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戦国異伝供書

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第十五話 中を見るとその十一

「天下布武をな」
「織田様のそれを」
「そうじゃ、そしてじゃ」
「天下布武、統一が成り」
「天下に平和が戻るのをな」
「それはよいこと。欧州を見ますと」
「うむ、欧州では昔あれじゃな」
 信長は既にフロイス達から話を聞いてそうしてその地域のことをよく知っている、それで言うのだった。
「羅馬という国があったな」
「ローマ帝国です」
「明の昔の文献では大秦といったな」
「よくご存知で」
「それでじゃ、その羅馬がじゃな」
「はい、衰え東西に分かれ」
「以後じゃな」
「欧州は戦が続いています」
「実に多くの戦が行われておるな」
「今もです」
 今現在もというのだ。
「各国の間、各国の中でも」
「戦が行われておるか」
「絶え間なく。しかもその戦の有り様たるや」
「本朝のそれとは違ってか」
「この国での戦は民は狙いませんね」
「田畑と民に手を出してどうする」
 即座にだ、信長はフロイスに返した。
「当家の治めるところになるというのに」
「左様ですね、ですが欧州の戦は」
「明での戦の様にじゃな」
「はい、徹底的にです」
「壊し奪い殺すな」
「むしろ今は教えが加わり」
 そしてというのだ。
「イエスの。それでなのです」
「神の教えが入りじゃな」
「余計に血生臭くなっています」
「我等から見るとか」
「若しこの国が織田様のお手により統一され平和になるなら」
 それならというのだ。
「これは欧州では夢の様な」
「素晴らしきことか」
「全く以て」 
 こう言うのだった。
「そうしたものです」
「そうであるか」
「はい、それではです」
「わしにはじゃな」
「是非天下を統一して欲しいです」
 こう信長に言うのだった。
「私はその泰平を見たくなりました」
「そうか、ではな」
「宜しくお願いします」
「さすればな。しかし教えが違うからといってとことんまで殺し合っては」
 そうしてはとだ、信長はフロイスにいぶかしむ顔になって述べた。
「しまいに人がいなくなるぞ」
「欧州には」
「そうなってしまうぞ」
 まさにというのだ。
「本朝の様に神仏を共に。仏教も色々な宗派があるとはか」
「欧州ではなりません」
「わからぬのう。神仏も同じでじゃ」
 同じく尊く敬うべきだというのだ、信長にしても神仏を完全に否定しているかというと決してそうではないのだ。
「宗派の違いなぞじゃ」
「それはですか」
「どうしてもある。当然じゃ」
 同じ仏教でもというのだ。
「考えが違ってじゃ」
「宗派が違うことも」
「当然であろう、だからな」
「このことは」
「わからぬ、わしにはな」
 こうフロイスに言うのだった。 
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