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罠にかかった鹿

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第二章

 罠を仕掛けると家に帰ってそれぞれの妻に事情を話した、するとカバヤンの妻もガムランの妻もこう言った。
「カバヤンはいいとして」
「あんたはね」
「そこでまた強情を張って」
「どうしてそう自分勝手なのさ」
 こう二人にそれぞれ言うのだった。
「ちょっとね」
「お父さんには困ったものだわ」
「鹿をって言ったのに」
「鳥だなんて」
「わしが家の長だぞ」
 まだこう言うガムランだった。
「そのわしが決めたんだぞ」
「それで鳥が捕まらなかったらどうするのよ」
 娘、カバヤンの妻である彼女は父にその楚々とした奇麗な顔の眉を顰めさせて父に対してこう言った。
「それで」
「捕まらないものか、それこそだ」
「あの森ならっていうのね」
「鳥がかなり多いんだ。だからな」
「お父さんの罠になのね」
「鳥がどれだけでもかかっているかな」
 それこそと言う父だった。
「わからないぞ」
「どうだか」
「私達は鹿料理を作って燻製も作ろうと思ってるんだよ」
 今度はガムランの妻、カバヤンの義母が言ってきた。娘と同じく楚々とした顔立ちであるが少し恰幅がよく目じりに少し皺がある。二人共奇麗な服を着ている。
「それで鹿をって言ったのに」
「ふん、それで鹿が捕まらないとどうする」
「うちの人が捕まえてくれるわよ」
 これが娘の返事だった。
「それこそね」
「そう言うのか」
「言うわよ、だってうちの人は」
 そのカバヤンを見ての言葉だ。
「絶対によ」
「鹿を捕まえてくれるというのか」
「この人が捕まえなかったことがあった?」
 夫を見つつ父に問うた。
「これまで」
「確かにこいつは村で一番の猟師だ」
 ガムランもこのことは認めた。
「ひょっとしたら島で一番のな」
「それじゃあよ」
「鹿をか」
「捕まえてくれるからよ」
「だからそう言ってわし等を猟に出したのか」
「そうだったのに」
「まあそれでもね」
 ガムランの妻もカバヤンを見て話した。
「この人が鹿の罠を仕掛けておいてくれたから」
「だからか」
「大丈夫だと思うけれどね」
「全く、わしが鳥だと言ったら鳥だぞ」
「けれど私達は鹿って言ったのよ」
「それなのに鳥って言うからよ」
 娘がまた言ってきた。
「それでなんだよ」
「私達も言うのよ」
「全く、明日わしの罠には鳥がこれでもかとかかっているからな」
「どうだか」
 娘は口をへの字にさせて返して妻もだった、だが四人はこれ以上言い合っても仕方ないと思いそれで夕食を食べて休んだ。
 だがその次の日だった、ガムランはそれこそ朝日が昇る前に森に行って罠の状況を一人で見た、どうなったか心配だったからだ。するとだった。
 彼の罠には鳥が一羽もかかっておらずカバヤンの罠にはだった。
 見事な鹿が一頭いた、このことに癪に障って怒ってだった。
 彼はその鹿を自分の罠に移して怒って帰ってふて腐れて帰ってまた寝た、そして朝になるとだった。
 今度はカバヤンが彼の日課であるのでまずは一人で罠を観に行ってそうして鹿が鳥の罠にかかっているのを見たが彼は何もしなかった。そうしてだった。
 彼は義父にだ、朝飯を食っている時に言った。 
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