なんばパークス
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第六章
「マイケル=ジャクソンもコンサートして」
「マドンナもなの」
「大阪の街にあるしね」
「だったらここが一番コンサート開きやすいし」
「昔は京セラドームなかったしね」
「あの球場がね」
それならとだ、二人共わかった。
「それじゃあね」
「大阪でコンサート開こうって思ったら」
「ここでってなるわね」
「普通に」
「それでなのね」
「マイケルやマドンナ以外の有名な歌手がコンサート開いていたのね」
そうしたことも書かれていた。
「野球だけじゃなくて」
「南海の人達がここにいただけじゃなくて」
「歌手の人達も来ていたのね」
「ここに」
過去、歴史となっている時代にというのだ。
「そう思うと感慨あるわね」
「南海ホークスがあって大阪球場があった」
「ここはそうした場所なのね」
「ただ遊べる場所じゃないのね」
「歴史もある場所なのね」
「いや、こんな場所だったなんてね」
「思いもしなかったわ」
大阪球場の跡地なのは知っていた、それでもというのだ。
そして二人が九階を後にしようとするとだ、その目の前にだった。
痩せて皺の多い顔で背筋がしっかりしたスーツの男の人がいた、その人が二人に微笑んでこんなことを言ってきた。
「ここに来てどうだったかのう」
「何かです」
「凄く勉強になりました」
二人はその男にすぐに答えた。
「こうしたチームだったんですね」
「昔のホークスは」
「今はソフトバンクですが」
「南海時代のことがわかりました」
「それは何よりじゃ」
「けれど何か」
「おじさんは」
直美も千明もその男の顔を見た、そうして言うのだった。
「鶴岡さんに似てますけれど」
「まさか」
「ははは、足はあるし影もあるわ」
男は二人に笑ってこう返した。
「それにガラスや窓に姿も映るぞ」
「幽霊じゃないんですね」
「鶴岡さんの」
「あんな立派な人ではないわ」
こうも言うのだった。
「顔が似てるだけじゃ、出身もな」
「そういえば関西訛りはあっても」
「何か違いますね」
「わしは呉生まれで大学がこっちでじゃ」
それでというのだ。
「南海に就職して定年まで働いていたんじゃ」
「そうでしたか」
「じゃあホークスとは」
「若い時はまだここにあったんじゃ」
「ホークスがですね」
「それで大阪球場も」
「そうだったんじゃ、しかし」
それでもと言うのだった。
「今はこうじゃ、若い時から姿が完全に変わったわ」
「まさにその時を見てきたんですね」
「おじさんは」
「今も大阪球場が瞼に浮かんでな」
文字通り目を閉じると、というのだ。
「それで今はなんばパークスもな」
「思い浮かびますか」
「そうなんですね」
「ホークスの、それで大阪球場がここにあってな」
そしてと言うのだった。
「今はこうなった、そのことお嬢ちゃん達もわかってくれるか」
「はい、わかりました」
「ここに来て」
「なら嬉しいわ、わしとしてもな」
南海の社員だった人間としてもというのだ。
「また来て楽しんでくれよ」
「そうさせてもらいます」
「なんばパークスに」
「それでここにも来て」
「そうさせてもらいます」
直美と千明は男に笑顔で答えた、そうして彼と別れてなんばパークスを後にした。帰る時に足元にホークスの当時のエンブレムとマウンドプレートを見た、そこにかつてのこの場所の歴史を息吹を感じて最後も笑顔になった。
なんばパークス 完
2018・9・14
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