| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

レーヴァティン

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

第八十話 繁栄の中でその六

「殺すつもりはないからな」
「殺さなくてもってことだな」
「巨人達も多く倒してきたしだ」
「これまでか」
「魔物を倒してきた」
「俺達なんかはか」
「ならず者達とも戦ってきた、わかるな」
「ああ、あんたは強い」
 頭にもわかった、英雄のこのことが。それで彼に言うのだった。
「俺達が束になっても敵わないな」
「だからか」
「やりはしないさ」
 戦うことはというのだ。
「絶対にな」
「ではか」
「ああ、ただな」
「ここに来たからか」
「遊んでいくかい?」
 頭は英雄にこうも言ってきた。
「賭場だからな」
「博打をしてみろっていうのか」
「そうだ、どうだ」
「俺は博打はしない」
 英雄は頭に即座に返した。
「そうした趣味はない」
「そうなのかよ」
「しかしだ、食うものは食う」
 こう言いはした。
「賭場にあるものもな」
「ああ、だったらな」
「鉄火巻きだな」
「それはあるぜ」
 頭はその目を鋭くさせて彼に言った。
「金を払えばな」
「食えるか」
「あと酒もあるしな」
 賭場、博打をする場の常としてこれもあるのだ。博打に酒は最早同時にするものというのはどの世界でも同じか。
「菓子もあるぜ」
「それもあるのか」
「飲めないお客さんもいるからな」
 だからだというのだ。
「それでだよ」
「菓子もあるか」
「ああ、どっちがいいんだ?」
「さっき蕎麦を食ってきた」
 英雄は頭にこのことから答えた。
「鉄火巻きは今はな」
「蕎麦で腹が膨れてか」
「あまり食いたくない、だから酒もだ」
 こちらもというのだ。
「今はいい、しかしな」
「あれだな、甘いものはだな」
「別腹だ」
 頭にこの言葉を出した。
「それでだ」
「菓子をか」
「貰おう」
「よし、じゃあ饅頭なり羊羹なり出すな」
「そしてだな」
「菓子を食いながら賭場を見てくれ」
 その遊ぶ様子をというのだ。
「丁半なり花札なりな」
「どっちもしているのか」
「ああ、どっちも好きなのを見な」
 丁半でも花札でもというのだ。
「そうして楽しみな」
「ではそうさせてもらう」
「そうしている間にな」
「俺が会いたいと言う」
「その人を呼んでくるな」
「今ここにいるな」
「いるさ、けれど今はちょっとな」
 頭はここでだ、英雄に対してややバツの悪い感じになって述べた。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧