戦国異伝供書
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第十五話 中を見るとその十
「近頃わしは思うのじゃが」
「何でしょうか」
「うむ、南蛮では砂糖をよく使っておるな」
「非常に高いものですが」
「使われておるな」
「それはその通りです」
まさにとだ、フロイスは信長に答えた。
「近頃欧州ではよく売れております」
「それも高くじゃな」
「そうなっています」
「その砂糖、本朝でも作ることが出来れば」
袖の中で腕を組んでだ、信長は述べた。
「よいのだがのう」
「砂糖は暑いところで出来ますが」
「それもそうじゃが」
「それでもですな」
「砂糖を作ることが出来れば」
その高価な砂糖をというのだ。
「よいがな」
「この国でも砂糖は貴重ですね」
「かなりな、しかし茶の様にじゃ」
「多く作ることが出来れば」
「民百姓もあの甘さを楽しめる」
そうなるからだというのだ。
「それに他の国にも売れる」
「だから多く作りたいと」
「そう思っておるがのう」
「では」
「そのことも考えてみるか、わしは酒は飲めぬが」
それでもというのだ。
「甘いものは好きじゃからな」
「それ故に」
「菓子も好きであるし砂糖もじゃ」
「菓子の中に入れることもありますし」
「それもじゃ」
まさにというのだ。
「それ自体を舐めてもな」
「よいからですな」
「好きじゃ、しかしわし一人で楽しむことはせぬ」
「この国の者全てがですか」
「楽しんでこそじゃ」
まさにというのだ。
「だからな」
「ここはですか」
「うむ、そうも考えておる」
砂糖のこともというのだ。
「本朝でもとな」
「それでは」
「やってみよう、とはいってもな」
「そうしたことは」
「天下が一つになってじゃ」
そしてというのだ。
「国が泰平になり落ち着いてな」
「そうしてからですか」
「やってみたい、今は何かと忙しい」
そうした状況だからだというのだ。
「それでじゃ」
「砂糖についても」
「まだまだ先じゃ」
この国に植えるにはというのだ。
「やはりな」
「ではまずは」
「この天下をな」
「統一しそして」
「泰平にする、お主はこれから堺に戻るな」
「そのつもりです」
「では堺から見ておいてもらおう」
こうフロイスに言うのだった。
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