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天体の観測者

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無限に煌めく宇宙

 冥界に強制撤去されたライザーを含む眷属達
 強制転移させた張本人であるウィスは静かに紅茶を口に運ぶ。

「ウィスをこの場に呼んだのは他でもありません。私達に修行を付けて欲しいのです」

 ウィスは朱乃が言わんとしていることを即座に理解した。
 リアスの婚約者であるライザーとのレーティングゲームにて勝利を収めるべく、力を欲しているのだと

「……」

 膝上にて猫の様に懐く小猫をあやしながら、ウィスは思案する。
 果たしてリアスに協力する義理あるのか、否かを

 正直な話、リアスに協力する義理は別段存在しない。
 リアスとはただの協力関係であり、朱乃の主であることを除けば赤の他人だ。

 故にウィスは遠慮しない。
 私情を挟み、夢見るリアスをその紅き瞳で見据える。

「貴族ならば背負うべく業があると思いますが?」

 政略結婚、いずれ貴族の家に生を受けた者ならば避けては通れない道だ。
 そこにリアスの意思が介在する余地など存在するはずがない。

 見ればリアスは苦虫を嚙み潰した様な表情を浮かべている。
 理解はしている、だが納得はしていないといった表情だ。 

 無理もないことなのかもしれない。
 リアスはまだ若く、見た目通りの年齢だ。
 だが、それで通用する程貴族社会は軽くない。

「貴族の娘として政略結婚は覚悟していたはずです。約束を反故にしてきたライザーにも責はありますが、それは結局遅いか早いかの違いでしかありません」

 ウィスの紅き瞳がリアスを射抜き、リアスを硬直させる。
 正論という名の口撃はリアスの心を切開していく。

「ウィスさん、もし仮に僕達が独自に修行に臨んだとしても勝機はありませんか?」

 この場のいたたまれない雰囲気を払拭しようと木場がウィスに意見する。

「楽観的な思考ですね。万が一にも勝機など存在しないと断言します」

 主の見ていられない様子に騎士である木場が口を挟むが、ウィスは即座にその言葉を一刀両断する。

 レーティングゲームでの経験は勿論、眷属数でもあちらが上だ。
 幾らライザーが慢心をしていようとこの差が覆ることはない。

 将来的にリアスがライザーを超える可能性もあるが、それはあくまで未来の話だ。
 現状、リアス達の実力をこの短期間に伸ばしたとしても逆転などあり得ないだろう。

「一誠のブーステッド・ギア(神器)の可能性に賭けているのらば、お門違いも甚だしいですよ」

 確かに、一誠の神器、ブーステッド・ギア(籠手)の力は強力だ。
 だが、言ってしまえばそれだけの話に過ぎない。

 その身を犠牲に『代償』を請け負うことであのフェニックスを一時的に打破する力を得ることが出来るかもしれない。
 最上級にも匹敵する力を得ることが出来るかもしれない。
 しかし、幾ら強大な力をその身に宿していても、宿主が貧弱では話にならない。

『ウィスという奴の言う通りだ。今の一誠の状態ではもって数秒、いやそれ以下だろう。だが、それでも対価を支払えば一時的に最上にも等しい力を得るのは事実だ』

 籠手を通してドライグがウィスの言葉に異を唱える。

「どうやら前提から履き違えているようなので言っておきますが……



 






『代償』とは身に余る絶大な力を一時的に行使することを条件に生命の危機に至り、絶大な反動を背負うことです。しかし、ドライグが指す『代償』とはドライグ自身が生き延びることを前提に力を引き出すのですから、一誠という種族的にも下に当たる器を媒体にしている時点で引き出すことができる力など底が知れています」
 
 ましてや物語の主人公の様な突如の覚醒、劇的なパワーアップなど有り得ない。
 それで生き残れるほど世界は甘くない。
 
「あの場でリアスが最低でもすべきだったことはライザー側の眷属数を此方と同数に揃えることや、何らかのハンデを貰うことだったのではないですか?」

 そうしなければリアス達に万が一にも勝ち目は無いだろう。
 見ればリアスは弱々し気に表情を曇らせ、顔を地に伏している。
 今になって如何に自分達が不利か理解し始めたのだろうか。

 リアスに限った話ではないが、悪魔という種族は慢心が過ぎる傾向がある。
 相手の力量を何の根拠もなく下と見なす癖があるのだろうか。
 ウィスにとってそういった悪魔の悪魔至上主義的思考が悪魔の最大の弱点だと考えている。

「どうかお願いします、ウィス。リアスに手を貸して上げてください」

 思案するウィスに"部長"ではなく、"リアス"を助けて欲しいと朱乃は懇願する。
 
「私からもお願いします、ウィス。……部長がいなくなるのは嫌です」

 小猫も寂し気に、ウィスの胸に両手を当てながら、同じく懇願する。

 本当にリアスは主思いの良き眷属に恵まれたものだ。
 ウィスは微笑し、仕方無しとばかりに立ち上がる。
 
貸し一つ(・・・・)ですよ、リアス」

 ウィスは小猫を左腕の脇に抱え、その場から姿を消失させる。
 次の瞬間、うなだれるリアスの前に現れ、小猫を抱えていない方の右腕でリアスの腰に腕を回し、抱き上げた。

「それでは行きますか」

 まるで丸太を担ぐようにウィスはリアスを軽々と抱え上げ、オカルト研究室の出口を目指す。
 突如の急展開にリアスは理解が追い付かない。

「え、ちょッ……!?」

行くって、どこに!?

 リアスは状況を理解出来ずに情けない声を上げる。
 小猫は借りてきた猫の様に大人しく、ウィスの腕の中で今なお菓子を口に運んでいた。

「パンツが丸見えですよ、リアス」
「……ッ!?」

 ウィスの指摘に恥ずかし気に頬を染め、リアスはスカートを抑える。
 普段、あれほど大胆に肌を晒しているにも関わらず、この恥ずかしがり様は不思議だ。

「あの、ウィス?行くって何処に……?」

あと、私を抱え上げている理由は!?

「勿論、修行です。今のままではライザーに万が一にも勝ち目はありませんからね」

 久方ぶりの修行、腕が鳴る。

「ただし、一切の妥協も浪漫も許しません。修行を頼み込んだのならば正に命懸けで取り組んでもらいます」

 落ち着きがないリアスを抱え上げ、ウィスは朱乃と向かい合う。

「出発の準備はどうなっていますか、朱乃?」
「問題ありませんわ」

 朱乃はこうなることが分かっていたとばかりに準備は万全のようだ。
 
「泊まりの準備は?」
「想定内です」

 魔法陣の中から10日間分の荷物で大きく膨れ上がったリュックが現れる。
 その巨大な荷物を担いでいるのは一誠と木場の2人であるが
 朱乃はかなりイイ性格をしているようだ。

「学校側に一時的な休学届けの方は?」
「万事、抜かりありませんわ」

 流石準備が速い。

「それでは親御さん達への伝達は?」
「伝達済みです」

 パーフェクトだ、朱乃

「それでは皆さん、これから飛び立ちますよ。私の背中に掴まってください」

 右手には奇抜的なデザインが施された杖を有し、服装は魔導士を連想させるダークカラーのローブ姿

 首回りには大きな水色のリングを下げ、杖を有していない左手は腰へと回している。
 見ればウィスの体は僅かに地面から浮き上がっている。

 これがウィス本来の姿
 その佇まいに隙は無く、洗練されたものだ。

 グレイフィアは超常とした雰囲気を醸し出すウィスの存在に圧倒され、目が離せない。

 ただ一人朱乃だけは自身の幼き頃の過去の記憶を回顧し、ウィスのその姿を目に焼き付けていた。

 ウィスの姿は幼き頃に出逢った当時の姿のまま
 やはりウィスは年を取らず、悠久とした時を生きているのだろうか。

 釈然としない気持ちに悩まされながらもウィスの指示に従い朱乃は率先してウィスの右肩に手を置く。
 それに続く形でアーシアが朱乃の肩へと手を置き、続けて一誠がそんなアーシアの肩に手を置いた。
 木場は一誠の後ろである。
 
 朱乃達が全員掴まったことを背中越しに確認したウィスは杖を宙へと掲げる。

「それでは参りましょうか?」

 ウィスは杖を地面へと軽く打ち鳴らす。
 




 途端、眩いまでの白銀の光が周囲に迸った。
 
 その光はウィス達の周囲を円を描くように循環し、包み込み、その輝きを強く増していく。
 白銀の光は強く迸り、幾度も循環し、周囲を幻想的に照らし出す。
 
 やがてその白銀の光は即座にリアス達を包み込み、途轍もない速度で天へと昇っていった。

 そして天へと昇る最中その光は突如消え失せる。
 ウィス達の姿は既になく、先程までの輝きが嘘のようにその場には閑散とした光景が広がっていた。

 リアス達を連れたウィスは瞬く間に宙へと飛翔し、雲を突き抜け、大気圏を突破し、地球という惑星を飛び立っていく。

 オカルト研究部に残されたのはグレイフィアただ一人
 彼女はただリアスの義姉としてリアスの未来に幸あることを望み、ウィスに一礼していた。 
 

 
後書き
原作でも貴族としての義務を放棄し、恋に走るリアスの心情は理解出来ても、これは何か違くね?と思ってました

・年頃の乙女思考 → 分かる
・自分が心から愛した人と添い遂げたい → まあ、分かる
・女癖が悪いライザーを好きになれない → んー、まあ嫌悪感を抱くのは分かるかな?
・"旦那様方もこうなることは予想さられておりました。よって決裂した最終手段を仰せつかっております。お嬢様がそれ程にまでご意志を貫き通したいということであればライザー様とレーティングゲームにて決着を、と" by グレイフィア → いや、それチャンスではなく、公開処刑という名の無理ゲー
・レーティングゲームの決定 → 出来レースですね、分かります
・レーティングゲームで決着 → ん?何かおかしくね?君、状況分かってる?万が一にも勝ち目ないよ?相手、不死のフェニックスかつ眷属数も経験も格上の相手だよ?
・猶予は10日間。十分よ(大雑把な解釈) by リアス → 頭、ハッピーセットなのかな?最低でも数年の鍛錬を積まないとライザーに一矢報いることも出来ないことに気付いてる?むしろ、格上であるライザーにハンデを貰うべきでしょ
・いざ修行 → 修行という名の"運動"。一誠の潜在能力に賭けた一誠メインの修行はまだ理解出来るが、聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)という素晴らしい回復手段を有するアーシアがいるのだから、もっと一誠以外も限界一歩手前まで修行しろよ!
・ライザー陣営のサーチ不足 e.g.フェニックスの涙 → 嘘だろ、おい
・ライザーとの一騎打ち → 王であるリアスが前線で戦ってどうすんだよ!勝てる見込みがゼロに近いのに一騎打ちに持ち込んでどうすんだ!
・これ以上、愛する眷属が傷付くのは見てられない。だから、リザイン by リアス → 王であるリアスが敗北宣言してどうすんだよ!眷属達は王であるリアスのために戦ったんやぞ!最後まで聖水なり十字架なり悪魔の弱点を遣ってなりふり構わずライザーと戦えや!
・レーティングゲーム敗北 → ですよね、知ってた
・実はリアスがレーティングゲームで負けた場合も策を練っておいた by サーゼクス → いやいや、じゃあこれまでのレーティングゲームへの一連の流れは何だったの?
・左腕を対価に覚醒ィ!パワーアップ!ライザーへの勝ー利! → おーい、ちょっと?一誠カッコイイけど、何かいきなり過ぎない?あと、ライザーあっけな
・ライザーがかませ犬と化す → かわいそす
・『代償』は次回には"ご褒美"に! → わけわかめ

以上です

作者はリアスのことはかなり好きなんですけど、慢心と思い上がりが激しい部分もあると思うんですよね

※ これはあくまで作者の個人的な意見です
※ 気分を害された場合、深くお詫び申し上げます 
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