戦国異伝供書
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第十四話 北陸へその七
「あの家はまた酷かったがのう」
「あれは確かに」
まさにとだ、丹羽もこう述べた。
「あまりでしたな」
「お主もそう思うな」
「親兄弟、叔父と甥で争い続け」
それも何代に渡ってだ、源氏という家は身内でいがみ合い殺し合って何代も経てきた業の深い家だったのだ。
「まことに残ったのは」
「誰もおらんな」
「まさに」
これで源為義の家系はいなくなったのだ、頼朝のご落胤だと言われている佐竹家等がいてもそれでもだ。
「無残なことです」
「ああしたことはない様にしてな」
「そのうえで」
「やっていきたい、そしてな」
さらに言う信長だった。
「家臣にもじゃ」
「源氏の様なことは」
「したくない」
源氏は家臣の粛清も多かった、これは執権となった北条家も同じだ。尚北条家も骨肉の争いがあった。
「それでじゃ」
「今からお考えですか」
「そして武田家も上杉家もな」
「やがては」
「家臣にしたい」
これが信長の考えだった。
「天下統一の後にはな」
「そこまでお考えとは」
「では。これからな」
「手取川においてですな」
「その上杉家と戦う、数と装備を以てな」
そして知略でとだ、信長は敗れた軍勢をそのまま引き込んで謙信が率いる上杉家の軍勢との戦に入った。
上杉家との戦も引き分けに終わった、そうしてだった。
信長は北陸への備えを置いたうえで岐阜に戻り再び休養に入った、ここで平手は主な家臣達を呼び茶室で自身の茶を振る舞った。
そのうえでだ、こう言ったのだった。
「わしはほぼ戦には出ておらんが」
「いえいえ、見事留守を預かって下さったので」
「我等は安心して戦えました」
「岐阜でしっかりと政をして頂いたので」
「かなり助かりましたぞ」
「ならよいがな、しかしのう」
平手は自分のことを誉める家臣達にこう返した。
「まだ武田も上杉も残りな」
「そしてですな」
「本願寺も残っておりまする」
「西には毛利家もいて」
「公方様もおかしな動きを見せていますな」
「そうじゃ、まだな」
まさにというのだ。
「天下は安泰ではない」
「むしろこれからですか」
「これからどうするか」
「このことが大事ですな」
「その通りじゃ、本願寺が籠る石山をどうにかし」
そしてというのだ。
「武田、上杉、毛利そして北条もじゃな」
「あ家ですな」
「関東に覇を唱える」
「あの家も戦いに加わってきますか」
「そうなるであろう、そしてやはり」
平手は他の者達に再び彼の名を出した。
「公方様じゃ」
「あの方ですな」
「あの方がどう動かれるか」
「それが問題ですな」
「何といっても」
「最早です」
明智がここで言ってきた。
「我等の諫言はです」
「一切か」
「聞かれず」
「怪しげな坊主達の話ばかり聞いておるか」
「そうなっています、まさに」
明智は苦い顔でこうも言った。
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