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永遠の謎

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334部分:第二十二話 その日の訪れその五


第二十二話 その日の訪れその五

「彼女を」
「あの歌劇の姫を」
「いや、違う筈だ」
 己の言葉を無意識のうちに否定してまた言うのだった。
「私はローエングリンの筈なのだ」
「騎士ですか」
「その筈だ」
 こう話すのである。
「そうではないのかというのか」
「陛下は男性ですから」
「そうだな。そして夫となるのだな」
「ローエングリンもそうでしたね」
 歌劇の中で彼はエルザと結ばれる。だからこその言葉だった。
「では陛下は」
「ローエングリン。憧れの存在」
 その憧れの存在だというのだ。
「私はそれになれるのだな」
「それが間も無くです」
「だといいのだが」
 こうだ。やはり憂いに満ちた声で言うのだった。
「私は幼い頃から彼を見ていたのだから」
「その憧れの方になられるのですね」
「本当なのだろうか」
 王は戸惑いも見せた。
「私は彼になるのだろうか」
「御結婚されれば」
「そうか。なるのか」
 そのことをだ。確める言葉だった。
「私が彼に」
「楽しみでしょうか」
「いや、不安だ」
 楽しみではなくそちらだというのだ。逆の感情だとだ。
「私はそのことに不安になる」
「御結婚についても」
「そうだ。そのことにもだ」
 不安になるとだ。王は言っていくのである。
 そのうえでだ。こんなことも話した。
「私は鏡を見ているのではないのか」
「鏡をですか」
「そうだ。私は彼を見ているのではなく」
「鏡をですか」
「前にも言ったと思うがローエングリンの目になったことはないのだ」
 それはないというのだ。ここでもだ。
「エルザの目からだ」
「あの騎士を見ているのですか」
「常にだ。だから鏡を見ている様だ」
「では白銀の騎士を御覧になられたのは」
「あの。川辺から来る時だ」
 その時になるというのだ。ローエングリンを観る時は。
「はじめて観た時もそうだった」
「白鳥に曳かれ。そして姿を現す」
「初恋なのだろうか」
 考える目で。さらに話していく。
「彼を観て。淡いものも感じた」
「確かそれは」
「私が十六の時だ」
 まさにだ。恋を覚える頃だ。人はこの頃に恋を知りそれを覚えだ。その中に生きていくのだ。
 王はそのことを感じながらだ。それで今ホルニヒに話すのだたt。
「はじめて観て。それ以来だ」
「ローエングリンを観られているのですね」
「彼自身を」 
 他ならぬだった。
「その彼に私はなるのか」
「なられるのです」
 少なくともホルニヒはそう思っていた。しかしなのだった。
 
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