糸引き娘
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第三章
「スタンカさんに」
「二日連続完封ですね」
「凄い人もいたもんだね」
「そうですね、それでその時からのです」
「お友達なんだ」
「はい、その方がです」
「ここにいるんだ」
「面白い方なので」
それでというのだ。
「お会いしてみますか」
「それじゃあね」
「では。ただ」
「ただ?」
「実は人間でないので」
「まさか」
「はい、八条学園によくあるお話ですが」
二人の通っている学園にとだ、紗佳は健児に前以て話した。
「妖怪なのです」
「そうなんだね」
八条学園は世界最大の怪談スポットとさえ言われている、妖怪や幽霊の話が学園全体の七不思議どころか百はあると言われている。
「その人は」
「ですから正確に言うと人ではないですが」
妖怪だからだ。
「ですが」
「その人ともだね」
「お会いしてみますか」
「それじゃあね。それでどんな人なのかな」
具体的にはとだ。健児は紗佳に尋ねた。
「それで」
「人を驚かせることが趣味で」
「そこは妖怪らしいね」
妖怪にとって人を驚かせることは生きがいであり生きるエネルギーでもある、だから人を驚かせることが大好きなのだ。
「じゃあそのことを頭に入れて」
「はい、折角東天下茶屋に来ましたから」
紗佳は健児に優しい微笑みで話した。
「それなら」
「その妖怪さんにもだね」
「お会いして下さいね」
「紗佳ちゃんともお知り合いなんだね」
健児は紗佳の口調からこのことを察していた。
「そうだね」
「はい、子供の頃からです」
「知り合いなんだ」
「おばちゃんとポポちゃんのお友達で」
先程話した通りにというのだ。
「それで、です」
「紗佳ちゃんともなんだ」
「可愛がってもらっています」
子供の頃からだとだ、紗佳も答えた。
「妖怪だけあって驚かせてきますが」
「そのことはだね」
「ご了承下さい」
「それじゃあね」
健児も頷いた、そうしてだった。
二人は紗佳の案内でその妖怪がいる家に向かった、その家は大阪の下町に昔からあった様な古い家だった。
その古い小さな家を見てだった、健児は紗佳に言った。
「築四十年だよね」
「そろそろ建て替えだとか」
「耐震とか怖いね」
「ですからそうしたお話も出ています」
「やっぱりそうだね」
「はい、それで」
「うん、今からだね」
健児は紗佳に顔を向けて応えた、背は自分よりずっと低いが胸は目立つ彼女を。
「お家の中にね」
「入って」
「そうしてね」
そのうえでと話してだ、そしてだった。
二人は家のチャイムを鳴らした、ここで健児はあることに気付いた。
「あれっ、さっきまで」
「お家の中からですね」
「音が聞こえていたけれど」
「糸引きの音ですね」
それだとだ、紗佳は健児に答えた。
「それの音でした」
「糸を引く妖怪なんだね」
「そうです、糸引きを生業としていて」
「暮らしているんだ」
「昔ながらに。それでは今からその妖怪さんがだね」
「出てきますので」
「驚かせてくるね」
このことは既に察している健児だった。
「そうしてくるね」
「はい、ですから」
「用心しておくよ」
「それでは」
二人でこう話してだ、そしてだった。
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