山奥の家
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第三章
「もう帰るわ」
「もうなの?」
「だって山道だから」
「暗くなったらなの」
「歩けなくなるから」
歩けるが危ないというのだ。
「だからね」
「じゃあ箒で送るよ」
真咲は友達にすぐに答えた。
「夜になってもね、だからね」
「それでなの」
「もうちょっと遊んでいようよ」
「そうしていいの」
「うん、今日は半日で結構遊んだけれど」
学校の授業がそれで終わったからだというのだ。
「それでもね」
「もっと遊んで」
「うん、楽しもう」
「箒って」
「私魔法使いだから乗れるし」
「けれどあんた少し」
友達は真帆使いではないので箒には乗れない、しかし真咲の日常を見ていてそれで彼女に言ったのだ。
「高所恐怖症よね」
「大丈夫だよ、少し位の高さなら」
「飛んでもなのね」
「だから心配しないで」
こう言うのだった。
「だから送るから」
「夜までなの」
「遊んでいよう」
「そこまで言うのなら」
それならとだ、友達も頷いてだった。
真咲そして彼女の兄妹と遊ぶことにした、それでだった。
夜まで楽しく遊んだ、それで箒で山の麓まで戻った時にこう言われた。
「また来てね」
「ええ、ただね」
「ただ?」
「いいお家に住んでるわね」
山の頂上の洋館のことを話すのだった。
「本当に」
「うん、私もそう思ってるよ」
「ご家族もいて」
「皆仲良く暮らしてるよ」
「そうよね。真咲のことはよく知らなかったけれど」
それでもというのだった。
「幸せそうで何よりよ」
「私今とっても幸せよ」
過去は覚えてないがとだ、真咲は笑顔で答えた。
「本当にね」
「それならいいわ。じゃあまた明日学校でね」
「うん、明日ね」
「明日会おうね」
二人で話してだ、そうしてだった。
今は別れた、そして次の日学校で笑顔で会った。真咲の笑顔は昨日と同じくとても明るいものだった。
山奥の家 完
2018・10・19
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