永遠の謎
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308部分:第二十話 太陽に栄えあれその二十
第二十話 太陽に栄えあれその二十
「御祝いの言葉をお送りする」
「はい、それでは」
「そうしましょう」
「儀礼を守り」
「それだけでいい。お祝いの品も考えておこう」
外交の儀礼をだ。さらに進めるというのだった。
「それもな」
「ではあの方が御気に召されるものを」
「それを用意しておきましょう」
「是非共」
「そうする。そしてだ」
さらにだというのであった。ビスマルクはだ。
バイエルン王のそれをからを見てだ。また話すのだった。
「何かあった時もだ」
「その時もですか」
「どうされるか考えられるのですか」
「その場合も」
「やはり。この度の話は順調には進まないだろう」
ビスマルクは見ていた。そうなるとだ。
「だからだ。何があっても対処できるようにしておく」
「それでは戦争ですが」
「まさにそれですが」
「恋愛と戦争は。同じものだ」
そうだというのだった。ビスマルクはだ。
「争い、競り合うものだからな」
「だから同じなのですか」
「恋愛と戦争は」
「そうなりますか」
「しかもあの御婚約は二人だけの話ではない」
話はだ。さらに大きいというのだ。
「バイエルン全体の話であるししかもだ」
「しかも?」
「しかもといいますと」
「まだあるのですか」
「そう。もう一人の存在がある」
ビスマルクの話がまた動いた。この話が二人だけではないとしてだ。
さらにだ。あるというのだ。
「その御仁のことも大きい」
「大きいというと」
「それだけの方といいますと」
「誰でしょうか」
「あの音楽家だ」
まずはそこから話す彼だった。
「彼だ」
「ワーグナー氏ですか」
「またしてもあの彼がですか」
「出るのですか」
「先の戦争で我々が勝った」
この政治の話が加わる。
「それによってバイエルンの政界でも動きがある」
「ワーグナー氏に反対する派はオーストリア派でしたね」
「そうでしたね」
こう話されるのだった。その政治のことがだ。
「では。我々が勝ちましたから」
「彼等は力を失う」
「そうだというのですね」
「そうだ。それによってだ」
「では。ワーグナー氏は再びですね」
「バイエルンに戻る」
「そうなると」
「あの方にとっての幸福だ」
まさにだ。そうだというビスマルクだった。
「よいことだ。そしてだ」
「そしてですね」
「我々にとっても」
「我々はバイエルンと対立するつもりはない」
その考えはないのだった。全くだ。
「こちら側にいて欲しいだけだ」
「プロイセンの側に」
「そうですね」
「感情的な対立は仕方がない」
それについてはどうしようもないというのだ。人間の感情はある意味においてどうしようもないものだ。ビスマルクはそれもわかっている。
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