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永遠の謎

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363部分:第二十四話 私の誠意その一


第二十四話 私の誠意その一

                 第二十四話  私の誠意
 王はワーグナーがミュンヘンに戻ってから上機嫌だった。しかし何故上機嫌なのか、多くの者はそれを取り違えこう話すのだった。
「御成婚が近いからな」
「ああ、間も無くだ」
「もう王妃様のドレスも完成した」
「贈り物は各国から次々と届いている」
「エリザベート様もお喜びだそうだ」
 オーストリア皇后にしてゾフィーの姉、王にとっても従姉である彼女のことも言及される。
「いいことだ。本当にな」
「まさに美男美女だ」
 王とゾフィーの美貌についてもだ。よく知られていた。
 彼等はその御成婚のことについて話されていく。誰もがそう思っていた。
 それは大公も同じでだ。己の屋敷で微笑み客として来ている者達に話していた。
「間も無くだな」
「はい、御成婚ですね」
「いよいよですね」
「そうだ。間も無く陛下は幸せになられる」
 微笑みだ。客達に話すのだった。
「これ以上の喜びはない」
「では我々もこの御成婚を祝福しましょう」
「神と、そしてバイエルンに」
「陛下に」
「私はです」
 大公もだ。穏やかな顔で彼等に話す。
「あの日が待ち遠しいです」
「大公は余計にですね」
「陛下の御成婚が楽しみですか」
「はい、あの方を幼い頃より見てきました」
 王の叔父としてだ。その立場からである。
「ですから。余計にです」
「そうですね。血のつながりがあると余計にそうなりますね」
「尚更」
「私は気楽な立場です」
 己のことはだ。少し自重めかして言うのだった。
「王位継承権はありますが後の方ですし」
「気楽に。御自身の職務をこなしつつ」
「趣味を満喫されていますか」
「はい、生活の心配はありませんし」
 それがないのは当然だった。何しろ大公である。それで生活が困窮するということもないことだった。王族ともなれば年金が出るからだ。
 その気楽な立場を満喫しながらだ。大公は王を見て話すのだった。
「陛下は王の重圧を背負われています」
「しかしその陛下にですね」
「伴侶が来られる」
「御心を癒す伴侶が」
「妻はいいものです」
 常識の世界にいる人間としてだ。大公は温かい目をしていた。
「そうですね」
「はい、常に傍にいる女性というものはいいものです」
「そして子をもうけて父親になる」
「それもまた非常にいいですね」
「家庭を築いていくことは」
「バイエルンの跡継ぎも生まれます」
 このことも話していく大公だった。
「よいことばかりです」
「バイエルンの未来も素晴しいものになる」
「陛下の御成婚がもたらすものは多いですね」
「本当に楽しみです」
 また言う大公だった。
「では。この楽しみをさらに朗らかにする為に」
「それではですね」
「飲みますか」
「美酒を」
「ビールを用意してあります」
 それがあるというのだ。バイエルンはドイツの中でもとりわけビールを飲む国である。ワインも飲まれるがビールも非常によく飲まれる。
 それは貴族達も同じでだ。それでだというのだ。
 木の大きなジョッキに並々と注がれたビールが運ばれてきてだ。ソーセージやベーコンといったものも来た。そうしたものを前に置いたうえでだ。
 
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