魔法科高校の劣等生の魔法でISキャラ+etcをおちょくる話
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第百五十五話
前書き
阿良々木暦改造計画!
阿良々木家……の暦さんの部屋。
「なぁ、一夏君」
入ってきた火燐さんが怪訝な顔をする。
「何? 火燐さん?」
「アタシは君に『気功を教えて欲しい』って言ったよな?」
「そうだね」
「なんで兄ちゃんと弾君が居るんだ?」
ベッドの上で暦さんと弾がポーカーをしている。
「ちょうどいいからね。二人にも教えとこうかと思ったんだ」
「いいのか? アタシはともかく二人は……」
ああ、武術を知らないって言いたいのか。
「大丈夫。気功の本質は健康増進だから。
いや、もっといえば神話の時代への原点回帰かな?」
「どういう意味だ?」
弾と暦さんの札を伏せさせ、火燐さんを暦さんの勉強机の椅子に座らせる。
「お、ようやくか?」
「三人ともよく聞いて?」
三人を見回し、続ける。
「気功は筋力の急激な増加をもたらす。
でもそれは人間が本来持っている力だ。
だから少しやり方を教えれば六歳児でも使えるようになる」
「一夏君? まさか君の妹たちにも教えたのか?」
暦さんが驚いた顔をしている。
「やー……なんつーか…箒が勝手に教えててさ…。
中途半端が一番ダメだと思って俺もおしえたんだよね…」
「「「…………」」」
「まぁ、それは置いとくとして…インド神話の『ユガ』って聞いた事ある?」
三人が首を振る。
まぁ、普通知らんわな。
「インド神話で繁栄と破滅のサイクルの区切りを表す言葉なんだ。
サティヤ・ユガ。トレーター・ユガ。
ドヴァーパラ・ユガ。カリ・ユガ。
この四つに別れていて、最も栄えていたサティヤ・ユガの時代には人間の身長は9.5メートル、寿命は400年あったらしい」
「9.5!? 学校並に大きいじゃねーか!?」
「うーん…まぁ、流石に多少盛ってるだろうけどさ、神話って全部元ネタがあるはずなんだ」
そこで俺はこう考えた。
「遥か昔、神々の恩寵と自然の力が大地に満ちていた神話の時代。
人々は誰に教わる訳でもなく当たり前のように気功を使っていた…。
そういう仮説が成り立つんだ」
「へぇ…面白い仮説だな…。僕も少し興味が出てきたよ」
あんた理系だろうが。
「つー訳で、今からやるけどいい?」
「アタシはいつでもいいぜ」
さて、じゃぁ先ずは火燐さんからかな。
火燐さんの前に立って両手を差し出す。
「手、握って」
「応」
火燐さんの手を握ると微かなサイオンの揺らぎを感じた。
サイオンで体に命令を下せる人間…一握りの才能あるアスリートの証拠だ。
「今から俺の気功を火燐さんの中に流して加速させる。
感覚は直ぐに掴めると思うから、それを維持して。その内自分の気が練り上がるから」
火燐さんの中に気を流し込み、行き渡らせる。
気功は水と同じで低い場所へ流れる。
火燐さんの全身を満たし、その上で気を注ぎ循環させる。
「お? お? おぉ~? なんかすげぇ力がわいてくるぜ?」
「もうちょっと待って、それ俺の気だから手を放したら止まるよ。
火燐さんも気を循環させるイメージを強く持って」
少しずつ気功から意識を離していく。
「離すよ」
火燐さんから手を放して、様子を見る。
「回ってる感じ、判るよね?」
「おう、バッチリだぜ」
火燐さんが男らしくニカッと笑った。
「あとはそれを維持するだけだよ」
「ふーん…それだけなのか?」
「うん。確かに気功は即物的な力を与えるけど、その上の段階に行くには気功を巡らせ続けて少しずつ少しずつ練り上がる量を増やしていくしかないよ」
「筋トレみてーな方法は無いって事か?」
「強いて言うなら瞑想かな?」
すると火燐さんは椅子から飛び降り(比喩ではなく本当に座った状態で椅子から飛び上がって着地した)、部屋から出ていった。
「よっしゃ瞑想しまくるぜー!」
うん、その落ち着きのなさじゃ無理だと思う。
「さて、二人ともちゃっちゃとやろうか」
「僕は別にやらなくてもいいぜ」
「俺もだ。使いこなせる気がしねぇ」
ふぅ……火燐さんも居なくなった事だし……『そういう話』をしようか…。
「気功って言うのは要するに肉体由来のエネルギーだ」
「それがどうかしたのか?」
「焦るな弾。つまりは気イコール精力だ」
「!?」
「弾はわかったようだな…」
「ま、まさか…!?」
そう、そのまさかだ…。
「暦さん、より男らしくなりたいとは思いませんか?」
「そりゃ、まぁ」
「うんうん、その気持ちはよーくわかる。
なんせ俺も『ちっこい』だの『可愛い』だの言われてそだちましたから…」
と、いうわけで。
「せめて下半身だけでも男らしくあろうじゃありませんか!」
「いや…何を言ってるかさっぱりなんだが」
「いえ、ナニの話ですよ?」
「…………あ、そういう事か」
「はいそういう事です」
暦さんも俺が何を言いたいのかわかったようだ。
「じゃ、先ずは暦さんからやりましょうか」
そも今回は火燐さんに気功を教えるという建前で阿良々木家に来たが、本当の目的は暦さんに気功を仕込む事だ。
弾? ついでダヨ。
「さぁ…その手を前に出して…。男らしいボディをつかみ取ろうじゃありませんか…」
「さっきからテンションおかしくねお前?」
む、うるさいぞ弾。
「あ、一応言っとくけどナニに無理やり気功込めたらナニがパァン! てなるから」
「「こわっ!?」」
その後俺は二人に気功を仕込んだ。
そして暦さんの部屋に『置き土産』を置いて、育さんの部屋で駄弁っていた箒を拾って帰った。
同日深夜
「…………月?」
暦は困惑していた。
気付けば月面に立っていたのだから。
遥か遠く、地平線の向こうには青く眠る水の星。
見上げた先には満天の夜空。
そして輝く太陽。
「夢か」
息ができている。
寒くない。
声が伝わる。
故に暦はこの状況を夢と断じた。
『はじめまして。暦』
唐突に名を呼ばれ、暦は驚きながら振り向いた。
「は、はじめまして…?」
暦の後ろに立っていたのは和服を着た誰かだった。
青い甚平のような服を着て、その顔には招き猫のお面をつけている。
背は高い方だろうか。
燃えるような紅い後ろ髪がその膝の辺りまで垂らされている。
『硬くならなくていいですよ。私は今から私のエゴに貴方を付き合わせてしまいますからね』
女のような声だった。
だが男の声という気がしなくもない声。
2つが混じっているわけではなく、どちらとも取れる不思議な声。
面をつけているのにくぐもらない声。
その声にデジャヴを感じながらも、暦はその正体を思い出せない。
『今から私が貴方を鍛えます』
「鍛える?僕を?どうして?何のために?」
『私のエゴのためです』
「そのエゴっていうのを教える気は無いんですね?」
『ええ、ありません』
「………………」
『………………』
二人の視線が交差する。
沈黙を破ったのは面を着けた誰かだった。
『では始めましょうか』
面の誰かは十字架に磔られたように両手を広げた。
暦の方へ手の甲を向けるとその両手に一本ずつ木刀が生まれた。
『ここは夢の世界。貴方が望むならば、如何なる武器も如何なる力も如何なる存在も産み出せる』
面の誰かが左手に持った木刀を暦へ投げ渡した。
「おっと…」
『ですが先ずはその木刀で動きに慣れなさい』
そして右に持った木刀を構えた。
『打ち込んで来なさい』
暦は受け取った木刀をまじまじと見つめた。
「………」
『安心なさい。ここは夢の世界。
どれ程傷つこうと、どれ程死のうと、貴方は死なない。
無論、私も』
その声に、暦は木刀を握りしめた。
面の誰かを真似て柄を両手で握る。
「行きますっ!」
『どうぞ』
暦が振り上げ、すぐさま振り下ろした木刀はあっけなく弾かれた。
『大降りな攻撃はNGですよ』
弾かれた木刀につられて仰け反った暦の腹に、面の誰かの肘鉄が入る。
「がはっ!?」
『ね?こうなるでしょう?』
肘鉄をくらい、たたらを踏みながら後退する暦に対して、面の誰かは何もしなかった。
『ここは夢の世界。貴方が痛みを無視しようと思えばいくらでもできる。できてしまう』
暦が態勢を立て直す。
『さぁ、もう一度』
今度は木刀を握る手を腰あたりに当てて、面の誰かに近づく暦。
今度は横薙ぎの一撃を放つ。
面の誰かはノーガード。
その木刀はあっさりと面の誰かに直撃…
━━しまった!?━━
暦の瞳がそう語るのを見ながら、面の誰かは同じく瞳で語りかけた。
━━問題ありません━━
スカっと暦の振るった木刀が面の誰かの腹をすり抜けた。
『ここは夢の世界。貴方の攻撃で私が死ぬ事はない』
だから、と面の誰かは続けた。
『好きなだけ殺しあいましょう?』
「ん…」
ベッドの上で、暦は目を覚ました。
━━何だろうか。長い夢を見ていたような━━
「まぁ…いいか…」
通学路で、彼はある後ろ姿を見かけた。
「一夏君」
「ああ、暦さんか」
呼び止められ、振り向く一夏。
ふわりと広がる長髪。
無駄のない動き。
風鈴の音のような澄んだ声。
その全てに暦は既視感を覚える。
「……,?」
「どうしました暦さん?」
首を傾げる暦に、一夏は何かと聞いた。
「いや……なんでも……ない…よ?」
「何故に疑問形?」
「いや、君をみていると何かを思い出しそうな…」
「…?」
こてん、と首を傾げる姿に暦はお前は本当に男かと言いたくなった。
「いや、思い違いだと思う。おかしな事言ってわるかった」
「別にいいですけどね。俺ぁ暦さんと弾くらいしか同性の友達居ませんし。
まぁ、暦さんも同性の友人って俺らだけでしょ?」
「まぁ、そうだけど」
「そして同年代の男友達はゼロっと…」
「待て。僕にだって友達くらいいるぞ!」
「え? 男友達が?」
「………………」
「黙らないでくださいよ俺がいたたまれなくなるでしょ」
「何気に酷いな君…」
「これぞ『俺くおりちー』」
フンスッ! とドヤる一夏。
「あ、そうだ暦さん」
「ん?」
「俺らの文化祭見に来ません?」
「文化祭? まぁ、いいけど」
「ふふ…」
「?」
「いえ、何でもありませんよ。なんでも…ね」
そう言って、一夏は意味深な笑みを浮かべるのだった。
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