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デジモンアドベンチャー Miracle Light

作者:setuna
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第17話:記憶復活の経緯

 
前書き
ブイモンVSテイルモン 

 
ブイモンとテイルモンの戦いが始まった。

正直勃発の経緯があれなので、本来は敵であるはずのテイルモンを応援したくなってしまった大輔達である。

「ブイモンパンチ!!」

「ネコパンチ!!」

2体の拳が勢い良く激突し、それにより鈍い音が響き渡る。

「お前、小さい癖にやるじゃないか」

「うるさいわね、小さい言うな!!あんただって私と大して変わらないサイズでしょ!!」

「はんっ!!残念でしたー。俺はまだ成長期なんで進化すればもっと大きくなるの。お前みたいな色々終わってる豆ネズミとは違うんだよ」

「あ・ん・た・は~!!」

性懲りもなくネズミ発言をするブイモンにテイルモンの白い体が真っ赤に染まる。

「あれれ~?顔どころか体が真っ赤になっちゃったぞ?図星か?図星なのか?図星なんだろ?ええ?」

「この…この…鬼畜デジモンめ…せめて少し無惨な姿でくたばりなさい!!」

「鬼畜デジモンだなんて酷いじゃないか、一体何処にこんな遊園地のマスコットキャラにも選抜されそうな可愛さを持つ奴が鬼畜に見えるんだ?」

「自分で自分を可愛い言うな!!」

「「どりゃりゃりゃりゃりゃ!!!」」

殴り合いを続ける2体。

結構激しい戦いのはずなのに大輔達は微妙な表情で木陰で涼みながらアイスを食べて観戦していた。

「何かここまで緊張感のない戦いも珍しいね」

「そりゃあ、あそこまで軽い会話しながらだからね」

「と言うかブイモンのやり方に問題がありすぎてテイルモンの方が被害者に見えるくらいだしな」

「…………」

ヒカリ、賢、大輔、タケルは被害者にも見えるテイルモンを同情的な目で見つめていた。

それにしても…。

「仲の悪い猫を1つの部屋に押し込めたらこんな感じかな…」

ブイモンとテイルモンの低次元の戦いを見守りながら大輔の呟きが小さく響き渡る。

「この!!」

両手の爪でブイモンの顔をバリバリと引っ掻くテイルモン。

「痛たたたた!!顔を引っ掻くなよ馬鹿あ!!ならこっちは……」

反撃とばかりにテイルモンの両頬をギリギリと引っ張るブイモン。

良く伸びる良く伸びる。

「ふがあああ…ほおをひっふぁるふぁあああ!!」

「隙ありぃ!!」

悲鳴を上げるテイルモンの隙を突いてくすぐり攻撃を繰り出すとテイルモンがくすぐったくて爆笑しだす。

「や、止めろくすぐるなああああああ!!こ、こんのー!!」

「お、お前だってくすぐり返してるだろ!!あーっはっはっは!!」

テイルモンも反撃とばかりにくすぐり返す。

もう戦いではなく単なるじゃれ合いと化した微笑ましい激闘である。

「………じゃれ合ってるね」

ヒカリがアイスを食べ終え、コーンの巻紙をゴミ入れに捨てながら呟いた。

実際最早戦いとは言えず、単なるじゃれ合いと化しており、殆どの面子が興味を無くしていた。

「ホーリーリング、ゲット!!」

しかしブイモンがテイルモンの尻尾のホーリーリングを奪ったことで戦局が変わる。

「あ、か、返せ!!」

「断る!!ホーリーリングが無い今のお前なんて俺からすれば単なるネズミ以下!!ブイモンヘッド!!」

「は…はう~…」

テイルモンの尻尾のホーリーリングを奪って弱体化させた後、渾身の頭突きを頭に喰らわせ、テイルモンは目を回しながら気絶した。

【あ、気絶した】

気絶したテイルモンを見下ろしながら大輔達はこれからどうするか悩む。

「どうするんだいブイモン?」

「大丈夫だ賢、これがある」

「あ、ミーコのケージ…」

「お前どこから出したんだそれ…」

何処からともなく取り出したのはミーコを閉じ込めるためのケージ。

探しても見つからなかったケージがこんな所に…。

「ホーリーリングさえ無ければこいつは成長期と変わらない。だからこいつに入れとけば逃げられない。」

ガシャンと音を鳴らしてケージが閉じられた。

見た目はケージに入れられたネズミ…ではなく子猫にしか見えない。

散々からかい倒された挙げ句ケージに入れられるとは…。

「「可哀想…」」

テイルモンには現実世界に戻る際に妨害を受けたタケルとパタモンもこれには同情せざるを得なかった。

「あ、そうだ」

ブイモンはマジックペンを取り出してゆっくりとテイルモンに歩み寄る。

因みに全員粗方探し回ったのか全員集合する。

「で、寝ている奴への定番悪戯をしてみたんだ。」

【………………】

全員の視線がケージの中に入れられ、顔にマジックで落書きされて羞恥で体を真っ赤にしたテイルモンに集中する。

全員の口元が引き攣っているが、大笑いしないのは彼らの優しさか。

「……な、なあ…何で頭にたんこぶ作って顔に落書きされたテイルモンがケージに………ぷっ、あーっはっはっはっ!!やべえ、腹が…腹が…!!」

「笑うなあっ!!」

顔に書かれた落書きを見ていてとうとう堪えきれなくなった太一が腹を抱えて爆笑し、テイルモンは涙目で叫んだ。

「ぷっ…くくく…お、おい…そのあんまりな姿のテイルモンは何だ…?」

ヤマトはテイルモンを見ないようにしたが、耐えきれずに笑ってしまう。

「何かいきなりムカつく態度取ったから返り討ちにして気絶した後に落書きしてやった。」

「この…鬼!悪魔!モンでなし!!」

「大袈裟な、油性じゃないんだからいいじゃん」

「…ブイモン、これ油性マジックよ?」

「何ぃ!?」

空がブイモンが使用したマジックを見ると確かに水性マジックではなく油性マジックだった。

「……………てへっ☆」

「てへっ☆じゃなーい!誰でも良い!水とハンカチを!!」

「あ、どうぞ」

あまりの哀れな姿に見ていられなくなったのか、丈がテイルモンにバケツ一杯の水と濡らしたハンカチを渡した。

「……ぷっ!!」

「笑うなあ!!」

至近距離でテイルモンを見てしまった丈は吹き出してしまった。

「…あ~、こんな爆笑したの久しぶりだぜ…マジで死ぬかと思った。」

太一が笑いすぎて目から滲んだ涙を擦ると最早敵対心は無くなったようだ。

「なあ、間抜け顔。ヴァンデモンは何処だよ?」

「誰が言うか!!私を馬鹿にするのも大概にしろ!!」

「そんなマジックで化粧したような間抜け顔で何偉そうにしてんの?」

「あんたがしたんでしょうが!!」

ブイモンがテイルモンにヴァンデモンの居場所を問うがテイルモンは当然答えない。

敵でもあり、こんな大恥をかかせたブイモンだから当たり前と言えば当たり前だが。

「ん?お前、捕まってる癖にそんな偉そうなこと言える立場だと思ってんのか?ほれ、ほれほれほれ」

「痛たたたた!!止めろつつくなあ!!」

近くにあった木の枝でテイルモンをつつく。

何度でも何度でも何度でも。

見ているこちらが痛いと感じるくらいには。

「もう止めろ、可哀想に見えてきた」

見ていて流石に太一も哀れに思えてきたのか、ブイモンを止めた。

「ちぇ~、じゃあこいつは家で預かるよ。良いよな」

疑問符が付いてないのを見ると、ブイモンの中では決定事項なのだろう。

まあ、反対するつもりも太一には無い訳だが。

「んじゃあ…」

「!?待て、降ろせ!!出せ~!!」

テイルモンの叫びを無視して、ブイモンは本宮家に真っ直ぐ向かう。

「それじゃあお兄ちゃん、また明日ね」

「は?」

「私、大輔君のお家にお泊まりするから」

「はあ!?」

「お母さん達には伝えてるから、それじゃあお兄ちゃん。また明日~」

あっさりと大輔と共に去っていく妹の姿に太一は呆然となりながら呟いた。

「ヒカリ…お前、そんなあっさり…」

「(何だか最初は幼稚園に行くのを嫌がっていたのにしばらくすれば喜んで行く子供と親みたいな絵面ですねミミさん)」

「(そうよね~、最初は泣いてたのにしばらくすると振り返ることもしなくなるから寂しく感じるそうよ光子郎君)」

「「頑張れお兄ちゃん」」

「うっせえええ!!」

ヤマトと空の同情の言葉に太一は叫んだ。

しばらくして本宮家に到着し、大輔の部屋に放置されたテイルモン。

「…よし、ようやく取れた。あいつめ、どこに消えた!?絶対にボコボコにしてやる…」

テイルモンは扉を開けてブイモンに復讐しようとしたが、勢い良く扉が開かれ、顔面を強打したテイルモンは吹っ飛んで頭から壁に激突してしまった。

壁に勢い良く激突し、目を回して気絶しているテイルモン。

「だ、大輔君。テイルモン…凄い勢いで壁に激突しちゃったけど…」

「多分、大丈夫じゃないかな…?」

「ホーリーリングが本体みたいなもんだけど、一応成熟期だからな。体は頑丈だから平気平気。それよりおやつおやつ」

「お前、扱いが酷すぎるぞ」

テイルモンを気絶させた元凶であるブイモンは全く気にせずおやつを食べる始末。

テイルモンは目を回しながら、頭に入ったショックで忘れ去っていった過去を思い出していた。

あれは遠い昔、デジタマから孵った時から自分は独りだった。会いたい人がいた。

でも会えない。

捜している最中にヴァンデモンと遭遇し、何時の間にか…。

「あれ…私のデジヴァイス…」

テイルモンの記憶が蘇る度にヒカリのデジヴァイスの輝きは増していく。

「まさか…テイルモンにデジヴァイスが反応してる?」

試しにテイルモンにデジヴァイスを近付かせると、デジヴァイスの輝きが強くなっていく。ヒカリが恐る恐るとデジヴァイスを近づけると…。

“八神ヒカリのパートナーデジモン…テイルモンを認識。テイルモンのデータを登録します”と言う機械音声が聞こえた。

「…え?」

「ヒカリちゃん?」

呆然となっているヒカリに大輔が尋ねる。

どうやら先程の機械音声はヒカリにしか聞こえなかったようだ。

「テイルモン…私のパートナーデジモンだって」

「マジ?」

「マジ…」

「ふーん、良かったじゃないかヒカリ。パートナーデジモンがあっさり見つかって」

全く気にせずにお菓子を頬張るブイモン。

「でもヴァンデモンって奴の部下だぞ」

「逆らうようなら殴って黙らせる。以上」

「「…………」」

「う…ううん……」

唸りながらゆっくりと目を開けるテイルモンに大輔とヒカリが近寄る。

「おーい、テイルモン大丈夫か?」

「テイルモン、頭大丈夫?」

心配そうに呟く大輔とヒカリにテイルモンはゆっくりと口を動かした。

「ヒカリ…?」

「テイルモン?私が…分かるの?」

「ああ…ようやく思い出した。私はずっと、ずっと待っていた。だが、長い時間の経過と共に私は何時の間にか忘れてしまっていた。だが、今、全てを思い出した…私は…ヒカリ、お前をずっと待っていたんだ」

「テイルモン…私もね、ずっと会いたかったよ。パートナーデジモンのあなたに…」

「ヒカリ…!!」

感動的な雰囲気に大輔がうんうんと頷いたが、空気を読まない存在が近くにいた。

「あんな間抜けな方法が記憶を思い出すきっかけになるなんて思わなかったけどなー」

「…そう言えばあんたには借りを返してなかったわね」

「お?何だ何だ?やるか?やるのか?後輩の癖に先輩に喧嘩売るとは良い度胸だな?」

バチバチと火花を散らすブイモンとテイルモン。

「私の方が世代が上だ。成長期のお前より年長なんだぞ」

「何が年長だ。俺は純粋の古代種だ。お前みたいな古代種やら現代種なのか分からない半端者なんかよりは確実に上だ」

「何だと老け犬?」

「やるのか老けネズミ?」

「老けネズミ…?どうやら格の違いを思い知らせてやらないといけないようだな…!!」

「ホーリーリングが本体の癖に偉そうだな?先輩として一から目上に対する礼儀を叩き込んでやらないといけないな…!!」

「「チェリャアアアアア!!」」

2体が同時に殴りかかろうとした時、おやつを乗せていたお盆を2体の頭に叩き付ける大輔。

「人の部屋で喧嘩するな!!」

「痛い…」

「くっ…今日の私は頭を打ってばかりだ…」

痛みで涙目になる2体。

しかしブイモンは横目でテイルモンを睨む。

「お前のせいだぞ老けネズミ」

「何だと?お前のせいだろう」

「はあ?お前が俺に喧嘩売ってきたんだろうが」

「お前があの時に余計なことを言わなければ良かったんだろう!?」

「お前の頭が単純だからだろ」

「お前に言われたくないねネズミ」

「何だと!?」

「やるのかあ!?」

「てめえら…」

「「あ…」」

近くから聞こえた…まるで地獄の底から響き渡るような声にブイモンとテイルモンは青ざめた。

「そこに正座しろおっ!!」

「「はいっ!!」」

大輔に怒鳴られた2体は即座に正座をした。

「これから俺が言うことはしっかり聞け。言い訳は許さねえぞ」

「ええ?ちょ…大輔…」

「良いから黙って聞け!!飯抜きされてえのか!?」

「「くっ…」」

「テイルモンはあんまりご飯関係ないよね…?」

実際ヒカリのパートナーデジモンであるテイルモンは本宮家の食事抜きにされても…いや、今日は泊まるからテイルモンも被害を受ける。

「まずはテイルモン、お前からだ!!お前はもう少し広い心を持て!!少し前までは敵同士だったんだから警戒されたりするかもしれないんだからよ!!一々ブイモンの言葉に突っかかるな!!」

「うぐっ…」

「やーい」

「次はお前だブイモン!!」

「え!?」

「お前もお前で空気読まない言葉とテイルモンを挑発するのは止めろ!!空気を読むことは時間かけてどうにかするとして、相手に話す時はそれなりの礼儀を持て!!それが人と話す時の最低限のマナーだ!!」

「…それってデジモンにもそれ適応されるのかな?」

「いや、充分適応されるマナーだ」

「ん?」

背後から聞こえてきた声に反応し、振り返るとそこには魔法使いを思わせるデジモンがいた。

「あなたは?」

「私はウィザーモン。テイルモンの友人であまりにも帰りが遅いので捜しに来たんだが、どうやら取り込み中のようだ」

「あ、うん…しばらく掛かりそうだからゆっくりしていってね」

「…ああ、そうさせてもらうよ」

ウィザーモンとヒカリは大輔の説教を見守りながら時折雑談を交わすのであった。 
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