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永遠の謎

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417部分:第二十六話 このうえもない信頼その十


第二十六話 このうえもない信頼その十

 その口を開いてだ。こう告げた。
「わかりました」
「陛下、それでは」
「その様に取り計らいましょう」
 微笑みだ。こうコジマに告げたのである。
「私は最初からわかっていました」
「御存知だったのですね」
「はい」
 そのだ。『真実』をだというのだ。
「そうです」
「だからこそなのですね」
「貴方達は潔白です」
 今この『真実』を公としたのである。
「それが確かなものになります」
「有り難うございます、陛下」
 コジマだけでなくだ。ワーグナーもビューローも言う。
「これで我々は」
「救われます」
「ただ。一つです」
 王は安堵の顔になった彼等、とりわけコジマに対してだった。
 彼女の名を呼びだ。こう言ったのである。
「ビューロー夫人、約束して下さい」
「約束ですか」
「はい、約束です」
 コジマを見つつ。そのうえでの言葉だった。
「この冬はです」
「冬にはですね」
「ここに留まっていて下さい」
 こうコジマに告げたのだった。
「このミュンヘンに」
「この町にですか」
「はい、そうして下さい」
 王はコジマを見つつ話を続けていく。
「それだけです」
「わかりました」
 コジマもその時は王の言葉に頷いた。
「それではその様に」
「そういうことで」
 こうして話は終わった。ワーグナー達の潔白は王が保障することになった。だがこのことはだ。
 今潔白が確かなものとされたその場においてもだった。
 近衛兵達も侍従達もだ。溜息を出してから言ったのだった。
「そんな筈がない」
「彼等は嘘を吐いている」
「それが真実だ」
 『真実』は既にわかっていた。
 後はその真実をどうするかだった。そして王の選択はそれだったのだ。
 彼等の言葉をそのまま受けた。そのうえでだ。
 公にだ。こう言ったのだった。
『コジマ=フォン=ビューロー夫人は潔白である』
 これで全ては終わった。しかしワーグナーは攻撃を避けスイスに逃れた。ここまでは誰もが予想していることだった。だが予想外のことは常に起こるものだ。
 何とだ。コジマは王の忠告を聞かずにだ。そのワーグナーを追って。
 スイスに向かった。それを見てだ。
 誰もがだ。顔を顰めさせて言い合った。
「折角陛下が忠告されたのにか」
「それを聞かずにか」
「真の夫を追って行ったというのか」
「あれでは」
 最早だ。言い繕うことのできないことだった。
「自分自身で真実を言っているようなものだ」
「誰もが知っているその真実をな」
「あれが真実だ」
「バイエルン王の信じた真実だ」
 王への批判にもなった。そしてさらにだった。
 コジマはその子を産んだ。その名前は。
 ジークフリート、ワーグナーのその作品ニーベルングの指輪の主人公だ。この大作を象徴する名前をだ。ワーグナーは名付けたのだ。
 このことは欧州中に伝わった。勿論バイエルンにもだ。
 
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