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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第65話:スカルグレイモン

現在、大輔達は茹だるような暑さに参っていた。

今いる場所は炎が揺らめく火山地帯で崖下にはマグマが泡立ちながら熱を発している。

「暑いね…」

「ヒカリちゃん、飲むか?」

持参してきたスポーツ飲料をヒカリに差し出す大輔。

水筒に入れてきた物だから中身はキンキンに冷えたままだ。

いくらか口を付けてしまったが、それでも良ければ分けるのも吝かではない。

「…………………………………………………ごめんなさい大輔君。…いい」

「そう」

水筒と大輔をしばらく見比べていたが、長い葛藤の末にそう言ってしまった。

大輔はあっさりと水筒を鞄にしまった。

「今、滅茶苦茶飲むか飲まないかで葛藤してたわヒカリちゃん」

「流石に今のヒカリちゃんにそんな勇気はないか」

「聞こえてるんだけど2人共!?」

ヒソヒソと会話する京と賢。

しかし人間はそう言うのに敏感でしっかりと聞いてしまった。

「あのー、皆さん。早くダークタワーを壊しましょう」

「このままだと熱中症になってしまうよ…次からは僕も水筒を持参しよう…」

やはり準備は必要だなと痛感したタケルであった。

あまりの熱気に歪んで見える空気の向こうにぽつりと建つダークタワーに向かう大輔達。

しかしそこでマグマを割って5つの炎の塊が飛び出して来た。

正体は火炎型デジモンのメラモンである。

「何でメラモンが出て来るんだ暑苦しい」

「全くだわ!!マグマのせいで滅茶苦茶暑いのに何であんたらが出てくんのよ!!失せなさい!!」

あまりの暑さに何時もの喧嘩をする元気もないようでブイモンはウンザリしたように、テイルモンは半ギレの状態でメラモンを睨んでいた。

このマグマが煮えたぎっている場所でメラモンの存在は大変暑苦しい。

そして大輔の顔色が良いのはそう言う事情もあったようだ。

「まあ、そう言うな。迎撃するぜ!!」

「大輔君、こんな暑いのに元気だね」

「今回はブイモンとテイルモンが喧嘩してませんからそれのおかげじゃありませんか?」

「なる程」

こんな暑い場所なのに普通に元気な大輔にタケルは羨ましそうに見つめるが伊織の説明に納得した。

「よし、デジメンタルアップ!!」

「ブイモンアーマー進化、ライドラモン!!」

メラモンと戦うならフレイドラモンよりライドラモンの方が良いと判断した大輔はライドラモンにアーマー進化させた。

「ブルーサンダー!!」

ライドラモンの電撃弾がメラモンに命中し、ダメージを与える…思った通りだ。

「テンペストウィング!!」

次にアーマー進化したホルスモンの竜巻がメラモンを襲うが、突風に煽られて逆にメラモンの体の炎の勢いが強くなってしまっている。

「京…」

「あっちゃあ…ごめん」

「ごめんじゃねえよドアホ」

結果的に敵を強くしてしまった京に大輔はジト目で見遣る。

「ビッグクラック!!」

次に前に出たディグモンがドリルで地割れを起こし、メラモン達を崖下へ転落させる。

「やった!!」

しかし、元々潜んでいたマグマの中に叩き落とされても痛くも痒くも無いのか、すぐに突き出た岩を蹴って地上へ舞い戻ってくる。

「………」

「あの、大輔さん。すみません」

無言のまま見つめられて居たたまれない表情で謝罪する伊織。

何か言われるよりも無言のままでいられる方がキツい時もあると聞いたことがあるが、正にこれか。

「…デジメンタルアップ!!」

「ワームモンアーマー進化、プッチーモン!!ハートナービーム!!」

ワームモンをプッチーモンにアーマー進化させ、指先から光線を放つ。

攻撃力は低いが戦意喪失効果があるためメラモンは大人しくなる。

その隙にプッチーモンはメラモンの輪を破壊する。

「タケル、僕達も負けられないよ!!」

「勿論、デジメンタルアップ!!」

「パタモンアーマー進化、ペガスモン!!」

「私達も続くわよ!!」

「うん、デジメンタルアップ!!」

「テイルモンアーマー進化、ネフェルティモン!!」

「ハートナービーム!!」

「ウジャトゲイズ!!」

プッチーモンとホルスモンがメラモン達の動きを止め、ライドラモン、ペガスモン、ネフェルティモンが飛びかかる。

少し離れた東の方向から向かって来ている存在が絶望を振りまきながら、確実にこちらへ向かってやって来ていることに気付かずに。

例の輪を首にはめた太一のグレイモンをワイヤーで吊り下げ、治を乗せたエアドラモン達。

「アンドロモンは制御出来なかったが、成熟期から進化させれば完全体も必ず操れる…」

治は懐から水晶玉のような物を取り出す。

台座の色は白で、水晶の色は水色。

丸い水晶はシンプル故の美しさを放っていたが、台座のデザインが台無しにしていた。

何せ台座には触手状の線が寄り集まり、水晶の下にへばりつくような見た目だったのだ。

「暗黒のデジメンタル…奴らの使っていた物を参考にするのは業腹物だったが、これならあんな小道具に頼らずとも進化させられる。」

デジタルワールドに正規の方法で来たわけではない治には当然、パートナーデジモンはいない。

そのため、基本的に自分は無防備な状態なので大輔達はそれを知っているから丸腰の状態で近付けるのだ。

前回の戦いではそれを利用されて痛めつけられてしまったが、今回はそうはいかない。

自分にパートナーデジモンがいないなら奪えばいい。

治が目を付けたのは2年前のディアボロモンとの戦いで活躍したアグモンである。

今まで自分の邪魔をしたことに対する報復も含めて選んだデジモンだ。

「…さあ、グレイモン!暗黒の力を受け、暗黒進化し、メタルグレイモンとなってここにしもべとなり、僕に仕えよ!!」

暗黒のデジメンタルがどす黒い輝きを放ってグレイモンに吸収されていく。

その光が消えた後に現れたのは、メタルグレイモンの姿などではなく…かつて太一が勇気を履き違えて進化させてしまったスカルグレイモン。

グレイモンの面影は全く無く、闘争本能のみで動く魔獣。

スカルグレイモンの重みに耐えきれず、エアドラモンが苦しげな悲鳴を上げた。

スカルグレイモンは自分を吊り下げていたワイヤーを引き千切り、大輔達の目の前に着地した。

治を乗せた者だけを残し、エアドラモン達が後を追うように落下する。

「あれは!?」

「スカルグレイモンだ!!」

いきなり現れたスカルグレイモンに大輔は目を見開き、恐怖の存在として脳裏に焼き付いているタケルが思わず叫んだ。

「大輔、スカルグレイモンは完全体だ。サジタリモンで行くぞ!!」

「よし、アーマーチェンジ!!」

「アーマーチェンジ、サジタリモン!!」

ライドラモンからサジタリモンにチェンジしてスカルグレイモンに向かっていく。

「メテオギャロップ!!」

跳躍し、スカルグレイモンに蹴りを喰らわせるとスカルグレイモンは幾らか仰け反ったが、すぐに巨大な腕を振るう。

「うおっ!?」

咄嗟に防御するサジタリモンだが、防御した腕が痺れている。

「くっ、こいつは今回の戦いで今までにない強敵だぜ」

あまりの攻撃力にサジタリモンが顔を顰めながら拳を握り締める。

「京さん、伊織君。君達は逃げて!!」

「「え!?」」

「スカルグレイモンは僕達が抑えます。京さん達は安全な場所に!!」

タケルと賢の言葉に目を見開く京と伊織。

ヒカリもタケルと賢に同意するように言う。

「私達も後で必ず合流しますから、早く!!」

しかしヒカリが言い終わるより前に治は行動に移し、ダークティラノモンを呼んだ。

そしてスカルグレイモンに一斉攻撃する。

しかしダークティラノモンの一斉攻撃もスカルグレイモンには傷一つ付けられず、逆に叩き潰されてしまう。

「これがスカルグレイモン…何て強さだ…!!」

「こんなの滅茶苦茶よ!!」

完全体として規格外の強さに大輔は目を見開き、京は泣きそうな声を上げた。

「ジャッジメント…」

「オブリビオンバード」

サジタリモンが矢を放つよりも先にスカルグレイモンが背中の有機体ミサイルを放った。

咄嗟に離れようとするが、破壊力がグレードアップし、究極体の必殺技と同等レベルの有機体ミサイルの爆発と衝撃波は全てを吹き飛ばした。

サジタリモンも加勢しようとしたネフェルティモン達も、そしてダークタワーさえも。

オブリビオンバードの発射によってエネルギーが尽きたのか退化の光に包まれて成長期に。

生き残りのエアドラモンが降下して、そのデジモンの尻尾を咥え、治がいる上空へ戻って行く。

「あ、あいつ…太一のアグモンだ…」

オブリビオンバードの膨大な熱量で全身に火傷を負ったが、サジタリモンに進化したことが幸いしたのか意識は保っていたブイモン。

「何だって、太一さんのアグモン!?」

「待って!!アグモンを連れて行かないで!!」

ヒカリの必死の叫びも虚しく、治達は来た方向へ帰って行ってしまった。

「あの野郎…ふざけやがって…ん?」

大輔は足元に転がる台座が壊れて水晶玉のみになった暗黒のデジメンタルを拾い上げる。

「何だこれは…?それにしても、太一さんに何て言えば…」

最悪な事態に流石の大輔も頭を抱えるしかなかった。 
 

 
後書き
暗黒のデジメンタルの見た目はカードの奴です。治はデジヴァイスがないからアイテムによる強制進化。  
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