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永遠の謎

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297部分:第二十話 太陽に栄えあれその九


第二十話 太陽に栄えあれその九

「その為にだ」
「プロイセンの力も」
「それも借りるということで」
「では早速だ」
 大公は意を決した顔になった。そうしてだ。
 そのうえでだ。また彼に話した。
「いいか」
「はい」
「それではですね」
「動くとしよう」
 こうしてだった。ゾフィーをバイエルン王妃にする動きがはじまったのである。
 そしてだ。そのホルンシュタインを通じてだ。ビスマルクにもだ。この話が届いたのである。
 彼はそれを聞いてだ。まずはこう言うのだった。
「いいことだ」
「そうですね。バイエルンにとって」
「あの王にとっても」
 側近達も彼のその言葉に応える。
「王妃ができればです」
「大きく変わります」
「王妃だな」
 だが、だ。ビスマルクはだ。
 遠い目になりだ。彼等にこんなことを話した。
「あの方御自身がそうであるのにな」
「あの、閣下はよくそう仰いますが」
 側近の一人が怪訝な顔でビスマルクに問うた。
「バイエルン王が女性だと」
「そう仰っていますが」
「あの方がですか」
「女性なのですか」
「そうだ、女性なのだ」
 そしてだ。さらにだった。
「エルザ姫なのだ」
「あのローエングリンのヒロインですか」
「あのブラバントの姫」
「あの方がですか」
「そうなのですか」
「そうだ。あの方の御心は女性なのだ」
 身体ではなくだ。心がだというのだ。
「御身体を見ては思えないな」
「あれだけの長身ですし」
「美貌は騎士を思わせます」
「それではやはり」
「女性には思えません」
「どうしてもです」
「そうだ。私も外見だけを見ればだ」
 ビスマルク自身もだ。どうかと話すのである。
 王のその長身と美貌は明らかに男のものだ。だがそれは目を誤らせるものだというのだ。ビスマルクのその慧眼を以てしても。
「あの方を男性だと思ってしまう」
「しかしそれは違う」
「女性ですか」
「そうなのですね」
「そうだ。あの方は根幹から女性なのだ」
 そのことを話してだった。
 ビスマルクはさらにだ。こんなことも話した。
「女性が女性と結ばれることはだ」
「それはないですね」
「到底」
「同性愛。私にその趣味はないが」
 今度はこの話をするのだった。
「だが陛下が女性を愛されないのはだ」
「それは一体」
「何故なのか、ですか」
「つまりは」
「あの方は同性愛者ではないのだ」
 これはだ。あまりにも斬新な言葉だった。
 
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