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永遠の謎

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295部分:第二十話 太陽に栄えあれその七


第二十話 太陽に栄えあれその七

 そしてその興味に従いだ。こんなことを言うのであった。
「気になりますね」
「どの方かですか」
「一体何処の方なのか」
 また言う王だった。
「興味があります」
「陛下が御存知の方です」
 大公はその王にだ。少しヒントを出した。
「その客人はです」
「私のですか」
「そしてです」 
 そしてだ。大公はだ。
 ヒントをもう一つ出した。そのヒントは。
「私も知っています」
「この屋敷に呼ぶだけにですか」
「はい、そうした方です」
 大公は優しい微笑みを浮かべて王に話す。
「では。その方を」
「はい、その方を」
「こちらに呼びします」
「そうして下さい」
 こうしてだった。その客人がだ。
 王の前に案内される。それは。
 女性だった。しかも若い。王と比べれば流石に小柄だが女性としては申し分ない背丈を持っておりややふっくらとした顔立ちの明るい雰囲気を出している。
 眉は細く小さめである。愛らしい青の目と黒い髪はヴィッテルスバッハ家のものだった。そしてその高い鉤に似た形の鼻は。王のよく知る女性と同じものだった。
 そのだ。白いドレスを着た女性を見てだ。王は言った。
「ゾフィー」
「陛下、お久し振りです」 
 その女性ゾフィーはにこりと笑って一礼してだ。王に応えたのだった。
「こちらに案内されたのですが」
「貴女だったとは」
 王はだ。彼女に親しい声を送った。
「思いませんでした」
「はい、私もです」
「まさか今日。ここで一緒になるとは」
「そうですね。それに」
 ゾフィーからだ。笑顔で王に話すのだった。
「ワーグナー氏の音楽を聴くとは」
「そう、貴女もまた」
 王はここで言った。そのことについて。
「ワーグナーの音楽を愛していますね」
「はい」
 明るい笑顔でだ。王のその言葉に応えるゾフィーだった。
「あの音楽は斬新でとても奇麗だと思います」
「そう、ワーグナーは美しい」
 自然とだ。笑みになってだ。王は話した。
「まさに至上の美です」
「そうですね。あの方の芸術は」
「この世に生まれた奇跡です」
 その賞賛をだ。王はありのまま口にする。
「それを今聴けるのは何と幸せなことか」
「その通りですね。それで」
「今から聴かれますか?」
 王はゾフィーに対して尋ねた。
「そのワーグナーの音楽を」
「そうさせてもらいたいです」
 これがゾフィーの返答だった。
「是非共」
「わかりました。それではです」
 ゾフィーのその言葉を受けてだ。王は。
 彼女にだ。こう告げたのであった。
「これから共に」
「はい、ワーグナー氏の音楽を」
「聴きましょう」
 こうしてだった。二人はだ。
 ワーグナーの音楽を聴くのだった。これがはじまりだった。
 王はそれから時折ゾフィーと共にだ。ワーグナーについて語りそしてその詩を読み合ったりした。そうしてワーグナーのいないミュンヘンの仲でお互いを慰め合っていた。それを見てだ。
 
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