| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

永遠の謎

しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

335部分:第二十二話 その日の訪れその六


第二十二話 その日の訪れその六

 王はどうしてもそう思えずだ。話す言葉だ。
「私は花婿にはなれるのだな」
「ですから。陛下はその為におられるのですから」
「ではゾフィーがだな」
「はい、あの方がです」
「エルザ姫なのです」
「そうか。ではこのまま呼ぼう」
 王はようやく微笑むことばできた。僅かにではあるが。
 その僅かな微笑みでだ。王は今決めた。
「私はローエングリンとして彼女と接しよう」
「陛下がなられるものに」
「それになりだ」
「ゾフィー様をエルザ姫と呼ばれますか」
「王妃になる彼女をな」
 こう話してだった。王はゾフィーと向かうのだった。
 そうしてだ。実際にだった。
 彼女に対してだ。エルザと呼んでみせたのだった。
「ではエルザ姫」
「私がですか」
「はい、この呼び名で宜しいですね」
「有り難うございます」
 その呼び名にだ。ゾフィーはだ。
 最初は戸惑いを見せた。しかしだ。 
 王がそう呼ぶ意味を彼女なりに察してだ。微笑んでから答えたのだった。
「それでは」
「はい、ではエルザ姫」
「ローエングリン様」
 ゾフィーもだ。王をこう呼んだ。
「モンサルヴァートの次の主」
「そしてですね」
「そうです。白銀の騎士」
 実際に王は今は白銀の服を着ていた。白の絹の衣に所々に白銀の刺繍を施した服だ。絹自体も陽光で輝きだ。全てが銀に見える。
 その服を纏っている王を見てだ。ゾフィーは話すのだった。
「そうなりますね」
「その通りですね。それでは」
「はい、ローエングリン様」
「エルザ姫」
 お互いに呼び合いだ。お互いを確かめ合う。だがこの時もだ。
 王は彼女を見ずにだ。彼を見ていた。そうしてなのだった。
 そのゾフィーにだ。こう話した。
「それでなのですが」
「今度は一体」
「間も無くその時が来ようとしています」
 こう話すのだった。
「私が待ち望んでいた時が」
「婚礼でしょうか」
 ゾフィーは花嫁になる者としてこう考えた。エルザならばだ。
「その時のことを」
「あっ、いえ」
 そう言われてだ。何故かだった。
 王は戸惑いを覚えてだ。こうゾフィーに話した。
「ワーグナーです」
「ワーグナー氏ですか」
「そうです。ワーグナーが戻って来ます」
 ゾフィーに対するよりも明るくだ。王は話す。
「そうなります」
「このバイエルンにですか」
「ミュンヘンに戻って来ます」
 その言葉を続けていくのであった。
「間も無くです」
「そうですか」
 王のその言葉にだ。ゾフィーは。
 残念なものをその顔に見せてだ。言うのだった。
「あの方ですか」
「はい、彼が戻って来ます。そして」
「そして?」
「あの作品が。遂にです」
 そのワーグナーの作品についてだ。さらに話すのだった。
 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧