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戦国異伝供書

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第十八話 道を走りその三

「思っておりました」
「そして実際にじゃな」
「そうなりました、しかも駿府の地にです」
「よく馴染んでおったそうじゃな」
「極めて」
 義元に可愛がられ氏真とも懇意であった、家康は将来の今川家の重臣として大事に育てられていたのだ。
「その駿府に入られれば」
「あ奴自身にもな」
「よいことです」
 まさにというのだ。
「まことに」
「そうか、ではな」
「徳川殿に三国をお任せし」
「東海も安泰じゃな」
「東海の西は既に」
「うむ、尾張と美濃そして伊勢と志摩はな」
 この四国はというと。
「織田家の膝元じゃ」
「それだけに」
「万全に治めておる」
 信長自らそうさせているのだ。
「だからな」
「東海はですな」
「万全じゃ、そして近畿もじゃ」
 東海と同じかそれ以上に織田家にとっては要地となっているこの地域はというのだ。都も堺もあるこの地域は。
「これからも治めていってな」
「豊かにしていきますな」
「そうしてな」
 信長は雪斎にさらに話した。
「また言うが戦の後はな」
「はい、織田家の領地にした全ての国をですな」
「万全に治める様にする、数年かけてな」
「検地も行いますな」
 羽柴も問うてきた。
「そうしますな」
「無論じゃ、しかしな」
「しかしとは」
「わしは今現在は北条との戦まで考えておる」
 そこまではというのだ。
「そして関東の他の家も当家の下に入れることもな」
「関東を完全に手中に収めることも」
「考えておるが」
 しかしと言うのだった。
「若しかすると奥羽もか」
「奥羽ですか」
「奥羽に面白い者がおるな」
 その者のこともだ、信長が言うのだった。
「伊達家にな」
「あの独眼龍ですか」
 蒲生が言ってきた。
「若くして盛んに戦を行い伊達家の勢力を拡大させている」
「そうじゃ、あの者じゃ」
「その伊達家の独眼龍とですか」
「戦うことになるやもな」
「関東の戦の後で」
「あの者も天下を望んでおるわ」
 伊達政宗、彼もというのだ。
「それでじゃ」
「殿が関東まで来られたなら」
「その時はじゃ」
「殿と一戦交えてですか」
「一旦押し返し関東を狙ってじゃ」
 そうしてというのだ。
「天下統一の礎にするであろうな」
「まさか」
「そこまで考えておるでしょうか」
「伊達家の独眼龍が」
「天下を狙っているなぞ」
「いや、あの者の動きはな」
 政宗のそれはというのだ。
「そうしたものじゃ」
「天下を狙う」
「そうしたものですか」
「そしてですか」
「若しかすると」
「あの家とも天下を賭けた戦になりますか」
「そうやもな、だからじゃ」
 信長は家臣達に話した。 
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