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人徳?いいえモフ徳です。

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三十匹目

 
前書き
これで初期案のヒロインは全員出たかな… 

 
「うきゅぁぁぁぁぁん…」

「気持ちいいかシラヌイ君?」

「きゅぁぁん」

王宮の中庭のベンチで、シラヌイは国王アルフレッドの膝の上で撫でられていた。

許可を貰ったシラヌイがルルの監視下で魔法の練習をしていた所、息子の眼を掻い潜り仕事を抜け出したアルフレッドが見つけたという次第だ。

「うむ…タマモに勝るとも劣らぬよい毛並みだ」

「きゅぁぁ…」

ところで、とアルフレッドがベンチの後ろに控えるルルに声をかける。

「座ったらどうかね?」

「いえ、私のような侍女が国王様と席を同じにするなど…」

「とは言うが君だって貴族の出だろう」

王宮に使えるメイドの大半は貴族子女だ。

早い話が花嫁修業だ。

「いえ、私など辺境伯の四女ですし…」

「気にする事は無いとおもうんだがなぁ…。
面倒だなぁ…。いっそフライハイトも共和制にでもするか…。
そうすれば儂もすぐに引た」

ごすっ!

「ぁっー…!?」

「アホな事言うんじゃありませんよアナタ」

三人が振り向くと、そこには三人の美女がいた。

「ツェ…ツェツィーリア………」

そのうち、杖をアルフレッドの頭に振り下ろした魔女風のいでだちの美熟女こそ女王ツェツィーリアだ。

その隣に立つのは褐色の肌と銀髪を揺らす美少女、トレーネ・S・フライハイト。

第二皇子アーネストの妻で、隣国スヴァルティアの姫だ。

二人につれられているやや薄い褐色と銀髪に金髪のメッシュの幼女の名前はクーコ。

アーネストとトレーネの娘だ。

「おはようございますおじーさま」

「お、おお……君のおばあちゃんにおじいちゃんをどつくなと言っておくれ…」

「私とて貴方が真面目に共和制について考えているなら止めません。
でもアナタは仕事が面倒なだけでしょう」

「うぐ…」

「このダメ国王が」

「儂そろそろ泣くぞ!?」

ツェツィーリアがシラヌイを取り上げる。

「さっさと仕事に戻りなさい」

「いや、でもな…」

「も ど り な さ い」

「ぁい…」

アルフレッドは妻に気圧され、とぼとぼと城内へ戻っていく。

「こんにちは、シラヌイ君」

ツェツィーリアがシラヌイを目の前に持ってきてあいさつをした。

「うきゅ」

「私はツェツィーリア・フライハイト。あの愚王の妻よ」

「きゅ」

「いいのよ。おだてると直ぐに調子にのるんだもの」

そこで、別の腕がシラヌイに伸びる。

「きゅぁ……?」

後ろから伸びたその腕が、ツェツィーリアからシラヌイを取り上げる。

「はわぁ~もふもふですねぇ~」

「きゅあー?」

「トレーネ。ちゃんとシラヌイ君の眼を見てあいさつなさい」

「わかりました~お義母様~」

クルリとシラヌイが回される。

銀髪で、褐色で、耳が長くて、スタイル抜群だ。

「うきゅー?」

「はい~。私はダークエルフですよ~」

「うきゅぁー?」

「はい~。スヴァルティアの出です~。
私のお父様は~、貴方のお父様の従兄弟にあたる人なのですよ~」

「きゅぅん?」

「私のお爺様が~、貴方のお爺様と仲違いしてできたのがスヴァルティアなのですよ~」

「うきゅ? きゅぁあー?」

「きいてないのですか~?」

「きゅ」

「どうせ学院で習いますから~、その時にお勉強してくださいね~」

教えてくれねぇのかよ…、とシラヌイは思った。

そこでキュッとシラヌイのしっぽが引っ張られた。

「うきゃぅっ!?」

「あ、だめですよ~くーちゃん。狐さんに乱暴したらダメって法律にあるんですよ~」

「お母様。私も狐さんを触りたい」

「ちゃんと優しくするんですよ~?」

クーコがシラヌイを抱く。

胴に手を回している様子は、お気に入りの人形を抱いているようだった。

よろよろとしながら、かろうじてベンチに腰掛けたクーコ。

「クーよ」

「なんですかおばあさま?」

「私達は城内に戻る。しばらくシラヌイ君と遊んでいなさい」

「わかりました」

ツェツィーリアとトレーネがルルを連れて城内へ戻ったのを確認した後、クーコは大きなため息を吐いた。

「あ━━━━━っ! もうっ! めんどくさい━!」

「うきゅうっ!?」

「あ、ごめん狐さん。でもちょっと私のぐちに付き合いなさいな」

「きゅー?」

「ほんっと…、何で私は王族なんて面倒な家にうまれてしまったのかしら」

「きゅぅん?」

「マナーとか勉強とか、本当に面倒。庶民で私くらいの年なら周りの子供と遊んでるっていうのに」

クーコの表情は子供にしては大人びていて、それでいて疲れた様子だった。

シラヌイは水魔法で文字を描いた。

〔お友達が欲しいの?〕

「貴方話せるの?」

〔うん。今はこの姿だけど、僕は君と同じ人形種族だよ〕

「へぇー…。まるで建国の神獣タマモみたいね」

「きゅ?」

コテンと首を傾げるシラヌイ。

「まぁ、それは置いておくとして…。
友達が欲しいのかって聞いたわよね?」

「うきゅっ!」

「はい、って答えたら?」

〔僕が友達になってあげる!〕

「いいえ、って言ったら?」

〔僕が悲しくなる〕

「ふふ…貴方面白いのね…」

クーコは、その顔をほころばせた。

「私の友達に、なってくれる?」

ピョイっとクーコの膝から降りるシラヌイ。

刹那、シラヌイが獣化を解く。

「うん! 今日からよろしく!僕はシラヌイ!
君の名前をおしえて?」
 
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