懐かしい秋の時
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第四章
「本場のお好み焼きもね」
「食べるのね」
「しかも今は食欲の秋だから」
目を輝かせてだ、加奈は祖母に話した。
「余計にね」
「食べるのね」
「二枚食べていい?」
「いいわよ」
静は加奈ににこりと笑って答えた。
「お祖母ちゃんも食べるしね」
「二枚?」
「流石に二枚は無理よ」
年齢のせいで食欲も食べる量も落ちていてだ。
「一枚がやっとだけれど」
「それでもなのね」
「勿論お祖母ちゃんも食べるわ」
「じゃあ二人でね」
「優勝した時もお好み焼き食べたわね」
祖母はこのことも思い出した。
「そういえば」
「お祝いに」
「そう、お祖父ちゃんビールこれでもかって飲んでね」
「お好み焼きにはビールだから」
「お好み焼き何枚も食べて凄かったわ」
「そうだったのね」
「これから行くお店でね」
「あのお店も古いのね」
加奈は祖母の話からこのことも知った。
「そうだったのね」
「今はお店改装して奇麗になったけれど」
「あのお店も昔と違ったの」
「店長さんは先代さんでね」
それでというのだ。
「お店も木造で古い感じだったのよ」
「そうだったの」
「広島が復興して暫くして出来たお店だから」
原爆からの復興であることは言うまでもない。
「木造の古いお店でね」
「あんなに奇麗じゃなかったのね」
「はじめて優勝した時はそこに入って」
そうしてとだ、祖母はさらに話した。
「お好み焼きとビールでお祝いしたのよ」
「お祖父ちゃんと二人で」
「あんたのお父さんも一緒だったけれどね」
「お父さんその時子供でしょ」
「それでもね、お祝いしたのよ」
その時はというのだ。
「本当に懐かしいわ」
「じゃあその懐かしさもなのね」
「一緒にね」
「今度はお好み焼き食べるのね」
「ええ、二人でね」
「私もね」
ここで加奈は優しい目になって言った、目はまだ広島市民球場の跡地にある。
「大学卒業して結婚して」
「それで子供が出来たら」
「こうしたことお話するのかしら」
「そうかも知れないわね、秋になったらね」
「カープの優勝のこと、後のお好み焼きのこと」
「どれもね」
「そうなるかもね。秋って思うと」
加奈はこうも言った。
「広島にいると」
「紅葉まんじゅうね」
「それも食べたくなったわ」
こちらもとだ、加奈はくすりと笑って言った、今周りには紅葉はないがそれでも秋ということで思ったのだ。
「そちらもね」
「じゃあそっちは帰ったらね」
「あるの」
「さっきは出しそびれたけれど」
「あるのね、紅葉まんじゅう」
「お家に帰ったら食べましょう」
「それじゃあね、広島に帰ったら」
まさにとだ、加奈は笑顔で話した。
「あれも食べないとね、特に秋はね」
「紅葉だからね」
「それも食べないとね、じゃあ」
「まずはお好み焼きね」
「それ食べよう」
「今からね」
二人でこう話してだった。
加奈は祖母と共に広島市民球場跡地から離れた、そうして今度はお好み焼きを食べてそちらの秋を楽しむのだった。
懐かしい秋の時 完
2018・11・21
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