レーヴァティン
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第七十五話 霧の都その十一
「それでなのよ」
「あんたも違約金払ってから」
「それから出るわ。お金は充分以上にあるから」
それでとだ、久志にこのことも話した。それも笑って。
「心配は無用よ」
「そんなに儲けたのかよ」
「闘技場で勝っていってね。飲んで本も買ってきたけれど」
「それでもかよ」
「お金はもう一生遊んで暮らしても大きな土地買える位あるわよ」
それだけのものがというのだ。
「闘技場は実入りがいいから」
「だからか」
「そう、お金はあるから」
「それを支払ってからか」
「あんた達と合流させてもらうわね」
「わかったぜ、ただな」
ここで久志は魔術師に話した。
「ぢょっと待ってくれるか」
「どうしたのよ」
「俺も実は一戦交えることになってるんだよな」
「この闘技場でか」
「そう、それでな」
「その一戦の間なの」
「少し待ってくれるか?」
「いいわよ、というか手続きの間にその一戦終わるわね」
魔術師は久志にあっさりとした口調でこう指摘した。
「そうよね」
「そうあっさりといくと思うか?」
「あんたの強さはわかるわ、オーラでね」
彼の身体から放たれているそれを見てというのだ。
「相当に強く燃え盛っているから。それに腰の剣は」
「わかるか」
「レーヴァティン。世界を焼き尽くし救う剣ね」
「ああ、世界を焼き尽くすことも出来れば」
まさにとだ、久志は魔術師に応えて話した。
「救うことも出来るってな」
「実際にそう言われてるわね」
「ああ、それでこの剣もあるからか」
「その剣を持っているあんたなら」
それならというのだ。
「この闘技場のどうした相手にも勝てるわ」
「そうか、それで俺が勝つその間にか」
「私の手続きも終わるわ」
闘技場を出るそれもというのだ。
「すぐにね」
「そうか、じゃあ行って来るな」
「私が手続きをしている間に」
「それで勝って来るな」
「ええ、じゃあね。後言い忘れていたことがあったわね」
ここでも魔術師の方から久志達に言ってきた。
「私のことをね」
「ああ、あんたの名前教えてくれるか」
「如月双葉。八条大学文学部英文学科よ」
「やっぱり俺達と同じ大学か」
「そうよね、それでね」
「こっちの世界じゃ魔術師か」
「実はファンタジーの本が好きなのよ」
双葉は久志にくすりとした笑みで話した。
「古今のね」
「それで魔術師か」
「指輪物語も魔法の国シリーズも好きでアーサー王や妖精のお話もね」
まさに古今のファンタジーと言っていい話がというのだ。
「全部好きなせいでしょうね」
「成程な」
「今はハリー=ポッターも読んでいるわ」
こちらの作品もというのだ。
「楽しくね」
「本格的に好きみたいだな」
「勿論イギリスのもの以外も読んでいるわよ」
「ファンタジーものはか」
「日本のものも中国のものも。ドイツのものもだし」
こうした国々のものもというのだ。
「そしてアメリカもね」
「特にアメリカものには強そうだな」
「英文学科だからそう言うのね」
「ああ、けれどその通りだよ」
「そうよ。むしろイギリス英語よりもね」
「アメリカの英語の方がわかりやすいか」
「私にとってはね。実は違うところもあるのよ」
同じ英語でもというのだ。
ページ上へ戻る