてそこには凄い行列の出来た喫茶店・MITSUBACHIと寂しげな雰囲気を漂わせたレストランが建っていた。
「うっわあ、凄い行列」
「こんな行列が出来るなんてこの喫茶店のパンケーキはそんなに美味しいんでしょうか?」
「どうだろう?ねえ、2人共…2人共?」
タケルが大輔とヒカリを見遣れば微妙な表情を浮かべており、ブイモンもテイルモンも同様に微妙な表情を浮かべていた。
「どうしたんだい?」
「いやあ、あの店。俺とヒカリちゃんの間違いじゃなきゃあいつの店だよな?」
「うん、ハニービーモン達の喫茶店だよね」
「「え?ハニービーモンの喫茶店…?」」
「ハニービーモンって何それ?私知らないんだけど?」
「僕は知ってます。おじさんの家でお手伝いしていたデジモンですね」
「後、賢ちゃんの舎弟だったりするし、ブイモンや僕と同じく古代種の生き残りの1体だったりするんだよ」
「ハニービーモンは俺…ブイモンが知識のデジメンタルでアーマー進化するデジモンだ。結構強いぞあいつ」
ガードロモン達を一方的にボコボコにしてたし、成熟期にしては規格外の強さだろう。
「あれー?大輔達!?ヤッホー」
チャックモンが店の近くまでいた大輔達に気付いて手を振ってくる。
「やだー!!何あのユキダルモンのミニチュアみたいなデジモン。滅茶苦茶可愛いんだけど!?」
「あいつはチャックモン。あいつも古代種だ。成熟期だけど完全体並みに強いぞ。」
「チャックモンもハニービーモンもダークマスターズとの戦いで生き延びた猛者なんだ」
ブイモンとワームモンが説明すると、京は疑問符を浮かべまくる。
「ダークマスターズ?何それ?」
「そういや、京と伊織には詳しいこと話してなかったな」
「そうだね、ゆっくり出来そうだし丁度良いかもね」
チャックモンに案内され、裏口からハニービーモン達の休憩室に入れられた。
しばらくしてMITSUBACHIの店主のハニービーモンが全員分のパンケーキと珈琲を持って来てくれた。
ご丁寧に追加の蜂蜜とホットミルクも持って。
「久しぶりだねハニービーモン。儲かってるみたいじゃないか」
「おう、兄貴。久しぶりです」
「いやーん、この子も滅茶苦茶可愛い!!口調と見た目のギャップがたまんなーい!!」
嬉々としてハニービーモンに触りまくる京を賢は苦笑しながら見つめる。
実際チャックモンもハニービーモンも可愛い系統のデジモンだから女の子に受けるのは当然か。
「兄貴、この女は?」
「この人は井ノ上京さん。同じ選ばれし子供の仲間さ」
「仲間ですか、兄貴と仲良さそうだからてっきり兄貴の嫁さんかと」
「え?」
「へ…?いやーんもう!!嫁さんって!!この子ったらもう!!」
照れながらバシバシとハニービーモンの背中を叩く京。
因みにハニービーモンの頭部の針は強力な麻痺毒針だと聞いているので大丈夫だろう。
「まあ、とにかく熱々のうちに食ってくれや。厳選した蜂蜜とバターのソースとふわふわサクサクのパンケーキのハーモニーに酔いしれろ」
【頂きます。…う、美味い!!】
「締めは蜂蜜を使ったアイスクリームだ。食え」
【これもまた美味い!!】
パンケーキとアイスクリーム、珈琲を平らげる大輔達。
「あの、ご馳走になっちゃったけど私達お金…」
「金は良いぜ姐さん。デジタルワールドのために体張ってくれてんだからこれくらいは安いもんさ」
「やだ、可愛いのに男前」
「すみませーん」
「お?またお客さんだ。しまった、休憩中の札を出すの忘れてたぜ。へーい」
ハニービーモンが客の対応に向かう。
「なあ、ヒカリちゃん。今の声…」
「うん、もしかしなくても」
「ミミお姉さま!?」
「おーテンガロンハットの嬢さんか。随分変わったな。主に髪色が…進化したか?」
「…ハニービーモーーーン!!」
「ぐふう!?」
いきなりミミに抱きつかれて床に叩き付けられるハニービーモン。
因みに首に腕を回してるから苦しそうだ。
「元気だった?あれからどうしてるかなって心配してたんだから」
「お、おおう…す、すまねえ。分かったから早く放せ。息が出来ねえから…」
「あ、ごめーん」
息を整えるハニービーモン。
苦笑しながらチャックモンが出した氷水を一気飲みして落ち着いた。
「それにしてもタイミング悪かったな嬢さん。ただいま休憩中なんだけどよ」
「えー?ここに来る途中で美味しいパンケーキを作ってるって聞いて飛んできたのにー」
「うーむ、まあ…久しぶりだし特別に焼いてやる。兄貴達もいるしな」
「わあーい、ハニービーモン。優しーい!!ところで兄貴ってもしかして…」
「僕達もいますよミミさん」
「みんな!!」
再会を喜ぶ日本の選ばれし子供達。
「お久しぶりです。ミミさんはどうしてこちらに?」
「アメリカとデジタルワールドを繋ぐゲートが開いてね、光子郎に寝てる所を叩き起こされちゃったのよ。でも、せっかくだからマイケルと遊びに来ちゃった」
賢の問いにミミが答える。
しかし光子郎を呼び捨てしているとは、何らかの関係の変化があったのだろうか?
一緒に来ていたパルモンが隣に並ぶデジモンを紹介する。
「彼は私の友達で、ベタモンっていうのよ」
「ベタモンです、よろしく」
ベタモンは、そう言ってぺこりと頭を下げたのだった。
因みにパルモンは現在テントモンにエリアの守護を代役してもらっている。
「ほう、礼儀正しい。どっかの礼儀知らずの馬鹿ネズミに爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだ」
「本当にね、恥知らずの青蛙に爪の垢を煎じて飲ませてやりたいくらいだわ」
「「………ぐぎぎぎ…」」
互いに睨み合うブイモンとテイルモン。
「さて、馬鹿コンビは放っといて、マイケルも選ばれし子供何ですか?」
「うん、2001年のね。私達の冒険から2年後に選ばれたみたい。」
「へえ、結構最近なんですね。」
「それでマイケルもディアボロモンとの戦いを見ていたらしいのよ。マイケル、本宮大輔君と一乗寺賢君よ。ブイモンがマグナモンX、ワームモンがバンチョースティングモンに進化するの」
「僕、マイケルと言います。」
「ああ、英語で結構です。俺は光が丘に暮らす前までアメリカで暮らしてたから」
「僕も英会話は得意ですから大丈夫です」
※英会話は[]←これになります。
[ありがとう、僕は1999年のニューヨークでデジモンを見たんだ。ゴリモンという成熟期のデジモンだった]
[1999年、ヴァンデモンが現実世界に侵攻してきた時だな…]
[今思えば、あれが選ばれし子供になるきっかけになった気がするんだ]
[でしょうね、僕達も光が丘に現れたグレイモンとパロットモンを目撃したことが選ばれるきっかけになりましたから]
[京はディアボロモンとか、伊織はチビの頃からブイモン達と触れ合っていたしな]
[あれ?京ちゃんにはブイモン達と早く会わなかったの?]
[あいつに本格的に会わせるようになったのはディアボロモンの件があってからなんです。あいつ口が軽いから、下手にブイモン見せたら言い触らしそうで…]
[なる程なる程]
「え、えっと…」
スラスラペラペラと繰り広げられる英会話にヒカリ達がスランプを起こしかけている。
「おーい、パンケーキと珈琲出来たぞ。さっさと食いやがれー」
「わーい♪」
[美味しい!!]
早速出されたパンケーキを口にするミミとマイケルはさっくりふんわりしたパンケーキに破顔し、マイケルも英語で言ってしまう。
因みに材料にマヨネーズを使っていると言ったら。
「マヨネーズ味のパンケーキも美味しそう!!」
【適量!!マヨネーズは適量です!!】
マヨネーズ味のパンケーキなどというとんでもないことを言い放ったミミを大輔達は必死に止めた。
「おい!!」
「ん?何だデジタマモンか?何の用だ?」
「何の用だ?じゃないだろ!!何時までここで喫茶店をやるつもりだ!?さっさと出て行け!!」
「ちょっとあんた何よいきなり入ってきてその言い草は!?」
いきなり店に入ってきてその言い草に京が怒る。
「何だ?部外者は引っ込んでいてもらいたいな!!」
「まあまあ、落ち着けよ。訳を話せ訳を。何そんなに怒ってるんだよ?」
取り敢えずデジタマモンに理由の説明を要求する大輔。
「わけ!?ああ、話してやるよ。僕がこんなに荒れている理由を!!」
何でもハニービーモンの店がいきなり自分のレストランの隣に現れたかと思えばハニービーモンがパンケーキを始めとした焼き菓子を焼き始めたことで、甘美な香りに誘われたデジモン達や今までお得意様だったデジモン達までそちらに行ってしまい、ただいまデジタマモンのレストランはかなりやばい状況とのこと。
「そいつは大変だったな」
大輔が同情したように言うとハニービーモンが口を開いた。
「そんなん仕方ねえじゃねえかよ」
「何ぃ!?」
「大体お前のレストランのメニューが全然変わらないのも問題じゃねえのか?同じ物を食い続ければ普通に飽きるし、新しい味が出ればそれに惹かれるのは当然じゃねえか」
「確かにねえ、私もコンビニのお手伝いしてるから分かるけど、うちも新作スイーツとか出れば仕入れるし」
ハニービーモンの店が現れたばかりに大赤字になってしまったデジタマモンには同じ店を経営してる側からすれば変化が全くないデジタマモン側にも問題はある。
「うちは何時もこのメニューで稼いできたんだ。こだわりのメニューなんだよ!!」
ブイモンはこっそり店から抜け出し、外に出た。
「それで大赤字じゃねえか」
「うるさい!!」
飄々としているハニービーモンと怒りで殻が真っ赤になっているデジタマモン。
「あれ?ブイモンは?」
「え?いない?何時の間に?」
大輔とヒカリがブイモンがいないことに気付いて辺りを見渡すが見当たらない。
「ただいまー」
「あんた何処行ってたのよ?」
「うん、ちょっとな。まあまあ、デジタマモン。少し熱くなり過ぎだ。これを飲んで落ち着け」
デジタマモンに気付かれぬように粉末をコップに入れ、ジュースを入れてデジタマモンに差し出した。
デジタマモンは鼻を鳴らしてそれを一気飲み。
ブイモンは顔を背けると暗黒デジモン顔負けの極悪の笑みを浮かべた。
計 画 通 り…!!
次の瞬間、デジタマモンが倒れた。
「は?」
「ククク…ワハハハハ!!俺がジュースに仕込んだ物が効いたようだなあ。」
極悪な笑みを浮かべるブイモンにタケルは冷や汗をかいた。
「ま、まさか…デジタマモンを黙らせるためにさっきのジュースに毒を!?」
「まあ、毒っちゃあ、毒だけど」
【ええ!?】
「まあ、明日のお楽しみだな。明日になればデジタマモンは綺麗に生まれ変わっている」
「は、はあ?」
「金やメニューに異常に拘らず、柔軟な思考を持った綺麗なデジタマモンにな」
「………そんな簡単に変わるわけないじゃない」
「だから明日のお楽しみだって…それじゃあ解散」
一同は現実世界に帰り、大輔達は自宅に帰ったが、京はパソコン室のパソコンを賢と共にチェックしてから帰ることに。
「本当に変わるのかしら?」
「京さん?」
「だって、あんな頑固者な守銭奴みたいな奴よ?私はあんなのが簡単に変わるとは思えないんだけど?おまけにどう見てもへんてこな格好してるし、何を考えてんのか表情が見えないし…」
「デジタマモンに限らず表情が分からないデジモンはいますが…」
デジタマモンに限らず表情が良く分からないデジモンは沢山いる。
「でもさ」
「京さん、確かに京さんの言いたいことも分からなくはありませんが、人やデジモンもちょっとしたきっかけで変わるものですよ。ブイモンの言葉を信じてまた明日、あのエリアに行ってみましょう」
「…うん」
「あ、ついでにうちの兄は駄目です。あれはもう手遅れ、救いようがありません」
「え゙え゙!?それって賢君の個人的な感情も入ってない!?まあ、私もあんな痛い人が変わるとは思えないけど!!」
「はあ、正直。情けなくて情けなくて」
「大丈夫よ賢君!!賢君は普通よ!!あんなのにはならない。もしなるとしたら凄く重たい理由でなるに決まってるわ!!」
「はあ…ありがとうございます」
そして翌日…ブイモンに促されてデジタルワールドに向かったのだが…。
「本当だ。綺麗なデジタマモンになってやがる」
「新メニューが沢山増えて、人当たりが良くなってお客さん増えたんだって」
「しかしあの見た目がアレだね。腐りきった卵に茸が生えているようにしか見えないんだけど」
大輔、ヒカリ、タケルが綺麗なデジタマモンを見つめながら呟く。
「ブイモン、デジタマモンの頭に生えてる茸は何よ?」
「あれはグリードドレインマッシュルーム。食った奴の欲望を吸収して成長する毒茸だ。あれを食った奴は欲望を吸われて綺麗な存在に生まれ変わる。主に凶悪デジモンの更生に使われる薬になる。俺がいた時代じゃあ結構あったけど今じゃあかなり少ないんだな」
「それ本当に毒茸?まあ、頭に茸が生えてるんだから毒茸なんだろうけど」
テイルモンの問いに答えるブイモン。
その内容にパタモンはデジタマモンを見つめながら言う。
「本当に綺麗になっちゃった…人ってちょっとしたきっかけで変わるのね。絶対に変わるわけないって思っていた自分が情けない」
「京さん、それは仕方ないことです。人はどうしても一度根付いたイメージを拭うことが難しい生き物です。こうして今のデジタマモンを見て反省出来る京さんを僕は凄いと思いますよ」
「賢君…うん、私もっと素直になるわ」
「もう充分素直で素敵な人だと思いますけど?」
「え、ええ!?も、もう!!年上をからかっちゃ駄目よ!!」
「ワア、京ト賢チャンノ周リニ綺麗ナオ花畑が見エルヨー」
「うんうん、青春は謳歌しないとね」
今日もゲートが開いてまたデジタルワールドに来ていたミミが頷いた。
「お姉さーん、デートしなーい?」
ミミが隣を見遣るとスカモンがナンパしてきた。
「あんたは嫌ー!!」
当然の叫びと共に、スカモンは湖の遥か彼方に殴り飛ばされていたのだった。
全員が唖然となる中、京の足元の地面が眩い光を放ち、そこから光を纏ったデジメンタルが現れた。
「それは純真の紋章。私の紋章だわ…」
「ミミお姉様の…?」
「きっと京さんの素直な心にデジメンタルが応えてくれたんですよ」
「賢君…よーし、私もっと素直になって魅力的な女になるわ。覚悟してね賢君!!」
「え?あ、はい…お手柔らかに」
「いやー兄貴にも遂に春が。これは特別スペシャルなケーキを焼かねえと」
和やかな空気が子供達を包み込むが…。
「…良い話で締め括ろうとしてるけど、ブイモンがしたことって人格操作か洗脳の類だよね…」
【あ゙…】
タケルの呟きに大輔達はたらりと冷や汗を1つ流した。
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