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永遠の謎

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317部分:第二十一話 これが恐れその七


第二十一話 これが恐れその七

「仕方のないことだ。ここはバイエルンだ」
「プロイセンではありませんね」
「バイエルンとプロイセンは水と油だ」
「決して混ざり合わないものですか」
「同じドイツでもだ。我々は全く違う」
 この対立は以後も続くことになる。南北、そして東西のドイツはだ。
「それで対立しない方がおかしいのだ」
「ドイツの中で」
「しかも今プロイセンは高圧的だ」
 今度の指摘はこのことだった。プロイセンの態度だ。
「少なくともバイエルンではそう見られるな」
「それもまた問題なのですね」
「そうなのだ。今はプロイセンの一挙手一投足がだ」
 つまりだ。何もかもがだというのだ。
「バイエルンにとっては不快なのだ」
「だからこそホーエンローエ卿は反発されますか」
「避けられないことだ。しかしだ」
「それでもあの方を首相にされたのですか」
「さっきも言ったが選択肢は一つしかないのだ」
 王は言った。
「我々はドイツの中に入るしかないのだ」
「そのプロイセン主導のドイツにですね」
「ドイツは一つにならなければならない」
 このことはだ。絶対だというのだ。
「そしてそれがプロイセン主導ならばだ」
「プロイセンにつくしかない」
「かつてドイツは多くの国の介入を受けてきた」
 三十年戦争がその最たるものだ。この戦争はドイツにとっては最悪の災厄であった。このことはドイツにいるなら言うまでもないことだった。
「それを避ける為にはだ」
「ドイツは統一されなければならない」
「そういうことだ。そしてそれがプロイセンによって行われるのなら」
「それにつくべきなのですね」
「時代の歯車は絶対だ」
 王は言った。
「神の御意志なのだ」
「神の御意志なら従わざるを得ませんね」
「そうだ。そうするしかない」
 王はまた言った。
「感情的な反発は私にもあるが」
「陛下にもですか」
「そうだ。ある」
 王は己の感情については否定しなかった。確かにあるというのだ。
「私はバイエルン王だ」
「だからこそですか」
「青が好きだ」
 バイエルンの色、即ちバイエルンそのものがだというのだ。
「だからこそだ。プロイセンの者ではないのだからな」
「それ故になのですね」
「バイエルン王として」
 そのだ。王を王たらしめているもの故にだというのだ。
「私はプロイセンに対してはだ」
「反発がおありですか」
「そうだ。プロイセンに従うことはできない」
「しかしそれでもなのですね」
「そうだ。時流はプロイセンにある」
 それがわかっているというのだ。どうしてもだ。
「どうにもならないものはあるが」
「それでもなのですね」
「その通りだ。感情は否定できない」
 王の中にあるそれはだというのだ。そうした意味で王もまた人間だ。
 それを話してだ。王はまた述べた。
「私はやがて最も望まぬ役目を担わされることになるだろう」
「望まぬ役目とは」
「バイエルン王としてだ」
 バイエルン王としてだ。それを担わされると。王はホルニヒに言うのだった。
「このドイツの王達の中でも重要な位置にいるからこそ」
「だからこそですか」
「地位と立場は時として人に望まぬものをさせる」
 遠くを見てだ。空虚な言葉で今の言葉を出したのだった。
 
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