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永遠の謎

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303部分:第二十話 太陽に栄えあれその十五


第二十話 太陽に栄えあれその十五

 ビスマルクはだ。さらに述べた。
「そうして語るべきなのだ。ましてや」
「ましてや」
「といいますと」
「新聞や本に書かれていることは駄目だ」
 今度はドイツにおいて急激に力をつけてきているだ。マスコミやそういったものについての話だった。無論ビスマルクも色々書かれている。
「特に新聞はだ」
「確かに。あることないこと書きます」
「中には完全な誹謗中傷もあります」
「新聞というものは全く以て困ったものです」
「確かに役には立ちますが」
 側近達も新聞についてはだった。
 嫌悪をその顔に見せている。そうしてビスマルクに述べるのだった。
「あの書き方には品性がありません」
「しかも絵でわかりやすく表現すると言ってさらに醜く表現します」
「あれが特に酷い」
「閣下も書かれていますし」
「私は気にはしない」
 全くだとだ。ビスマルクは素っ気無く返した。
「あの者達の書くことはな」
「そして意に介されない」
「そう仰るのですね」
「質のいい話は受け入れる」
 だが、だ。そうではないならばというのだ。
「それだけのことだ」
「しかしバイエルン王はどうでしょうか」
 また側近の一人が問うた。
「あの方は」
「それが問題なのだ」
 ビスマルクの顔が難しいものになった。
「あの方は繊細な方だ。そして人の目や言葉を気にされる」
「ならばですね」
「それはバイエルン王にとって危ういですね」
「以前もワーグナー氏のことがありましたし」
「ならば」
「あれだ」
 まさにそれだとだ。ビスマルクは今述べた。
「あの時のバイエルンのマスコミは煽りに煽ったな」
「はい、ワーグナー氏を追い出そうとです」
「そうして宮廷や内閣の勢力と結びついていました」
「その結果ワーグナー氏はスイスに去りました」
「そうなったのでしたね」
「あの時にわかった」
 完全に王の側に立った言葉だった。
「あの方は他者の言葉や目を非常に気にされる」
「新聞の言うことは気にしてはならないというのに」
「それでもですね」
「あの方は」
「そうだ。気にされてはならないものを気にされる」
 心配する目になっていた。明らかにだ。
「それがあの方なのだ」
「では今度もですね」
「そのことがあの王を苦しめていきますか」
「そうなってしまいますか」
「あの方はバイエルンの宝だ」
 また言うのだった。
「そしてドイツの宝でもある」
「ドイツのですか」
「そこまでの方ですか」
「前にも言ったが」
 その通りだった。実際に彼はそうも言っていた。
「あの方がおられることは非常に素晴らしいことだ」
「バイエルンにとっても」
「そしてドイツにとっても」
「そうだ。だからこそ新聞はあの様なことを書いてはならない」 
 そのことをだ。戒める言葉だった。
 だが現実はそうはならない。それが厄介なのだった。
「決してだ」
「それがバイエルン王を傷つけるからこそ」
「どうしてもですね」
「そうだ。あの方はドイツの宝だ」
 ビスマルクはまた言う。
 
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