戦国異伝供書
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第十六話 天下の大戦その六
「その毛利家を退ける」
「では」
「水軍の出番じゃ」
即ち九鬼のというのだ。
「堺に人をやれ、そうしてじゃ」
「毛利の水軍をですな」
「完膚なきまで敗れとな」
「その様にですな」
「せよと伝えよ」
まさにというのだ。
「そうすればじゃ」
「その本願寺も」
「降る」
兵糧や武器が届かない、それならばというのだ。
「そうしかなくなる」
「では」
「それで毛利の水軍を退け本願寺も降してから」
「次はその毛利ですな」
「あの家を攻める、播磨に入る」
本願寺との戦が終わればというのだ。
「そしてじゃ」
「西に進みますな」
「その時じゃが」
さらに言う信長だった。
「備前、備中、備後、美作とじゃ」
「攻めていきますか」
「安芸を目指すが」
毛利家の拠点であるこの国をというのだ。
「しかしな」
「はい、それまでにです」
竹中が言ってきた。
「戦を終わらせたいところです」
「うむ、出来れば備中辺りでな」
信長も竹中に応えて言う。
「戦を決めたい、その為には」
「宇喜多家ですか」
ここで言ったのは松永だった、ここで羽柴と慶次以外の者が一斉に松永を嫌な顔で見て睨みだした。
「あの家ですか」
「そうじゃ、あの家を当家に引き込む」
「そうしますな」
「そうして備前自体を手に入れてじゃ」
「一気にですな」
「毛利家を追い詰める、また尼子家の家臣でじゃ」
信長はさらに言った。
「山中鹿之介、そして尼子十人衆という者達がおるが」
「あの者達もですか」
「当家で召し抱えてじゃ」
そうしてというのだ。
「山陰攻めに働いてもらう」
「そうしますか」
「左様じゃ」
「わかり申した」
「殿、山中殿と尼子十人衆はいいですが」
不破がその松永を睨んだまま信長に言ってきた。
「宇喜多家ですが」
「主の宇喜多和泉守はじゃな」
「西国でも毛利殿に並ぶ謀の者」
「多くの者を謀殺してきておるな」
「まさに奸悪の権化」
そう言っていい者だからだというのだ。
「ですから」
「当家に入れることはか」
「止めておくべきかと」
「むしろ兵を送り」
柴田も松永を睨みつつ信長に話した。
「宇喜多和泉守を討ち」
「そうしてか」
「天下の奸を成敗しておきましょうぞ」
「ああした者を放っておけばいいことはありませぬ」
滝川も松永を睨んでいる、そのうえでの言葉だ。
「家臣に向かえれば殿にも」
「いや、確かにあの者は多くの謀で人を殺めてきた」
これは事実だとだ、信長も認めた。
「しかし家臣は誰も手にかけず縁戚は殺めても親族にも何もせぬ」
「あくまで敵のみを殺していると」
「民には善政を敷きまた謀で殺した相手を手厚く葬っている」
信長は宇喜多のこのことも話した。
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