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永遠の謎

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264部分:第十八話 遠く過ぎ去った過去その十四


第十八話 遠く過ぎ去った過去その十四

 王はホルニヒに話していく。その美についてだ。
「それでドイツを統一したいのだ」
「ドイツを」
「そうなのだ。ドイツは政治的、軍事的に統一されるだけではないだろう」
「芸術的にも」
「既に文学的、音楽的には統一されている」
 そうなっているというのだ。
「ゲーテやワーグナーによってだ」
「文学や音楽では」
「その次には政治と軍事だ」
 ドイツはだ。その面でも統一されるというのである。
「人の目には。それがドイツの統一と思うな」
「はい、ドイツ帝国が誕生すれば」
「しかし。それだけではなくだ」
「美をですか」
「私はそれでドイツを一つにしたい」
 王は言っていく。
「私ができることは。それだけだ、いや」
「いや?」
「本来はだ」
 王はだ。ホルニヒにだけはだった。その本心を話すのだった。
「私は。バイエルンがだ」
「政治的、軍事的にですか」
「統一したいのだ」
 その望みをだ。辛い目で話すのだった。
「だがそれはだ」
「適えられませんか」
「何があってもできない」
 それがだ。わかっているという言葉だった。
「プロイセンの力ではだ」
「では」
「プロイセンの勢いは誰にも止められない」
 わかっているのだ。実によくだ。
「オーストリアも敗れたな」
「あの勝利は意外と言われていますね」
「私にはわかっていたがな」
 王にはなのだ。既にあの戦いの結末はわかっていたのだ。
 しかしわかっていてもだ。それでもなのだった。
「だが。それに対してバイエルンは」
「何もできなかったと仰るのですね」
「避けることはプロイセンがバイエルンの属国になること」
 それをだ。わきまえての行動だったのだ。あの時の王の動きは。
「しかしだ」
「しかしなのですか」
「それは最後まで避けられるかというと」
「無理でしょうか」
「難しい、バイエルンはだ」
 どうなるかというのだ。王のその国がだ。
「ドイツでは確かに大国だ」
「ドイツにおいては」
「しかし。プロイセンの力は圧倒的だ」
 それは何時からだというとだ。かなり前からだった。
 そのこともわかっていてだ。王の言葉は続けられる。
「オーストリア継承戦争に勝利をして以来、いやその前からだな」
「兵隊王の頃からでしょうか」
「そうだ。国家は一日で成るものではない」
 そしてその言葉はというと。
「ローマは一日にして成らずだ」
「プロイセンもまた、ですか」
「フリードリヒ大王の前より力を蓄えだ」
「今に至るのですね」
「我がバイエルンは。三十年戦争で深い傷を負い」
 その荒廃は目を覆うばかりだった。ドイツ全体が荒廃したがその中にバイエルンも入っていたのだ。それが三十年戦争だったのだ。
 そしてだ。そのうえであった。
「ようやく立ち上がれるようになれば。オーストリアとプロイセンが前にいた」
「あの二国が」
「そもそも元となる力が違い過ぎた」
 そうだったというのだ。ドイツにおいてはその二国が大きく開いていたのだ。
 それでだった。王はさらに話していく。
「それではだ」
「今の状況になるのは」
「必然だ」
 まさにだ。そうだというのだ。
 
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