戦国異伝供書
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第十八話 道を走りその六
「実際にその動きを見せております」
「そうか、ではな」
「毛利家を降し」
「城主も助ける」
水に囲まれた城を今も守っている清水宗治もというのだ。
「そしてじゃ」
「そのうえで、ですか」
「うむ、そしてじゃ」
そのうえでと言うのだ。
「織田家の家臣とする」
「清水殿は優れた将だからですか」
「腹を切らせては惜しい」
普通開城させる時には城兵達の命を助ける引き換えに城主に腹を切らせる、だがそれでもなのだ。
清水が優秀であるが故にだ、彼もというのだ。
「一時蟄居を命じてもな」
「命はですか」
「助ける」
このことは絶対だと言うのだ。
「そうする」
「それでは」
「そろそろじゃな」
「毛利家とですね」
「話をしてな」
「降らせて」
「そしてじゃ」
そのうえでと言うのだった。
「急いで戻るぞ」
「殿、ではです」
石田がここで信長に言ってきた。
「既に手配は整えています」
「大返しのじゃな」
「道中飯や馬の手配はしていますので」
「すぐに進めるな」
「休む場所も整えています」
東に向かう際のそこもというのだ。
「そうしてです」
「武具もじゃな」
「脱いで進む方が速いので」
「必要なものはじゃな」
「置いています」
「東の方にな」
「ここで脱いだものはです」
それはというと。
「船で紀伊を回って運びます」
「海でじゃな」
「そうして尾張まで届けるということで」
「手配をしておるか」
「幸い瀬戸内の海は我等のものとなっています」
鉄甲船を使っての戦で勝った、その為に瀬戸内の海は織田家のものとなっているのだ。特に東は盤石に掴んでいる。
「ですから」
「それ故にじゃな」
「武具は船で運び」
「尾張の港に入れるな」
「そうすべきと思いまして」
手配をしたというのだ。
「それで如何でしょうか」
「よいことじゃ、ではじゃ」
「はい、毛利家との戦が終われば」
「軍勢は道で東に進み」
そしてというのだ。
「武具は海で運ぶとしよう」
「そうしてですな」
「東に向かう、都から安土そして岐阜まで戻り」
そのうえでというのだ。
「尾張まで向かいな」
「徳川殿をお助けしますな」
「そこから三河に入りじゃ」
家康の国であるこの国にというのだ。
「そしてじゃ」
「いよいよですな」
「武田家とですな」
「雌雄を決する」
「そうしますな」
「うむ、無論尾張に入れた武具は身に着ける」
このことも忘れないというのだ。
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