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永遠の謎

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206部分:第十四話 ドイツの国の為にその六


第十四話 ドイツの国の為にその六

「それでもだ。この戦争はプロイセンが勝つ」
「間違いなくですか」
「ビスマルク卿は無駄なことはされない」
 ビスマルク個人への敬意はここでも消えていない。
 しかしだ。プロイセンに対してはこう言うのだった。
「プロイセンが勝利を収めようとも」
「そうしようとも」
「あの国の属国にはならない」
 そのことはだ。否定するというのだ。
「幾らあの国がドイツの盟主になろうともだ」
「それでもですね」
「そうだ、それはしない」
 また言う王だった。
「バイエルンは誇りを失ってはならない」
「その為にも今は」
「この戦争は。細心の注意が必要だ」
 政治の言葉だった。まさにだ。
「だから私はここにいるのだ」
「この保養地に」
「確かに戦争は嫌いだ」
 それは否定しなかった。王が戦いを避けこの場所にいるのは紛れもない事実である。しかし理由はそれだけではなかったのだ。
「だが。私が今ミュンヘンにいては駄目なのだ」
「あの町には」
「そうだ。私は戦争を指揮しない」
 そしてだ。さらにだった。
「軍も動かさない」
「それもされませんか」
「オーストリアに対して体面を保つ。それだけでいいのだ」
 これが王の考えだった。
「そうするのだ」
「それだけでいいのですか」
「誰もわかっていないのだな」
 王の目がだ。また悲しいものになった。
 花火を見ながらだ。今は別のもの見ていた。
「私の考えは」
「それは」
「ホルニヒ、そなたはどうなのだ」
 王は彼に顔を向けた。そのうえで彼に問うた。
「そなたは私のことがわかるか」
「御言葉ですが」
 こう前置きしてだ。彼は答えた。
「わかるように努力します」
「そうするのか」
「はい、私は陛下の臣です」
 だからだと。切実な声で話す。
「ですから」
「わかるようにか」
「そうです」
 そしてだ。こうも言うホルニヒだった。
「そして私は」
「そなたは」
「僭越ながら陛下を愛しています」
 このこともだ。言うのだった。
「だからこそ。陛下の全てを」
「いいのか。私は」
 王は一旦は拒む顔になって。彼に述べた。
「ヴィッテルスバッハの者だ」
「王家の方だというのですか」
「この家の血は。狂気を含んでいる」
 言うのはだ。このことだった。狂気のことだった。
「オットーのことは聞いているな」
「噂には」
「我が弟は。最早元に戻らん」
 こうだ。悲しい顔で話すのだった。
「あのまま。狂気の世界の中で住んでいくのだ」
「ですが陛下は」
「私も同じだ」
 彼自身もだ。そうだというのだ。
「私もまた。狂気の中にやがては」
「陥ってしまうと」
「既にそうなのかも知れない」
 未来ではなくだ。現在もではないかというのだ。
 
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