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永遠の謎

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401部分:第二十五話 花咲く命その十七


第二十五話 花咲く命その十七

「次第に」
「かつ急激にだ」
「では貴族の時代は終わりますか」
「人の心には残る」
 容易には消えないというのだ。
「だが。これまでの絶対的なものはだ」
「廃れますね」
「廃れる。そして」
「そして?」
「王もまた同じだ」
 王制もまた廃れようとしているとだ。王は時代を見て言った。
「共産主義というものによってかどうかはわからないが」
「共産主義がこれ以上流行ると」
「恐ろしいことになる」
 共産主義にはだ。王は王としての立場だけでなくだ。個人としても心の奥底から危険なものを感じ禍々しささえ感じていたのだ。
 その禍々しさを見ながらだ。王は話す。
「彼等が平民を解放しても」
「それは解放ではありませんか」
「抑圧になる」
 それだというのだ。解放とは逆の。
「あのロベスピエールの再来だ」
「フランス革命ですか」
「彼等の正体はジャコバンだからだ」
「では人民や平和というのは」
「全ては偽りだ」
 共産主義の言うだ。それだというのだ。
「彼等は神を否定し自分達を絶対とし」
「粛清を行いますか」
「行わない筈がない」
「では。あの様にその解放した筈の人民を」
「血が。罪なき者達の血が」
 その禍々しさを。今口に出した。
「国を覆うのだ」
「それは社会主義でも同じでしょうか」
「社会主義。イギリスであるような。そしてワーグナーが言うような」
 ワーグナーは個人の財産を否定している。とはいっても彼は贅沢を続けているからこの辺りは矛盾している。これもワーグナーが攻撃される材料だ。
「ああしたものならまだいい」
「では社会主義はいいのですか」
「社会主義。それが暫定的に世の中をよくするものなら」
 それでいいというのだ。
「一向にな。ただ」
「共産主義の隠れ蓑であれば」
「危険だ。そうした者も多い筈だ」
 王はこのことも見抜いていた。
「必ずな」
「それを見抜くのは容易ではありませんね」
「いや、わかる」
「見抜けるのですか」
「共産主義には独特の禍々しさがある」
 感性でもだ。王は見抜いていた。
「だからわかるのだ」
「禍々しさですか」
「私だけでなくあの方もわかっておられる」
「この場合のあの方は」
「ビスマルク卿だ」
 プロイセンの宰相である彼だった。王を理解し王が理解しているだ。その彼だというのだ。
「あの方は見抜かれる」
「ではあの方が以前より社会主義者を抑圧されているのは」
「共産主義者への対策だ」
 それだというのだ。
「それに他ならない」
「全てはそこにあるのですか」
「共産主義を放っておけば」
 どうなるかというと。最早応えは出ていた。
「ドイツは一人の独裁者の意のままになる恐ろしい国になる」
「一人の」
「社会主義を隠れ蓑にしても同じなのだ」
 王の言葉は未来を見ていた。しかし国家社会主義なるものは見てはいない。
 
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