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永遠の謎

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217部分:第十五話 労いの言葉をその七


第十五話 労いの言葉をその七

「ビスマルク殿はこれからのことを考えておられるからな」
「だからですか」
「そうだ。これにはオーストリアも驚く筈だ」
 そしてだ。さらに話すのだった。
「我がバイエルンもだ」
「だからこそ動かれなかったのですか」
「確かに戦いは嫌いだ」
 王自身のその嗜好も見せはした。
「剣を嗜むのならともかく。銃や砲はな」
「それはですか」
「そうだ、好きではない」
 こう言うのであった。
「だがそれ以上にだ」
「バイエルンの為にですか」
「私はそうしたしそうしている」
 兵を動かさないこと、それがだというのだ。
「ここで派手に動き戦っていればビスマルク殿も断固とした処置を取らざるを得なくなるのだ」
「そのこともわかっておられるのですか」
「不思議なことにだ」
 前置きしてから。そのうえでの言葉だった。
「私はあの方の思考がわかるのだ」
「ビスマルク殿の」
「そうだ。あの方も同じだろう」
 ビスマルクもだというのだ。王の考えがわかるというのだ。
「私達は心の奥底で同じかも知れない」
「陛下とビスマルク卿が」
「ただ。あの方は昼の世界におられる」
 そちらの世界にだ。彼はいるというのだ。
 しかし王自身はだ。どうかと話すのである。
「だが。私は」
「陛下は」
「私は夜の世界に入ろうとしている」
 その世界にだ。入ろうとしているというのである。
 こう話してだ。王は実際にその顔にだ。
 夜を漂わせた。そのうえでの言葉だった。
「その深い夜の世界に」
「その世界になのですか」
「昼、企み深い昼」
 トリスタンとイゾルデの言葉だ。その言葉が自然に出た。
「その昼よりも夜の世界にだ」
「入られたいのですか」
「どうなるかわからない。それでもだ」
 どうかとだ。王は話していく。
「私は夜を愛しはじめているのだ」
「そういえばワーグナー氏の作品は」
「夜だな」
「はい」
「夜にこそあらゆることが起こるな」
「不思議なことに」
「そうかも知れない。夜にこそ人は本当の姿を現すのかも知れない」
 王はここでも遠い目になってだ。そうして話すのだった。
「しかしそれを覆い隠してくれるのがだ」
「夜ですか」
「そうだ、夜だ」
 その夜だというのである。
「夜はそうしてくれるものなのかもな」」
「だからこそですか。陛下は」
「若しかしたらな」
 王は話す。そうしてだ。
「私はその夜に入っていくのだろうか」
「昼と夜は」
「全く違う。私は昼を愛せなくなってきた」
 太陽を。それをだというのである。
 そうした話をしていって。やがては。
 王はだ。ふとだ。考えを変えた顔になって述べたのだった。
「さて、それではだ」
「どうされますか、これから」
「花火はもういい」
 それはだ。もういいというのだ。
 
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